2018年に「かぼちゃの馬車」という賃貸物件の問題やスルガ銀行の不祥事が話題になりました。
シェアハウスと称して投資家に販売されていたため、シェアハウスに対する世間のイメージが悪くなってしまいました。
しかし、かぼちゃの馬車という物件を調べてみると、とても「シェアハウスとはいえない作りの物件」であることがわかったのです。
つまり、「シェアハウスという業態」が悪いのではなく、シェアハウスの名前を悪用して投資家を募り、投資物件として次から次へと建設・販売していたことに問題があるのです。
シェアハウスのプロが見れば、「かぼちゃの馬車」はシェアハウスとはいえない物件だとわかります。
本当のシェアハウスとは、入居者同士が交流して助け合って生活する、建物と仕組みが整ったものなのです。
現在も真面目に運営しているシェアハウスや会社はたくさんあります。その結果、きちんと利益を得ているオーナーも大勢います。
オーナー、管理会社、入居者の三者が、しっかりと満足できるシェアハウスは数多くあるのです。
こういったことは報道されないので知らない方が多いと思います。
このコンテンツでは、「かぼちゃの馬車」の問題の本質を解説しています。
本当のシェアハウスがどういうものかを知ることで、シェアハウスがビジネスとして健全に成立していることを理解することができます。
メディアの情報だけに左右されず、「実際に運営している生の声」にも注目してください。
2007年から実際にシェアハウスを運営している筆者が、プロの目から見た情報をお伝えします。
目次(もくじ)
「かぼちゃの馬車」がシェアハウスとはいえない理由
筆者は、2007年からシェアハウスの運営に携わっています。
その私から見て、スマートデイズ社が運営していた女性専用の「かぼちゃの馬車」という物件はシェアハウスとは言えません。
その理由をプロの立場から解説します。
シェアハウスに見せかけた建物・間取り
かぼちゃの馬車の物件には、入居者同士が交流する「リビング・ダイニング」がありません。
キッチンはありますが、共用廊下の隅に簡素なものが設置されているだけです。(詳細は間取り図を参照)
基本的には、建物の中に個室がずらっと並んでいる間取りになっているのです。
かぼちゃの馬車(女性専用)の間取りでは共用部が極端に少なく、個室の数だけが目立つものになっています。
上記に示した図の例だと、若い女性が14人(満室時)で暮らしているにもかかわらず、リビングもダイニングもありません。
廊下の隅に小さなキッチンが設置してあるだけです。
これでは入居者が生活しづらいですし、シェアハウスの魅力である「交流」も起こりにくくなります。
(かぼちゃの馬車を投資物件として企画していた会社は、個室の数を増やして家賃収入を増やすことで高利回りにして投資家に販売していたと思われます。)
「かぼちゃの馬車」の物件はほとんどが新築だったため、現在も活用されている建物が多くあります。
「シェアハウス」と称して運営されているものもありますので、引き続き注意が必要です。
三好不動産が「かぼちゃの馬車」再生 - 産経ニュース (sankei.com)
シェアハウスの一番の魅力である「交流」がない
かぼちゃの馬車のような間取りの建物で共同生活を行なったらどうなるでしょうか。
たとえば、廊下にあるキッチンで食事を作っても自分の部屋で食べるしかありません。
夕食を作ってみんなで食べたり、飲み会やパーティーをしたりする場所がないのです。
一緒にテレビをみたり、おしゃべりをしたりすることもできません。
リビングやダイニングがないため、シェアハウスの最大の魅力である「入居者同士の交流」がなくなってしまいます。
これでは、学校や仕事から帰って寝るだけのハウスです。
せっかく同年代の人達と共同生活をしているにもかかわらず、ゆっくりと話をする場所がないのです。
住人同士のコミュニケーションが不足し、トラブルが起こりやすくなる可能性もあります。
これは、シェアハウスの入居者にとっては住みにくい物件であることは間違いありません。
住みにくさを感じれば入居者は簡単に退去してしまいます。
そうなるとオーナーや管理会社は、想定していた家賃を長期的に得ることは難しくなります。
当然ですが、入居者あってのシェアハウスです。ユーザーが満足しないものは需要がないのです。
かぼちゃの馬車は、賃貸経営の面からも「シェアハウス」の要件を満たしていなかったのです。
シェアハウスの交流の魅力については、下記のコンテンツで詳しく解説しています。
「かぼちゃの馬車」がブランドを変えて運用開始(2022年6月)
若年の入居者が経済的に自立したり夢を叶えるまでの「仮住まい」というコンセプト。
この物件は、「かぼちゃの馬車」と建物内部はほとんど変わっていないと思われます。
建物内に部屋がずらっと並ぶ間取りであり、部屋の広さもほとんどが7平米(約3畳)。
共用の廊下に簡易的なキッチンがあるだけでリビング等はなく、この物件は一般的な「シェアハウス」とは言えません。
また、旧かぼちゃの馬車では女性専用シェアハウスとして運用されていましたが、TOKYO<β>では一部の物件を除き入居条件を「性別不問」としています。
さらに外国人の入居も可能とのこと。国籍は日本人65%、外国人35%。(2022年7月現在)
入居者が交流する共用部がほとんどない建物で、男女や外国人との共同生活を行うことは、思わぬトラブルの可能性が高まります。
入居希望者は物件の見学を必ず行い、仮住まいとはいえ自分の生活イメージをしっかりと確認することが重要です。
三好不動産がシェアハウス「かぼちゃの馬車」再生 - 産経ニュース (sankei.com)
「かぼちゃの馬車」から学ぶシェアハウス経営(3つの対策)
「かぼちゃの馬車」という物件から、不動産経営・投資の失敗事例を学ぶことができます。
どんなリスクがあったのか。リスクを最小限に抑えるにはどうしたらいいのか。
「3つの対策」を見ていきましょう。
自分の目でシェアハウス物件情報のチェックを行う
- 立地のチェック
- 間取り (個室と共用部のバランス)
- 建物見学
- 家賃の相場
かぼちゃの馬車の物件は、土地を購入して新築の建物を建築する契約になっていたようです。
購入したのは、不動産投資に興味があるサラリーマンなどが多かったとされています。
賃貸経営の経験や知識がない人も多く、物件の販売会社によるセミナー等で勧誘されたようです。
驚くのは、建物が建築される前も後も「オーナーが現地を見学していない」ケースが多かったことです。
物件の企画・運営をしていた会社がオーナーに見せないようにしていたようですが、これは購入した不動産投資家のほうにも問題があるでしょう。
物件によっては1億円を超える投資を行うにもかかわらず、現地を見ない、建物のプランを見ない、竣工した建物を見学しない、家賃相場を見ない、というのは信じられません。
サブリース(建物一括借上げ)というオーナーに支払われる家賃が保証された契約だったこともありますが、それにしても驚くことばかりです。
おそらく、不動産投資家(事業家)としての自覚がなかった人も多かったのでしょう。
多額の借金をして不動産オーナーになるという意識がないと、自分の目で確かめることをしないで「業者の言いなり」になってしまう恐れがあります。
これから不動産経営・投資をする人にとっては、教訓として重要な示唆を得ることができると思います。
シェアハウスをあつかう不動産業者・金融機関にも注意する
- 販売会社(売買仲介会社)
- 管理会社(シェアハウス管理)
- 安易なサブリース契約・家賃保証契約
- 金融機関による不正な融資
不動産の販売業者(仲介業者)は、物件を投資家に売ることで仲介手数料を獲得します。(自社物件を除く)
どんなに集客・営業しても売れなければ全く利益になりません。
そのため自分たちの利益のためには、投資家に不利なことを平気でするようなことがあるので注意が必要です。
たとえば、オーナーの預金残高を不正に操作して、銀行の融資を得ていたケースが問題になっています。
また、建築内容や費用にも注意が必要です。
かぼちゃの馬車の建材仕様は廉価で、
それにもかかわらず、国土交通省の公表する平均建築単価とくらべて、
物件購入に先立ち、建築費の妥当性については相場や
「かぼちゃの馬車」に関連するトラブルでは、スルガ銀行の不正融資も問題になりました。
このように、不動産会社や金融機関が不正をすることもありますので、オーナーは融資の契約も慎重におこなう必要があります。
スルガ銀行の第三者委員会の報告によると、「かぼちゃの馬車」の物件を扱っていた販売会社は80社以上にのぼるとのこと。
投資家やオーナーが不動産を購入する際には、物件の販売会社や金融機関は信頼できる企業なのか、しっかりと調べる必要があります。
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物件の「管理会社」にも注意する
物件の販売業者と管理会社が異なる場合には、管理会社が信頼できるかどうかチェックする必要があります。
管理会社が物件を借り上げて(サブリース)入居者に転貸し、オーナーに対して家賃保証をする契約の場合は管理会社からオーナーに毎月決まった家賃が支払われます。
管理会社からの入金が途絶えると、オーナーは金融機関への返済ができません。
「かぼちゃの馬車」ではこれが問題になり、自己破産などに追い込まれるオーナーが多く出ました。
よく調べず安易に「マスターリース契約」をするのは問題があります。
契約前にサブリース事業のメリット・デメリットや、そもそも家賃の金額が妥当かどうかといったことをしっかりと把握する必要があります。
不動産業者やサブリース業者は、基本的にメリットを強調することが多く、デメリットをしっかりと説明しないこともあります。
リスクが潜んでいないかどうかは、オーナーが自分で調べたり質問したりして把握するしかありません。
自分の投資内容を客観的に見たり、第三者にアドバイスがもらえたりするとリスクを軽減することが可能になります。
シェアハウス経営ついては、下記のコンテンツで詳しく解説しています。
「シェアハウス」を正しく理解する
前述のとおり筆者は、2007年からシェアハウスの運営に携わっています。
その私から見て、スマートデイズ社が運営していた「かぼちゃの馬車」はシェアハウスとは言えません。
まずは、「シェアハウス」とはどういうものかを見ていきましょう。
本当のシェアハウスをきちんと知ることで、かぼちゃの馬車がシェアハウスではないという理由がはっきりとわかるようになります。
シェアハウスとは
- 一つの建物内での共同生活
- 家具・家電が揃っている(運営側が揃える)
- 水道光熱費・ネット料金が固定されている
- 水回りを住人で共用する(下宿のイメージ)
- リビングなどの共用部で入居者同士が交流できる
一般的にシェアハウスとは、一戸建てもしくは寮、社宅などの既存建物を水回りなどに手を加え、同じ建物内で共同生活をする賃貸物件のことを言います。(一昔前の「下宿」のような住まい方に近いものです。)
原則として、個室には水回り設備はありません。
個室の面積がそれほど広くない代わりに、トイレ・シャワー室・洗面所などの設備が共用部に設置されています。
家具や家電も揃っており、すぐに生活をスタートすることができます。
また、シェアハウスで最も特徴的なのは、外国人も含め様々な人と「交流」ができることです。
ひとつ屋根の下で協力して住むことで、いろいろな人と知り合い、毎日を楽しく暮らす大きな家族のような生活を提供しているのです。
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こんな物件は「シェアハウス」とは言えないので注意する
管理運営会社などがどんなにシェアハウスと謳っていても、下記のような物件はシェアハウスとは言えません。
「シェアハウス」という言葉にだまされないように注意しましょう。
- 共用のリビング・ダイニングがない
- 入居者同士の交流ができる仕組みになっていない
- 個室の数が多すぎる
今後のシェアハウス経営の見通し
今回のかぼちゃの馬車の問題の影響で、シェアハウスの運営は困難になってしまうのでしょうか。
私はそうは思いません。
その理由を実際にシェアハウスを運営している立場からお伝えします。
- 入居希望者が多い(需要が多い)
- 都市部は若者の流入が多い
- 活用されていない建物が多い
シェアハウスは、ポータルサイトや管理会社のサイトなどのインターネットを通じて、全国・海外から入居希望の問合せがあります。
アパートやマンションに比べて初期費用が低いため、住宅費をおさえたい若者に人気があります。
また、外国人を含めた様々な交流ができることも独自の魅力となっています。
シェアハウスは既存の物件を活用できるので、物件によってはリフォームなどの建築費を抑制しながら経営することも可能になります。
また建築基準法が2018年に改正され、築年数のたった物件や空き家・空きビルなどをシェアハウスとして活用できる可能性が高まりました。
筆者は2007年からシェアハウスに携わっており、10年以上運営して着実に利益を得ているオーナーや物件も多くあります。
本来のシェアハウスの魅力を生かした物件であれば、今後も十分に運営が可能だと思っています。
シェアハウスについて疑問に思っている方や運営を考えている方には、メディアの情報だけで判断せずに現場の意見も含めた正しい知識を身に付けて欲しいと思います。
シェアハウスの将来性については下記のコンテンツでより詳しく解説しています。
まとめ
「かぼちゃの馬車」は、間取りや運営などがシェアハウスとはいえない物件でした。
ほとんどが新築の物件だったため、現在でも建物が活用されているものもあります。
シェアハウスに興味のあるオーナーや管理会社は、シェアハウスとはどのような特徴の物件なのかということを十分に理解し、経験と実績のある会社やパートナーに相談することが重要です。
- 「かぼちゃの馬車」はシェアハウスとはいえない物件だった
- 本当のシェアハウスにはリビングがあり交流が魅力
- シェアハウスの需要は衰えていない
- シェアハウスの運営はこれからも可能である
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