「定期賃貸借契約書」の作成方法(オーナー向け)【ひな形・サンプルあり】
シェアハウスに関連した契約書を解説

 

このコンテンツでは、定期借家契約の作成方法(書き方)について解説しています。

シェアハウスの事例ですが、一般のアパートやマンションの定期建物賃貸借契約にも応用が可能です。

 

シェアハウスでは、そのほとんどが「定期借家契約」を採用しています。

その理由は、数か月の短期の契約への対応や共同生活のトラブル防止のために有効な賃貸借の方法だからです。

入居・退去がしやすく手軽に利用できるのがシェアハウスの特徴です。

 

定期借家契約(定期建物賃貸借契約)の仕組みとメリットを知れば、シェアハウスやアパートの経営・管理に役立てることができます。

普通賃貸借契約のデメリットを補うこともできるので、トラブルを防止して「安定した賃貸経営」が可能になります。

 

筆者は、東京で20棟・300室のシェアハウスの管理会社にたずさわり、10年以上の経験があります。

実際に契約書面を作成してきたプロの視点から、事例を紹介しつつわかりやすくお伝えします。

契約書面の雛形(ひな形・サンプル・テンプレート)や規則・ハウスルール、ダウンロードができるサイト情報も掲載しています。

 

定期借家契約書の作成ポイント
  • 定期建物賃貸借契約が成立する「要件」を確認する
  • 要件を満たした契約書類を作成する
  • 「更新がなく、期間の満了により終了する」説明書面を別紙で作成する
  • 契約期間が1年以上の場合は、期間満了の1年~6ヶ月前までに、借り主に対して契約が終了することを通知しなければならない
  • 「再契約」の書類を準備してスムーズに手続きできるようにしておく
  • 要件を満たさないと普通借家契約とみなされるので注意する
  • シェアハウスはほとんどが定期借家契約を採用している

 

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定期建物賃貸借契約とは

カウンターで契約をする女性の写真画像

シェアハウスは入居者と定期借家契約をむすぶケースが多い

 

シェアハウスの運営側は、入居者と「定期建物賃貸借契約」をむすびます。略して「定借(ていしゃく)」と呼ぶこともあります。

一般的なアパートやマンションの契約(普通借家契約)とはいくつかの違いがあります。

 

定期建物賃貸借契約の特徴
  • 期間満了で契約が終了する
  • 更新がない(貸主の正当事由は不要)
  • 住み続ける場合は「再契約」をむすぶ
  • 必要な書面・契約内容・手続きがある

 

定期借家契約(定期建物賃貸借契約)は、明確に期限を定めて契約をおこないます。

アパートやマンションなどのいわゆる普通契約にも契約期間はありますが、「更新」ができる契約になっています。

しかし、定期借家契約は「更新」がありません。期限がきたら契約はその時点で終了します。
(貸主側からの更新拒絶や正当事由は必要ありません。)

入居者が引き続き住む場合には、あらためて契約をむすぶ(再契約)必要があります。

 

また、定期借家契約の期間が年以上の場合、貸主は借主に、期間満了の年前からヶ月前までの間に、「期間満了により賃貸借が終了する」旨を通知する必要があります。

たとえば、日から1年間の定期借家契約を結んだ場合は、30日までに通知する必要があります。(貸主から借主に通知する)

 

1年未満の期間であればこの「通知」は必要ありません。

契約期間の満了と同時に契約が終了します。

 

定期借家契約とは (国土交通省)
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000049.html

 

シェアハウスが定期借家契約を採用している理由は、共同生活が難しい人や家賃の滞納者にスムーズに退去してもらうためです。

定期借家契約であれば、シェアハウス生活に向かない人には、契約期間の満了と同時に退去してもらうことができます。

また、家賃の滞納がある人に退去してもらうことも可能です。

 

このような場合に、オーナーや運営側の「正当事由」は必要ありません。(通常の賃貸借契約では更新しない場合に正当事由が必要)

定期借家契約は「更新」がないので契約期間をこえて入居することはできないのです。

もちろん優良な入居者には長く住んでもらいたいので、契約期間が満了しても「再契約」することで住み続けてもらうことができます。

 

 

定期借家契約と普通借家契約の比較

定期借家契約 普通借家契約
契約方法 (1)公正証書等の書面による契約に限る
(2)さらに、「更新がなく、期間の満了により終了する」ことを契約書とは別に、あらかじめ書面を交付して説明しなければならない
書面でも口頭でもよい
更新の有無 期間満了により終了し、更新されない 正当事由がない限り更新される
期間を1年未満とする建物賃貸借契約の効力 1年未満の契約も可能 期間の定めのない賃貸借契約とみなされる
建物賃借料の増減に関する特約の効力 賃借料の増減は特約の定めに従う 特約にかかわらず、当事者は、賃借料の増減を請求できる
借り主からの中途解約の可否 中途解約に関する特約があればその定めに従う 中途解約に関する特約があれば、その定めに従う

 

 

定期借家に関するQA

(定期借家推進協議会)  http://www.teishaku.jp/qa.html

(国土交通省)  http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000049.html

 

シェアハウス管理の「形態」を確認する

審査・チェックリスト:写真画像

シェアハウス管理の形態を理解して確認しておこう

 

入居者との契約方法について検討する際には、まずはシェアハウスの「管理形態」を確認する必要があります。

オーナーと管理会社との契約内容をよく確認しましょう。

 

シェアハウスの管理形態を確認する
  1. オーナーが自主管理する
  2. 管理会社に一括賃貸する(マスターリース契約など)
  3. 管理会社に「管理のみ」を委託する

3. のケースでは、「オーナーと入居者」が賃貸借契約をむすびます。
管理会社が契約の仲介(媒介)をする際には重要事項説明の実施や書類が必要となり、会社は宅地建物取引業の免許も必要になります。

 

1. オーナーの自主管理の場合

入居者とむすぶ定期借家契約書類を作成し、契約に関する業務をすべてオーナーが行うケースです。

オーナーが入居者と直接に契約する場合には、仲介業者や重要事項説明は必要ありません。

契約書類の保管や個人情報の管理をしっかりと行ないましょう。

また、入居者と「再契約」をむすぶ手続きも忘れずに行う必要があります。

 

2. 管理運営会社に一括賃貸する場合

オーナーと管理会社が締結する「契約書」をよく確認しましょう。

オーナーが管理会社に建物を一括で賃貸借する内容(マスターリース契約)になっていて、かつ入居者に「転貸(サブリース)」することが記載されている場合は、入居者に対する「貸主」は管理運営会社となります。

 

サブリース・マスターリースの仕組み:図解:写真画像

マスターリース契約とサブリース方式(国土交通省)

 

 

マスターリース契約では、オーナーは「入居者に対する貸主」にはならないことを理解しておきましょう。(オーナーは管理会社に対する貸主となります。)

管理会社が貸主となって入居者と定期借家契約をむすぶことは、「不動産仲介(媒介)業」ではありません。
(オーナーと入居者の契約を「仲介」するのが不動産業です。)

そのため、このケースでは管理会社に「宅地建物取引業」の免許はなくても構わないことになります。
また、入居者との契約には「宅地建物取引士」による「重要事項説明」も必要ありません。当然ながら、「仲介手数料」も発生しません。

 

(注意点)
オーナーが管理会社に建物を一括で賃貸したとしても、必ずしも「家賃保証」が行われるわけではないので注意が必要です。
家賃保証がある契約かどうかは、管理会社と締結する契約内容によって異なります。

 

いわゆる「サブリース契約」といっても、オーナーの家賃を保証する契約とそうでない契約があります。
入居状況に合わせてオーナーに支払う家賃が変動するタイプの契約もあります。

(※サブリースとは「転貸」するという意味で、必ずしも「家賃保証」することではないことに注意)

 

 

3. 管理会社に「管理」のみを委託する場合

オーナーと管理運営会社との契約が単なる「管理契約」であれば、管理受託契約を締結します。

サブリース新法の施行により、管理会社は管理受託契約前にオーナーへの「重要事項説明」が義務化されています。

 

この場合、入居者との賃貸借契約はオーナーが結ぶことになります。

管理会社がオーナーに代わって入居契約を行うことは、宅地建物取引業法での「仲介(媒介)や代理」に該当します。

管理会社が入居者の「媒介や代理」の業務を行う際は、宅地建物取引士による「重要事項説明書」の説明が必要になり、管理会社は「宅地建物取引業」の免許を取得していなければなりません。

 

注意点まとめ
  • シェアハウスはオーナーが管理会社に建物を一括で賃貸する契約が多い
  • 一括賃貸契約を締結していない場合は、オーナーが入居者に部屋を賃貸することになる
  • その際は、管理会社は入居者を「仲介(媒介)・代理」する役割をすることになる

 

 

定期借家契約書の作成 ①書類を準備する

シェアハウスの入居者と結ぶ契約書は、定期借家契約(定期建物賃貸借契約)を利用するケースが多くなっています。

入居者との賃貸借契約を行う自主管理のオーナーや管理会社などは、シェアハウスのオープン前に「定期借家契約の書類」を準備しておく必要があります。

通常の賃貸借契約とは異なる部分や独自に必要な書面もありますので、しっかりと準備をしましょう。

実物の事例を紹介しながら解説していきます。

 

準備する契約書類(契約時に必要な枚数)
  • 定期借家契約書(2部)
  • 定期借家契約書の説明書面(2枚)
定期賃貸住宅標準契約書(国土交通省)の写真画像

定期賃貸住宅標準契約書(国土交通省)

 

定期借家契約の説明の書類:写真画像

定期賃貸住宅契約についてのの説明書(国土交通省)

 

契約書・説明書面は、国土交通省のサイトからダウンロードできます。(定期賃貸住宅標準契約書)
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000030.html

 

定期借家契約は、公正証書等の「書面」によって契約することが必要になります。(書面は公正証書でなくても可能)

また、その締結前に「この契約には更新がなく、期間の満了により終了する」ことを、書面(契約書とは別紙)を交付して説明しなければなりません。

つまり契約時には、「契約書」と「説明書」の2つの書面が必要です。

 

注意

  • 2つの書面は「別々に」用意しなければならない。
  • 一冊にとじたり定期借家契約書の中に入れ込んだりしてはいけない。

 

この2つの要件が満たされていないと、通常の賃貸借契約とみなされてしまいます。

つまり「更新のある」契約となり、貸主が更新しない場合には「正当事由」が必要になります。

そうなると、オーナー側が更新をしない(拒絶)することは簡単ではなく、退去してもらうことは難しくなります。

 

定期借家契約をむすぶ際には、その「要件」をしっかりと満たしているかをしっかりと確認しておきましょう。

 

定期借家契約書の作成 ②記載事項をチェックする

家・物件のチェック:写真画像

定期借家契約書の要件を満たすために「記載事項」をよく確認して作成する

 

定期借家契約書面の「記載事項」(要件)を確認していきましょう。

 

  • 一定の契約期間を定める
  • 契約の更新がなく期間満了で終了する

 

この要件を満たさないと定期借家契約とはいえず、従来型の普通借家契約として扱われますので注意が必要です。

定期借家契約では、当事者が一定の賃貸借期間を定めることが必要です。

貸主と借主の双方が明確にわかるように記載しましょう。

 

そして、「契約の更新がない」こと、「契約期間満了で終了する」ことを明記します。

 

(事例) 定期賃貸住宅標準契約書(国土交通省)

第2条2項
本契約は、前項に規定する期間の満了により終了し、更新がない。
ただし、甲及び乙は、協議の上、本契約の期間の満了の日の翌日を始期とする新たな賃貸借契約をすることができる。

 

また、「契約が更新されず期間の満了により賃貸借が終了する旨を記載した書面」を交付して説明する必要があります。

契約書とは「別紙」で用意しておきましょう。(契約書と一緒に印刷したり綴じたりしてはダメ)

 

定期借家契約の説明の書類:写真画像

説明の書面は「別紙」で準備すること

 

 



定期借家契約書の作成 ③再契約書面を作成する

ノートパソコン:資料:準備:写真画像

「再契約」の書面も事前に作成してスムーズに手続きできるようにしておこう

 

定期借家契約書は「更新がない」ため、契約期間が満了した入居者に住み続けてもらうためには、あらたに期間を定めた「再契約」をおこなう必要があります。

たとえば、契約期間が 2019年4月1日~12月31日 の定期借家契約を結んだとすると、その後も住み続けてもらうためには 2020年1月1日 から開始する定期借家契約をあらたに結ばなければなりません。

これが「再契約」です。(前回の契約書は無効となります。)

 

シェアハウスで実際にトラブルとなるのは、ごく一部の入居者です。

ほとんどの入居者は問題がなく、オーナーや管理会社は住み続けて欲しいと考えています。

そのため、事前に「再契約書面」を作成しておき、契約期間の満了にともないスムーズに手続きをする体制を整えておきましょう。

 

再契約書面を準備する

  • 定期借家契約書(2部)
  • 定期借家契約書の説明書(2枚)

 

書面の内容は、最初の契約時と同じで構いません。

シェアハウスは再契約書を多用するので、できるだけコンパクトにまとめると業務が効率化できます。

 

実際のシェアハウスの事例(再契約書類)

筆者は、東京で20棟・300室のシェアハウスを運営している管理会社にたずさわっています。

その10年超の経験から、シェアハウスの再契約に関する事例を紹介します。

 

定期借家契約は、契約期間を自由に設定することができます。(契約の期間が1年以上の場合は、借主に対して事前に「終了通知」をする必要があるので注意してください。)

シェアハウスは保証人が不要で入居できる物件も多いため、運営側がリスク回避のために「短い契約期間」を設定するケースもあります。

たとえば筆者の管理会社では、初めてシェアハウスを利用する人に対しては、「3か月の契約」からスタートしています。

 

この場合、契約してか月後に引き続き入居してもらうには、「再契約」をしなければなりません。

手続きの期間を考えると、入居してか月後には再契約の作業をしなければならなくなります。

 

このように、定期借家契約は再契約の作業や手間がかかります。

物件数や入居者数が増えると、再契約の業務が多発するようになります。

そのため、「作業の効率化」が重要になります。

 

初回の契約書は、しっかりとした冊子状のものでも構いませんが、再契約を繰り返すと製本の手間や用紙代、保管のコストがかかってきます。

そのため、筆者の管理会社では、再契約書は「A3」の用紙に両面印刷をして作成しています。

契約書の内容とハウスルールの文字を縮小して、両面に印刷して手続きしています。

これであれば用紙は1枚で済みますし、製本する必要もないので作業も手間も最小限におさえることができます。

 

ただし、「定期借家契約の説明書面」は別紙で用意する必要があります。

 

注意

定期借家契約書の「説明書面」は、別紙で必ず準備すること

 

再契約書と説明書面のそれぞれ部を用意し、入居者から署名・捺印をもらいます。(それぞれ1部は運営側で保管します。)

入居者の緊急連絡先・学校や勤務先の変更・電話番号変更・メールアドレス変更などがあるときには、再契約書に訂正・記入してもらいます。

この業務を入居者が退去するまで繰り返します。

 

オーナーが自主管理をする場合には、入居者の契約期間と再契約の手続きに漏れがないように気をつけましょう。

一覧表を作成したり、スケジュール管理したりすることが重要になります。

 

まとめ(定期借家契約書の作成)

2020年4月から、民法が改定されました。

保証人、原状回復などシェアハウスに関係する重要な項目もあります。

改正民法に合わせた契約書を作成することが重要です。

 

  • シェアハウスはほとんどが定期借家契約を採用している
  • 定期借家契約が成立する要件を確認する
  • 要件を満たした契約書類を作成する
  • 「更新がなく、期間の満了により終了する」書面を交付して説明する
  • 契約期間が1年以上の場合は、期間満了の1年~6ヶ月前までに、借り主に対して契約が終了することを通知しなければならない
  • 再契約の書類を準備してスムーズに手続きできるようにしておく
  • 要件を満たさないと普通契約とみなされるので注意する

 

定期借家制度(定期借家推進協議会 リーフレット)
http://www.teishaku.jp/pdf/teishaku_leaf.pdf

 

「定期賃貸住宅標準契約書」関係様式のダウンロード(国土交通省)
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000030.html

 

©シェアハウス経営の教科書

 

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