シェアハウスのオーナーや運営というと、不動産の免許や資格が必要と思うかもしれません。
しかし、「物件の貸主」が入居者を募集したり契約(直接契約)したりする場合には、不動産関係の免許・資格は必要ありません。
このコンテンツでは、シェアハウスの経営(開業・届出)時の不動産関係の免許や資格について解説しています。
筆者(宅地建物取引士)は、宅地建物取引業(宅建業)の免許がある「シェアハウスの管理会社」で10年以上の経験があります。
シェアハウスにおける不動産関係の免許や資格について、実際の事例を交えて具体的にわかりやすくお伝えします。
- シェアハウスのオーナー・運営は誰でもできる
- シェアハウスの「貸主」には不動産関係の資格・免許はいらない
- シェアハウスの管理会社が「一括借り上げ」するケースが多い(※)
- 管理会社がオーナーと入居者を「仲介(媒介)」するときには、宅建業の免許・宅建士による重要事項説明が必要になる(※)2021年6月15日より、一定規模以上の管理会社は賃貸管理登録が義務化されました。
目次(もくじ)
シェアハウスのオーナー(運営)には誰でもなることができる
シェアハウスの「貸主」には資格・免許はいらない
シェアハウスは、個人でも法人でも誰でもオーナーになり開業することができます。
宅建業(宅地建物取引業)の免許や、宅建士(宅地建物取引士)の資格は必要ありません。
これはシェアハウスだけでなく、アパートやマンションも同じです。
賃貸物件の「貸主」と「管理」には免許や資格はいらないのです。
アパートのオーナーがみんな資格や免許をとらなければならないとしたら大変ですよね。
自分の不動産物件を他人に貸すことは、自由に行うことができるようになっているのです。
つまり、貸主のオーナー自ら入居者と契約するときには、資格や免許はいらないのです。
「シェアハウス管理会社」との契約に注意
シェアハウスの管理は通常のアパートやマンションに比べて手間がかかります。
そのため、所有者(オーナー)は物件の管理をシェアハウス管理会社に委託するケースが多くなります。
入居者の募集から家賃管理、退去手続きまで全てを行うことが多く、その場合はオーナーから物件を「一括借上げ」するのが一般的です。(いわゆるサブリース方式)
「入居者に転貸する前提」でオーナーと管理会社が締結するもので、マスターリース契約と呼ばれます。(オーナーに支払う賃料を保証する契約になる場合もあります。)
オーナーがシェアハウス管理を委託する場合には、その契約内容をよく理解して納得することが重要です。
(参考)
アパート等のサブリース契約を検討されている方は契約後のトラブルにご注意ください!
平成30年3月27日 公表(平成30年10月26日 更新) 金融庁・消費者庁・国土交通省
サブリース方式に関する新しい法律も施行されます。
物件のマスターリース契約(サブリース)や管理業務の委託を検討しているオーナーは、新法の内容や業者の対応をよく確認しましょう。
※サブリース業者に対する規制・内容については、下記のサイトの解説を参考にしてください。
シェアハウスの自主管理なら「民法・借地借家法」に注意する
管理会社に任せずにオーナーがシェアハウスを自主管理する場合も、不動産関係の免許や資格は必要ありません。
しかし、民法・借地借家法などに注意して運営しなければなりません。
とくに、シェアハウスの入居者と結ぶことの多い「定期賃貸借契約書」の知識と活用が重要になります。
また、2020年4月1日からは改正民法が施行されていますので注意が必要です。
(参考)
賃貸借(国民生活センター)
入居者を「仲介」するときには資格・免許が必要になる
免許や資格が必要になるのは、他人の不動産を「仲介(媒介)・代理」するときです。
管理会社(不動産会社)がオーナーと入居者の契約を「仲介」したり「代理」したりする業務です。
仲介(媒介)を行う会社は、宅地建物取引業(宅建業)の免許が必要になります。
また契約時には、宅地建物取引士(宅建士)による「重要事項説明書」の説明(署名・捺印)と交付が必要になります。
賃貸物件の場合は、仲介手数料は「最大で家賃の1か月分+消費税」です。
(参考)
シェアハウスの契約書トラブルなど(弁護士ドットコム)
シェアハウス管理会社は「仲介」しない
「仲介」(媒介)しない理由(シェアハウス)
シェアハウスの管理会社が実際に入居者を「仲介」することはほとんどありません。
それは下記のような理由です。
- 入居者から仲介手数料が取れない
- 重要事項説明をするのが大変(入居・退去が多く宅建士も必要)
- 宅建業の免許がない(仲介できない)
管理会社が「貸主」となってシェアハウス運営をすることが多いため、入居者との契約時に「仲介手数料」が必要ありません。
また、仲介をする場合には入居者との契約時に重要事項説明をしなければならなくなるので、宅建士の資格を持ったスタッフが必要になります。
そのような理由から、シェアハウスの管理会社は物件の「借上げ契約(マスターリース契約)」をオーナーと結びます。
オーナーから「物件1棟そのもの」を借りる契約です。
シェアハウスの管理会社は、入居者を募集して賃貸借契約を結びます。
オーナーからみれば、自分の物件を入居者に「転貸(サブリース)」をすることになります。
つまり、オーナーから物件を一括借上げすることによって、管理会社は入居者に対して「貸主」になることができます。
そのため宅建業法の「媒介(仲介)」にはあたらず、宅建業の免許や宅建士による重要事項説明も必要なくなるのです。
シェアハウス管理会社に対する注意点
上記のとおり、シェアハウスの管理会社が「貸主」となって入居者と契約する場合(直接契約)には、宅地建物取引業の免許は必要ありません。
つまり、宅建業者でなくてもシェアハウスの運営・管理は可能ということになります。(宅地建物取引士もいらない)
しかし、オーナーがシェアハウスの運営を管理会社にまかせる際には、その会社の知識や経験を十分に確認することが重要です。
不動産や賃貸管理についての経験が少なかったり知識が不十分だったりすると、トラブル時に迅速な対応ができない可能性があります。
特に、民法や借地借家法を理解していないと入居者との賃貸借契約書に不備が出てしまったり、法律に順守した対応ができなくなったりしかねません。
たとえば、民法は2020年4月に大きく変更されており、専門的な知識や実務のノウハウがないと今後のトラブルに発展する可能性があります。
その意味では、シェアハウス管理会社が「宅地建物取引業者」であるかどうかというのは、オーナーにとっては一つの判断材料になるでしょう。
シェアハウスの借上げ契約(サブリース)については下記のコンテンツで詳しく解説しています。
筆者の事例(シェアハウス管理会社)
筆者(宅地建物取引士)は、20棟・300室のシェアハウス管理会社で10年以上の経験があります。(宅地建物取引業者)
その経験からすると、シェアハウスの管理運営会社は入居者にとっての「貸主」になるケースがほとんどです。
オーナーから建物を一括で借り上げる契約(マスターリース契約)を結び、その建物をシェアハウスとして入居者に賃貸します。
シェアハウスの管理会社が一括借り上げする理由は、前述したとおり宅建士による「重要事項説明」が必要ないからです。
シェアハウスのオーナーは、こういったシェアハウス運営(開業)の特徴や事情をよく理解しておくことが重要です。
もしオーナーが入居者との直接契約を希望する場合には、管理会社は宅建業法にのっとって「仲介(媒介)」をしなければなりません。
実は、筆者がたずさわるシェアハウス管理会社でも、入居者との「直接契約」にこだわるオーナーがいます。
そうなると、不動産業者として「仲介」しなければならなくなります。
宅建業者(宅地建物取引業者)として入居契約時に宅建士(宅地建物取引士)のスタッフが重要事項説明を行い、書面に署名・捺印をする必要があります。
仲介手数料を誰からどのように徴収するか、ということも検討しなければならなくなります。
まとめ(シェアハウスの資格・免許)
シェアハウスのオーナーや管理には、資格や免許は必要ありません。
ただし、入居者に安全・快適な住まいを提供するためには、法律的な知識や経験が必要になります。
管理会社に委託する場合でも、あなたの理想に沿ったシェアハウス運営ができるかどうかをよく見極めることが重要です。
- シェアハウスのオーナー(開業)には誰でもなることができる
- シェアハウスの「貸主」には不動産関係の資格・免許はいらない
- シェアハウスの管理会社が「一括借り上げ」するケースが多い
- 管理会社がオーナーと入居者を「仲介(媒介)」するときには、宅建業の免許・宅建士による重要事項説明が必要になる
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