サブリースのトラブルに注意! 関係省庁が発表した資料を解説します
中央省庁が「サブリース契約」の注意喚起の資料を公表

 

賃貸経営や不動産投資では、管理会社による運営や金融機関の不正が問題になっています。

その中でも「サブリース方式」によるトラブルが問題となっています。(いわゆるサブリース契約トラブル)

不動産のサブリースについては、金融庁・消費者庁・国土交通省の連名による資料が発表されています。

 

このコンテンツでは、発表された資料のポイントを解説しています。

サブリース方式の注意点を知ることで、トラブルを防止して安定し賃貸経営が可能になります。

 

不動産投資などにおけるサブリースには近年、賃料減額をめぐるトラブルなどが発生しています。

これから不動産投資をする人やすでにサブリース方式で賃貸経営をしている人にとっては、とても気になるところだと思います。

筆者は東京の不動産会社にて、物件オーナー(所有者)に対する「サブリース関係の契約書の作成と締結」を実際に行なってきました。

そのため、サブリース業者が作成する「マスターリース契約」のメリット・デメリットについて詳細に把握しています。

今回発表された資料のポイントをふまえて、筆者の経験を生かしてプロの視点からお伝えします。

※記事の末尾に「相談窓口」の情報を掲載しています。

 

アパート等のサブリース契約を検討されている方は契約後のトラブルにご注意ください!(国土交通省・金融庁・消費者庁)

001227720.pdf (mlit.go.jp)

 

目次(もくじ)

サブリースの注意点を関係省庁が公表しています

消費者庁によるサブリース契約に関する注意の写真画像

 

サブリース契約に関するトラブルにご注意ください!(金融庁・消費者庁・国土交通省)

サブリース契約の注意喚起資料(消費者庁)
https://prtimes.jp/a/?f=d67281-20201209-3423.pdf

 

サブリース方式の注意点
  • 賃貸住宅の事業計画ついて理解する
  • 契約内容やリスクを十分に理解してから契約する
  • 賃料は変更(減額)になる場合がある
  • 契約期間中でも解約されることがある
  • 契約後の出費もある
  • 金融機関の融資の不正行為が発生している
  • 不動産業者の不正行為が発生している

 

今回、国土交通省・消費者庁・金融庁が公表した内容に沿って、「サブリースの注意点」について見ていきます。

 

サブリースの注意点

サブリース事業の図解の写真画像

 

賃貸経営の専門家であるサブリース業者・管理会社が、オーナーの皆様の物件を借り上げ、より安定し た賃貸経営が見込めるとされる「マスターリース契約」。

入居者に係る煩雑な業務を、全てサブリース業 者に委託できる等のメリットもある一方で、想定外の損失等のリスクもあります。

「賃貸住宅の管理業務 等の適正化に関する法律」(サブリース新法)では、賃貸物件のオーナーと入居者が、 正しい理解と判断ができるような環境を整えるため、適切な広告・勧誘や契約締結前の「重要事項」の 書面交付及び説明を義務付けています。

オーナー自身がトラブルに遭わないためにも、ポイントをしっかり把握しておきましょう。 

 

契約期間中や契約更新の際に賃料が減額される可能性があります

「都心の物件なら需要が下がらないので、サブリー ス家賃も下がることはない」

「○年間に渡り、賃料は確実に 保証される」

 

上記のようにマスターリース契約時に断定的な説明を受けたり、契約書に家賃保証等と書いてあったとしても、借地借家法(普通借家 契約の場合) (第32条)により、オーナー等に支払われる家賃が契約の期間中や更新時などに減額請 求される可能性があります。

また、減額請求された場合でも、 そのまま受け入れなければならないわけではありません。 (※借地借家法による賃料減額について説明がない場合、法律違反になります。) 

契約期間中でも契約が解約される 可能性があります

マスターリース契約書で「サブリース業者から解約することができる旨の規定」がある場合は、契約期間中であっても解約される可能性 があります。

また、オーナーからの更新拒絶には借地借家 法(第28条)により「正当事由」が必要となります。

(※借地借家法によるオーナーからの更新拒絶には正当事由が必要になることについて説明がない場合、法律違反になります。) 

家賃を受け取るだけでなく出費がある場合もあります!

マスターリース契約において、原状回復費用や大規模修繕費用は原則「オーナー負担」となります。

そのため、契約の際にはサブリース業者と賃貸住宅の「維持保全の費用分担」について必ず確認しましょう。 

融資審査の際に不正を行われたという事例もあります

融資審査を通すために、不動産業者が、自己資金のないオーナーの預金通帳の残高を改ざんするなどの「不正行為」を行って いた事例や、金融機関が、融資の条件として、オーナーにとっ て不必要なカードローン・定期預金・保険商品等の「抱き合わせ販売」を行っていた事例もあります。

サブリース物件を取得するために銀行から融資を受けるときは、融資を受ける金額や融資の内容について業者任せにせず「直接銀行に確認」しましょう。 

 

過去にサブリース業者が破綻したり、契約期間中に契約解除を迫られた例もあります。

サブリース業者とどのような契約を 結んだかにかかわらず、最終的なリスクと責任はオーナーがご自身で負うこととなることに留意しましょう。 

 

「賃貸住宅経営に関る契約(マターリース契約)」のチェックポイント 

重要ポイントを示すスーツの男性の写真画像

注意点を見ていきましょう

 

サブリース業者から不当な勧誘は受けていませんか

将来の家賃減額リスクがあることなどついて、あえて伝えず、サブリース事業のメリットのみ伝えるような勧誘や、断定的に「都心の物件なら需要が下がらないのでサブリース家賃も下がることはない」「家賃収入は将来に渡って確実に保証される」といった不実のことを伝える勧誘行為は、不当勧誘に該当する可能性があります(賃貸住宅管理業法第29条)。

オーナー等が「お断りします」、「必要ありません」、「結構です」、「関心ありません」、「更新しません」など、明示的に契約の 締結又は更新意思がないことを示しているにもかかわらず、サブリース業者や勧誘者から勧誘された場合も不当勧誘に該当する可能性があります(賃貸住宅管理業法第29条)。 

サブリース業者の広告は、メリットのみが強調されていませんか

サブース業者自身又は勧誘者が行うマスターリース契約の締結を促す広告においてオーナーとうとする者が賃貸事業の経験専門知識が乏しいことを利用しサブリース業者支払賃は契約期間内確実に!切収入が下がりません!オーナーによる維持保全は費用負担を含め一不要!などメリットのみを強調して賃貸事業のリスクを小さく見せる表示をしている場合は誇大広告に該当する可能性があります(賃貸住宅管理業法第28条)。 

 

契約締結前に重要事項説明を受け、 契約締結時には書面の交付を受けましたか

マスターリース契約の締結にあたり、サブリース業者は契約締結前に、相手方の知識、経験、財産の状況、賃貸住宅経営の 目的やリスク管理判断能力に応じ、重要事項について書面を交付して説明を行う必要があり、契約締結時には遅滞なく、契 約書面を交付することが義務付けられております(賃貸住宅管理業法第30条、31条)。

また、オーナーが貸主となって、普通借家契約としてマスターリース契約を締結する場合、重要事項説明を受けたとしても、借地借家法の制約を受けるため、 サブリース業者による契約更新時等の賃料の減額や、契約期間中の解約などの可能性があるほか、賃料発生までの免責期間、 契約期間中の追加費用の発生、契約の解約条件等について、サブリース事業者から重要事項説明を受ける際は内容をよく確認しましょう。(※説明がなかった場合は法律違反になります。) 

国土交通省の「ガイドライン」をチェックしよう

注意事項の写真画像

 

国土交通省ではサブリース業者等とオーナーとのラブルを防するため法の規制対象や法反となり得る的な事例を明確これらの規制の容を関係者に分かりやすく示しブリース事業に係る適正な業務のための ガイドライン」を策定ています。 

 

オーナーに説明すべき 家賃減額リスク等の内容の明確化 

マスターリース契約締結前に書面に記載て説明しなけれならない「リスク事項」があります。 (下記)

国土交通省のガイドラインでは、このリスク事項を明確にしています。

 

  • 家賃が減額される場合があること
  • 家賃の定期的な見直しがあり、見直しにより家賃 が減額する場合があること
  • 契約条件にかかわらず借地借家法(第32条)に 基づきサブリース業者が減額請求を行うことができること
    その場合も減額請求を受け入れなければな らないわけではなく、協議が必要であること)
  • 契約期間中に解約となる場合があること
  • 契約期間中でも、サブリース業者から解約される場合があること
  • 借地借家法(第28条)に基づきオーナーからの 解約には正当事由が必要であること

 

規制の対象とる「誘者」の明確化 

賃貸住宅の建設請負や土 地等の売買の際にマスター リース契の締結を勧める建設業者や不動産業者特定のサブリ業者から勧誘の依頼を受けたオー ナーが勧誘該当することを記載しています。 

 

される誇大広告・不当勧誘の明確化

誇大広告不当勧誘として禁止され る具体例載しています。 

 

<誇大広告の例>

家賃保証室保証などの文言に接する箇所に定期的な家賃の見直しが ある場合にその及び借地借家法(第3 2条)の規定により減額請求される可性があることが表示されていな等 

 

<不当勧誘の例>

賃減額リスク契約期間中のサブリー ス業者からの契約解約の可能性オーナー からの解約には正当事由必要であること について伝えずサブリース事業のメリットのみを伝える 等 

 

 

サブリース業者との「トラブル事例」

悩む男性の写真画像

実際の「トラブル事例」を見ていきましょう

 

賃貸住宅管理業法のうち「サブリース業者と所有者との間の賃貸借契約の適正化に係る措置」(以下、サブリース新法)は、2020年12月15日に施行されました。
サブリース新法の施行に伴い、違反したサブリース事業者についての情報を国に提供し、適切な措置を求めることができる「相談窓口(申出制度)も導入されています。
サブリース事業や業者とのトラブルについて、実際の事例を見ていきましょう。

サブリース新法が施行されて30件超のトラブル事例あり

国土交通省が設けた相談窓口にはオーナーから30件超の相談が寄せられていることが報道で明らかになっています。
国交省によると、2021年の12月までに申し出があったのは33件。
調査が進行中の案件はあるものの、行政処分に至ったケースはまだないとのこと。
申し出の多くは、サブリース賃料の変更について。
新法の施行前に結ばれたマスターリース契約であっても、法律の施行後に内容の変更が発生した場合は、サブリース新法による規制の対象となります。
マスターリース契約を更新する場合でも、規制対象となるケースがある点にオーナーは注意が必要です。
不動産業者や管理会社側も「サブリース新法」への対応が求められます
サブリース物件が多い業者は、オーナーとのマスターリース契約に関して重要事項説明書や契約書を整備することが重要。
現状では表立ったトラブルは出てきていませんが、サブリース新法の規制対象となる案件が増えれば今後に表面化する可能性はあるでしょう。

 

 

「かぼちゃの馬車」も同様のトラブル・問題点があった

サブリース新法の規制のきっかけともなった「かぼちゃの馬車」という物件のトラブル。

シェアハウスと称した物件に投資したトラブル事例です。

 

トラブルに巻き込まれないためにも、サブリース方式など不動産投資を検討するときには、様々なリスクを理解して行動することが重要です。

 

  • 賃貸住宅の事業計画ついて理解する
  • 契約内容やリスクを十分に理解してから契約する
  • 賃料は変更(減額)になる場合がある
  • 契約期間中でも解約されることがある
  • 契約後の出費もある
  • 金融機関の融資の不正行為が発生している
  • 不動産業者の不正行為が発生している

 

サブリース方式で重要なのが、サブリース業者と締結する「マスターリース契約書」です。

トラブルのほとんどは、契約書の内容の中にあると言っても過言ではないでしょう。

「かぼちゃの馬車」で被害を訴えているオーナーは、前述した契約の注意点をどこまで理解して契約していたでしょうか。

設立から数年たらずの会社(スマートデイズ)と30年間のサブリース契約をして、銀行から長期の融資を受けるという認識がどこまであったでしょうか。

今回の参考として、オーナーとスマートデイズ社(かぼちゃの馬車)との契約書の一部を掲載しておきます。

 

オーナーとスマートデイズ社とのシェアハウスの賃貸契約書。業者が一括で借り上げる「サブリース」を30年続けると記されている(撮影/朝日新聞記者・藤田知也):写真画像
オーナーとスマートデイズ社とのシェアハウスの賃貸契約書。業者が一括で借り上げる「サブリース」を30年続けると記されている(AERA dot. 2018年2月8日より)

 

 

かぼちゃの馬車の問題点については、下記のサイトで詳しく解説されています。

 

 筆者の「サブリース方式」に関する考え

筆者は、東京で賃貸住宅の運営・管理に10年以上たずさわってきました。

自らサブリース関係の契約書を作成し、オーナーと契約書の締結も行なった実績があります。

国土交通省がサブリースの当事者間におけるトラブルの未然防止を目的とした「標準契約書」をベースに作成していました。

ここからは、筆者が考えるサブリース方式について、経験をふまえて解説します。

 

 サブリース方式が悪いわけではない

現在もサブリース方式を採用しているオーナーは少なくありません。

筆者が知るオーナーには、当初の10年間のマスターリース契約を終了した後、さらに契約を更新している人もいます。

 

実績のある運営・管理会社であれば、サブリース方式でもトラブルになることはあまりありません。

そういう物件は入居者の需要も旺盛ですし、入居率も高くなります。

オーナーに対する毎月の家賃もきちんと支払え、運営・管理会社の利益も確保することができます。

 

「かぼちゃの馬車」の案件では、賃料を相場よりも高く設定して高い利回りをうたっていました。

これでは、サブリース方式では機能しなくなってしまいます。

 

筆者は、シェアハウスもサブリース方式も制度そのものが悪いわけではないと考えています。

契約書を事前に見せてもらう

マスターリース契約の前に、実際の契約書を見せてもらいましょう。

すみずみまでよく読み、疑問点があれば質問して解決しておきましょう。

契約書が国土交通省が監修した「標準契約書」に基づいているかを確認しましょう。

これをふまえた契約書であれば運営・管理会社の信頼性が高まりますし、トラブルの未然防止も期待できます。

入居者との契約書も見せてもらう

契約をする業者が入居者と締結する賃貸契約書も事前に見せてもらいましょう。

通常の賃貸住宅の契約書と内容がかけ離れていたり、あまりにも簡易な契約書の場合は要注意です。

運営・管理会社の資質を見極める材料にもなります。

サブリース業者が「宅建業者」であるか確認する

業者・管理会社が「宅地建物取引業」の免許を取得しているかどうかを確認しましょう。

取得している場合は、同時に創業年数も確認します。

賃貸住宅の管理業やサブリース業者は必ずしも宅建業者である必要はないのですが、宅建免許を持っていることは信頼できるひとつの目安になるでしょう。

運営・管理の実績を確認する

運営・管理している物件数を確認しておきましょう。経験豊富な会社かどうかの目安になります。

また、実際にオフィスや物件の見学を行ないましょう。

オーナー自らが自分の目で確認することが重要です。

管理体制、担当者を確認する

そのためには、物件や入居者の数に応じた体制が必要になります。

入居者に対して適切で迅速な対応が難しくなるでしょう。

また、自分の物件を管理する「担当者」を紹介してもらいましょう。

実績があり信頼できるか、コミュニケーションがしっかり取れるかなど確認しましょう。

その会社の評判を確認する

管理・運営会社の評判は、入居者からの意見にあらわれることが多くあります。

インターネット上や見学の際の評判を確認しておきましょう。

営業担当者の資質や対応を確認する

契約後のオーナーの窓口を「営業担当者」が行う会社もあります。

契約に至るまでのやり取りで、営業担当者の資質や対応力を見極めましょう。

物件管理部門との連携もチェックしておきましょう。

サブリースの相談窓口

《賃貸住宅に関するトラブル相談》

●公益社団法人全国賃貸住宅経営者協会連合会(ちんたい協会)
無料相談|ちんたい協会 公式サイト (chintai.or.jp)

●公益財団法人日本賃貸住宅管理協会
0120-37-5584  

《賃貸住宅管理業者に関する相談》

●国土交通省等の窓口(最寄りの窓口にご連絡ください。)
 http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bf_000019.html

《融資等に関する相談》

●金融サービス利用者相談室
0570-016811(IP電話からは 03-5251-6811)

《消費者トラブルに関する総合案内窓口》

●消費者ホットライン局番なしの188(いやや!)

《法的トラブルに関する総合案内窓口》

●法テラス・サポートダイヤル
0570-078374(おなやみなし)

まとめ(関係省庁によるサブリースの注意喚起)

国土交通省・金融庁・消費者庁が公表した「サブリース」の注意点については、オーナーや管理会社は把握しておく必要があるでしょう。

「相談窓口の連絡先」も記載してありますので、困ったときは参考にしてください。

 

サブリース契約の注意点(まとめ)
  • 行政のサブリースに関する「資料」をよくチェックする
  • 市場や相場を自分でも調べてみる
  • サブリースの仕組みをよく理解する
  • マスターリース契約書はすみずみまでチェックする
  • 運営・管理会社を見極める
  • 困った時は行政の「相談窓口」に連絡する

 

 

サブリースに関する新しい法律(サブリース新法)が制定されています。(賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律)

このサブリース新法では「絶対に損はしない」といった不当な勧誘を禁止し、家賃収入が保証される期間や条件などについて書面で説明することを義務づけます。

マスターリース契約時には業者による「重要事項説明」が必要になります。

オーナー側も業者側もサブリース新法をよく理解し、順守することが求められます。