シェアハウスの部屋のタイプ(種類)は3つあります。
- 個室
- ドミトリー
- セミプライベート
シェアハウスの計画をするときに、部屋をどのタイプにするか、配置や割合・広さなどはどうすればいいか、悩みやわからない場合もあると思います。
基本的には「個室」がメインとなるのですが、立地や条件によってはドミトリーやセミプライベート(相部屋)も検討し、より収益性を高めることができる物件もあります。
シェアハウスの部屋タイプを決めるには、正しい手順に沿ってプランニングし、立地などの条件を加味して「総合的」におこなう必要があります。
このコンテンツでは、シェアハウス「部屋のタイプと決め方」について解説しています。
まずは企画・計画の段階で部屋のタイプ・広さを想定してみて、「シェアハウスの収益性」をチェックすることが重要です。
あなたの希望の収益を生み出すかどうかを事前にチェックし、シェアハウス計画を進めるかどうかを判断していきましょう。
シェアハウス管理会社の経験が10年以上の筆者が、手順に沿ってわかりやすくお伝えします。
目次(もくじ)
シェアハウスの「部屋タイプ(種類)」は3つある
シェアハウスの経営ではアパートやマンション経営と同様に、部屋数と賃料が収益につながります。
一般の賃貸住宅と異なる点は、シェアハウスが既存の建物をリフォームして運営されることが多い、ということです。
また、シェアハウスの部屋のタイプは大きく分けて3種類があります。
どのタイプの部屋をいくつ作るかによっても収益は変わってきます。
シェアハウスの部屋タイプと広さを決める方法について詳しく見ていきましょう。
部屋タイプ 3つの種類
- 個室
- ドミトリー部屋
- セミプライベート
個室
入居者の完全なプライベートルームです。
基本時に1人1部屋を想定して計画します。
ドミトリー
いわゆる「相部屋」です。
たとえば、2段ベッドなどを設置して収容人数を増やして収益力を高めます。
セミプライベート
こちらも相部屋ですが、仕切りをしてプライバシーを高めているタイプの部屋です。
部屋タイプ それぞれの特徴
個室
個室の広さは狭すぎても広すぎてもいけません。
立地や条件に合わせてベストなコストパフォーマンスを追求します。
具体的には、4畳(約6.5平米)くらいから8畳(約13平米)くらいまでの広さになります。
シェアハウスは、あまりに広い部屋をつくってもマンションのように高い家賃は取れません。
家賃と共益費を含めて10万円以上を取ることは難しいと考えてください。
4畳くらいの広さでも需要はあります。
駅に近かったり、家賃が安かったりすれば入居希望者はいます。
せまい個室を多くつくれば、物件の収益性は高まります。
しかし、各個室の家賃は安くなるので「安さに重点を置く」入居者が多くなり、入居時の審査やその後の管理に慎重さが求められます。
10畳以上の部屋は2つの個室に分割すると収益力を高めることができます。
(事例:1)
10畳の部屋を分割して、4.5畳の部屋を2室つくる
(事例:2)
8畳と3畳の部屋を仕切り直して、5畳の部屋を2室つくる
こういったリフォーム工事は、木造の方がやりやすいです。
注意点
個室には窓の確保をします。
建築基準法により床面積の1/7以上の面積の窓が必要です。
(窓がない部屋は、人が住む居室としては認められないので「納戸」となります。)
ドミトリー・セミプライベート(相部屋)
必要な窓が足りないなど、大きな部屋を分割できない場合は「ドミトリー」か「セミプライベート」を検討しましょう。
2段ベッドを設置して人数を増やす方法やシングルベッドを並べる方法があります。
また、2人入居用の部屋とすることもできます。
たとえば、カップルや友人同士で入居できるようにします。
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部屋タイプと広さを決める「手順」(シェアハウス)
シェアハウス経営の検討をするにあたり、まずは「収益性のチェック」が不可欠です。希望の収益性が見込めなければ、シェアハウスを経営する意味がありません。
シェアハウスの収益性は、「部屋タイプと広さ」でほぼ決まります。
収益性を見極めるためにも、部屋タイプと広さをシミュレーションしてみることが重要になるのです。
独自のコンセプトを導入したシェアハウスを企画するケースもありますが、基本になる賃料は大きくは変わりません。
まずは、シェアハウスの収益性をチェックするために、部屋タイプと広さを決める「手順を」をみていきましょう。
- 7~8平米の個室が何部屋できるか「間取り案」を作成してみる
- 立地条件をチェックする
- 共用部分(リビング・水回りなど)の数・広さをチェックする
- 部屋タイプと広さを調整する
- 最終決定(部屋数・広さ・入居人数・設備数・共用部の広さ)
まずはシェアハウスの「間取り」を作成してみましょう。専門家に依頼する前の間取り案で構いません。
個室やドミトリーだけでなく、キッチンやリビングなどの共用設備の数や広さも考慮してつくります。
次に、立地や相場を考慮して各室のおおまかな「賃料」を算出します。
こうして、シェアハウスの合計賃料(収入)をチェックしてみましょう。
シェアハウス経営が可能かどうかを判断するには、最終的には工事費などの支出も算出して検討していくことになります。。
このコンテンツでは、収益性のもととなる賃料を算出するために、まずは「部屋タイプと部屋数の決め方」について解説しています。
まずは「個室」で間取りを作成してみる(収益性チェック)
検討しているシェアハウスが、あなたの希望の賃料を生み出すかどうかをチェックしてみましょう。
- すべて「個室」で間取りを作成してみる
- 1室を7~8平米で作成してみる
- 賃料相場から収益性をチェックする
既存の広い部屋は2つに区切り、7~8平米(約4.2~5帖)の広さの部屋をできる限り作成してみてください。
どうしても中途半端の広さの部屋ができてしまこともありますが、とりあえず配置してみてください。
この間取り案を作成することで、その物件のシェアハウスとしての収益性が見えてきます。
「入居者が満足できるギリギリの広さの個室が何部屋とれるか」で、ハウスの最大の収益を見ることができます。
(ちなみにシェアハウスでは、部屋数を減らして1部屋の面積を広くしても、全体の合計賃料を上げることは難しくなります。)
次に、「シェアハウスのポータルサイト」で近隣のシェアハウス相場を確認します。
掲載されている類似の部屋の広さと金額を確認して、あなたのシェアハウスの合計賃料(概算)を算出してみましょう。
その金額が、あなたの希望の金額を上回っているかどうかをチェックします。
シェアハウスの間取り例は、インターネット上でも検索することができます。
(参考)シェアハウスの間取り
「部屋タイプ・広さ」の決め方(シェアハウス)
7~8平米の個室の数で収益力をチェックして収益性に大きな問題がなければ、次に個室以外の部屋タイプも検討していきます。
部屋の広さを決めるには、主に2つの方法があります。
- 立地で決める
- その他の条件で決める(コンセプトなど)
分割するのが難しい広めの部屋や独自のコンセプトなどにより、収益力を高める可能性がある部屋タイプ・広さを検討していきましょう。
「立地」で決める
シェアハウスの部屋タイプ・広さを決めるときには、まずは「立地」を重要視します。
- 最寄り駅からの距離
- 人気の路線・地域
徒歩5分以内の立地
- 個室 :7~8平米の広さ(4.2帖~5帖)
- 広めの部屋 : ドミトリー(セミプライベート)も可能になる(2人入居も)
最寄り駅から徒歩5分以内の立地であれば、個室だけでなくドミトリーやセミプライベートの設置でより収益力を高められる可能性があります。
個室は、7~8平米の広さ(4.2帖~5帖)だと部屋数をもっとも多くすることができます。まずは個室の数を最大化して計画してみましょう。
既存の間取りや窓の関係などでどうしても広い部屋になってしまう場合は、ドミトリーやセミプライベートの設置を検討します。
シェアハウスのポータルサイトなどで近隣の相場をチェックし、家賃を最大で設定してみましょう。
立地のメリットを最大限に生かす方向でプランニングしていきます。
8帖以上の広い部屋は、部屋を分割する工事をして1人部屋を2室つくることもできます。
最終的には入居者のターゲットやニーズ、工事費を総合的に考えて決めますが、初期のプラン段階では、立地の良さを生かした間取りを検討してみましょう。
ただし、部屋をコンパクトにすると室内の「収納スペース」があまり取れません。
その場合は、壁面に「棚とハンガーパイプ」を設置する方法もあります。
幅、高さ 1間くらいで(約1.8メートル)施工します。
このとき、施工方法に注意してください。
きちんと壁の下地の木材を「補強」して取り付ける必要があります。
冬のコートなども含めて手持ちの洋服を全てかける入居者もいるので、重さに耐えられる重量を計算してリフォーム工事するようにしましょう。
また、部屋に設置する「ベッドを脚」の高いものにするアイデアもあります。「ベッド下」に収納スペースを確保することができます。
立地で決める(徒歩10分まで)
- すべて個室が基本になる
- 広さは7~10平米(15平米くらいまで)
- 室内の収納は必須
最寄り駅から徒歩10分前後の立地の場合は、「すべての部屋を個室で計画する」ことが基本になります。
ドミトリーやセミプライベートの部屋は、駅からの利便性がないと機能しません。
相部屋は家賃も安く設定しないと募集できず稼働率も悪くなり、入居者の属性にも影響しますので通常は検討しません。
部屋タイプは「個室」で運営することになりますが、「室内の収納力」が入居者満足に大きな影響を与えます。
ワンルームと同等以上の収納力をもったシェアハウスは少数ですので、オープンクローゼットタイプや壁面収納タイプなどが多くなります。
ベッド下収納を用意したり、デッドスペースをうまく収納に活用したり、家具を追加して収納力アップを図ります。
広めの部屋は2人入居OKにすれば、友人同士やカップルで入居したいという層を取り込むことができます。
また、10平米(約6帖)以上の広さの部屋は、「2人入居」の部屋とすることもできます。
一つの個室に2人で住む部屋とし、カップルや友人同士で住みたい人を募集します。
また、シェアハウスでは8畳以上の部屋は広い部類に入るので、家賃を高めに設定することが多くなります。
しかし、家賃の高さがネックとなり募集が難しいケースもあります。
そこで、2人入居を可能にすると入居希望者の間口が広がります。
家賃設定の方法には2つの方法があります。
- 1人部屋にくらべて少し高くする
- 家賃は変えずに「共益費」を増やす(例:共益費を2人分もらう)
例外としては、徒歩5分以上の物件でも「若者に人気の駅」であればドミトリー・セミプライベートも検討が可能になります。
たとえば、山手線の駅や下北沢などであれば可能性があるかもしれません。
その場合は路線や最寄り駅などに応じて、個室以外の可能性も探ってみましょう。
「井の頭線」などの若者に人気の路線、吉祥寺などの人気エリアであれば、ドミトリーの設置でより収益力を高められる可能性があります。(東京都23区の事例)
立地で決める(徒歩10分以上)
最寄り駅から徒歩10分以上かかる立地の場合は、すべての部屋を「個室」で計画する必要があります。
ドミトリーやセミプライベートの部屋を検討することは難しくなります。
ポイントは個室の「収納力」です。
クローゼット、家具、壁面収納、ベッド下収納やデッドスペースをうまく収納に活用して収納力アップを図ります。
収益力を高めると入居者の荷物が自然と増え、駅から遠い物件でも長期の入居につながるという側面もあります。
その他の条件で決める(コンセプトなど)
立地以外で部屋の広さを決める場合は、その他の条件を加味して検討していきます。
とくに、シェアハウスは物件に独自の「コンセプト」を設定して差別化をするケースがあります。
その際は、コンセプトに見合った部屋の広さを確保するようにプランニングしていきます。
たとえば、「ペット可」のコンセプトのシェアハウスにする場合は、ペットと住むために個室の広さをある程度確保しなければならないかもしれません。
最寄り駅から近い物件でも、入居者層やコンセプトによって独自性を持たせる場合は、部屋の広さを慎重に決める必要があります。
共用部とのバランスを考える
個室などの入居者のプライベートスペースがある程度決まったら、次に「共用部」をプランニングしていきます。
個室と共用スペースのバランスを検討する
部屋タイプと広さをプランニングすると「入居者の人数」がほぼ明らかになりますので、次に人数に見合った「共用スペースや設備」を検討していきます。
たとえば、キッチンやLDKの広さ、水回り(トイレ・洗面所・シャワー室など)の設備の数と広さをプランします。
収益力だけで考えれば、共用部をせまくして個室を増やせば利益は高まります。
しかし、生活する入居者の利便性や満足度が低下するため、中長期的には稼働率に影響を及ぼします。
これを実際に示した事例・案件があります。
「かぼちゃの馬車」という物件で問題になったスルガ銀行が関係した事件です。新聞や報道で目にした方も多いと思います。
「かぼちゃの馬車」が失敗したひとつの理由は、物件内に「十分な共用スペースがなかった」ことにあります。
入居者同士が交流するリビングを設置せず、そのぶん個室を増やしていました。
見た目の収益力と利回りを高めて不動産投資家に販売していたのです。
「かぼちゃの馬車」の事件は下記のコンテンツにまとめてありますのでご覧ください。
部屋のタイプ・広さを調整する
共用スペースや水回り設備の面積を検討して、個室などのプライベート部分とのバランスを見てみます。
入居者が生活しにくい内容であれば、個室の数や面積を調整していきます。
たとえば、廊下がせますぎたり、水回り設備の数が少なかったりすると、毎日の生活に支障が出てしまいます。
住みにくいシェアハウスは退去されやすくなり、稼働率が下がったり入れ替わりが激しくなったりして、安定した運営ができなくなります。
シェアハウスのプランニングでは、個室の数(入居者数)と共用部の広さのバランスを調整することがとても重要になります。
シェアハウスの収益性をチェックする(概算)
ここまでプランニングした段階で、想定賃料(概算)を見てみましょう。
希望の金額に近いか上回っていれば、シェアハウスの企画を進めることができます。
逆に、希望の金額に届かない場合はシェアハウスの計画を練り直す必要が出てきます。
今後、工事費などの支出を加味しても希望の利回りを実現できないようであれば、この段階で計画を取りやめる場合もあります。
本格的な設計プランの前に収益性を高めるには、個室の広さ以外の付加価値を提供しないと、賃料を上げることはできません。
たとえば、下記のような付加価値が必要になります。
- 独自コンセプトのシェアハウス(例:ゴルフ好き、ペット可など)
- 共用部の広さや設備・サービス(例:シアタールーム、美容家電など)
- 設計・デザイン・インテリア(例:有名建築家、アンティーク家具など)
立地だけでなくコンセプトなどの条件も加味して収益性をチェックします。
想定内の収益性であれば、このあと本格的な設計を進めていきます。
リフォーム工事には詳細な設備設計も必要になりますので、次の段階へと進みます。
まとめ
シェアハウスの部屋タイプや広さを決めるためには、立地やコンセプトなどの総合的な検討が必要になります。
しかし、シェアハウスの企画が可能かどうかを知るためには、まずは「収益性の概算」をつかむ必要があります。
当コンテンツで解説した方法で収益性をチェックして、シェアハウス企画の参考にしてみてください。
- シェアハウスの「部屋タイプ(種類)」は3つある
- 手順に沿って部屋タイプと広さを検討する
- まずは全てを「個室」で収益性をチェックしてみる
- 部屋のタイプ・広さは立地とその他の条件(コンセプトなど)で決める
- 個室と共有部とのバランスが重要になる
- 収益性(概算)をチェックして計画の進行を判断する
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