シェアハウスの経営や投資に興味がある方もいると思いますが、シェアハウスの実際の需要や将来性についてはなかなかわからないですよね。
単なるブームなのか。本当に入居希望者はいるのか。
このコンテンツでは、「シェアハウスの現状と将来性(可能性)」について解説しています。
とくに東京などの首都圏の市場規模の状況を中心にお伝えします。
結論を言えば、「シェアハウスの需要」はおとろえていません。
シェアハウスに入居したいという若者は減っていません。(コロナ禍でもほとんど変わらず。)
「なぜシェアハウスの需要が依然として高いのか」ということを知ることで、首都圏の賃貸経営の状況や不動産投資のヒントを見つけることができると思います。
10年以上シェアハウスの運営・管理をしている筆者が、これまでの流れとこれからの状況を「プロの目線から」わかりやすく解説します。
当サイトがダイヤモンドオンラインの取材を受けて紹介されました。
- シェアハウスに住みたい若者の需要は高い
- 入居・退去しやすい仕組みが人気の理由
- コロナや投資事件の影響はほとんどない
- 賃貸住宅全体を見てシェアハウス経営を考えてみる
目次(もくじ)
最新ニュース(外国人の入国緩和など)
2022年3月から留学や就業目的での入国制限が大幅に緩和され、外国人の賃貸仲介が活況となっています。
日本での就職や留学が決まっていたものの入国待ちとなっていた外国人が次々に入国。
需要回復は大都市にとどまらず、観光業復活に向け人材獲得を狙う地方でも増加しているようです。
訪日外国人数は、2021年の年間約35万人を22年5月末時点で超え、7月末時点で累計約82万人と、すでに2021年比で2倍超となっています。
また、新型コロナウイルス感染拡大防止のための入国制限が緩和され、6月10日には約2年ぶりに観光目的の入国者受け入れを再開。
外国人向けの賃貸仲介も回復しつつあります。
日本語学校の受け入れ態勢の変化も。
日本語学校は、通常4月と7月のみ入学者を受け入れていました。
しかし、コロナ下で入国待ちをしていた留学生を受け入れるため、随時入学を許可しているそうです。
そのため、来日する留学生数のばらつきがなくなり、契約件数も高水準で推移しています。
これまでは、コロナ禍により観光業や飲食業に従事していた外国人労働者が離職。
現在、回復を見越して観光業や飲食業が採用を強化しています。
地方物件への入居者は観光業などに従事する目的の外国人とのこと。
シェアハウスの需要が高い理由は「手軽に住める」
東京都のように、人口が増えれば住む場所が必要になります。
単身者用のワンルームアパートやマンションも多数ありますが、地方から東京に来る若者の資金に余裕があるとは限りません。
正社員などの安定した仕事が決まっている場合はよいのですが、仕事を探すために東京に来る人もいます。
できるだけ節約して生活したいと考える若者もいます。
また、仕事が決まっていないと住居を借りることができない場合もあります。
そのため、手軽に入居できてすぐに生活を始められる「シェアハウス」という住まい方の需要が大きくなっているのです。
シェアハウスの人気が高いのは、いくつかの理由があります。
- ネットで問合せが簡単にできる
- 物件内に家具・家電がありすぐに生活できる
- 保証人が原則不要(※)
- 仲介手数料が不要(※)
- 敷金・礼金が不要
- 仕事が決まっていなくても入居できる(※)
- 外国人でも入居できる(※)
- 一人ではないので寂しくない
- ストーカー被害などを防止できる
- 退去・引越しも簡単にできる
(※物件や管理会社によって異なります。)
上記のように、シェアハウスはアパートやマンションに比べて「初期費用」をおさえることができます。家具や家電を購入する必要もありません。
また入居・退去が簡単なため、まずはシェアハウスで生活をしてお金をためた後にアパートやマンションに引越しする人もいます。
人口推移のデータでも、とくに東京やその周辺に住みたい人は増え続けています。
外国人も例外ではありません。
オーナーの意向や保証人の有無を気にせず、気軽に入居できるシェアハウスは外国人にも注目されています。
このように通常の賃貸住宅にはない魅力があるため、シェアハウスは地方や海外から東京に来る若者の人気が高いのです。
筆者は、10年以上シェアハウスの運営・管理にたずさわっています。
かぼちゃの馬車の問題が起きたあとも、首都圏での「シェアハウス物件の供給」は増え続けています。
その理由は、「需要が大きいから」に他なりません。
若い人にとってシェアハウスという住まい方は、アパートやマンションと同じように受け入れられつつあります。
以前はドミトリーの部屋(相部屋)も多くありましたが、現在のシェアハウスは「個室」が主流になっています。
シェアハウスと一般の賃貸住宅との違いについての詳細は、下記のコンテンツで詳しく解説しています。
シェアハウスの需要(人気)を調べてみよう
シェアハウスが若者に人気があるのかどうか、その需要を調べることができます。
まずは、インターネットで見てみましょう。
いちばん簡単なのは、「シェアハウスのポータルサイト」を見てみることです。
ポータルサイトには、ひつじ不動産、シェアシェア、東京シェアハウス、ゲストハウスバンクなどがあります。
調べてみたい地域や気になるシェアハウス物件などのページを見てみましょう。その地域にある物件数をチェックすることもできます。
物件ページでは、部屋数、空室、家賃、物件の特徴などを見ることができます。
また、ポータルサイト以外に「シェアハウス管理会社のサイト」もありますので、そちらもチェックするとより具体的な情報がわかります。
過去にシェアハウスの需要が下がった事例
シェアハウスの需要が下がった時期もあります。
東日本大震災のときには、首都圏のシェアハウスも一時的に需要が低迷した時期はありました。
とくに外国人が帰国してしまうケースが多く、外国人が入居していたシェアハウスには影響が大きくありました。
これはアパートやマンションにもあったことなのですが、シェアハウスは退去しやすいという特徴があったため少し影響が大きく出てしまったのだと思います。
しかし、震災や津波の状況がわかって落ち着くと、すぐに需要は戻りました。
東京の生活や経済が回復したのと同様に、住まいとしてのシェアハウスの入居率も以前の水準に回復したのです。
また、不動産投資物件の「かぼちゃの馬車」の問題は、シェアハウスの需要にほとんど影響していません。
「かぼちゃの馬車」の事件のあとも、シェアハウスの人気に大きな変化はありません。
事件があってから、シェアハウスの退去者が続出したり、管理会社が次々と破綻したり、大量の物件が閉鎖したりするような状況は起きていないのです。
このことを見ても、「シェアハウスという業態」は依然として若者から支持されているといえます。
問題はあくまでも「かぼちゃの馬車」を運営していた会社(スマートデイズ)にあったのであって、シェアハウスそのものにはなんの責任もないのです。
実は、「かぼちゃの馬車」はシェアハウスとはいえない物件でした。
詳細は、下記のコンテンツで解説しています。
シェアハウスの本当の需要や人気は自分で調べないとわからない
「かぼちゃの馬車」やスルガ銀行の事件などで、不動産投資のマイナス面を目にする機会が増えました。
もちろん、シェアハウスも含め不動産投資にはリスクもあるので、情報収集は重要です。
しかし、成功事例はあまりマスコミでは取り上げられることがありません。
シェアハウスは、東京に少なくとも5,000件・50,000室があると言われています。(推定)
運営されているシェアハウスの情報は、新聞や雑誌ではほとんど報道されません。
注目を集める物件や事件などが一時的に取り上げられるだけです。
安定して運営されているシェアハウスの状況などは、自分で調べたり情報を積極的に取りにいったりしないとわからないのです。
シェアハウスは、賃貸住宅全体から見ればまだまだマイナーな市場ですが、市場規模だけでなく「需要の強さ」に注目してみることが重要です。
たとえば、「狭小アパート」について考えてみましょう。
1部屋が20平米前後のワンルームアパートや3点ユニット(バス・トイレ・洗面)の物件は数多くあります。
アパートの市場はシェアハウスよりもはるかに大きいのは間違いないでしょう。
しかし、競争が激化して家賃の値下げが激しく、需要が下がっていることも事実です。
また、賃貸用住宅の空き家は、東京都で約60万戸あると言われています。
東京都の空き家の現状(東京都住宅政策本部)
http://www.juutakuseisaku.metro.tokyo.jp/juutaku_seisaku/akiyashisaku.html
あなたがシェアハウス経営・投資を検討しているのであれば、このような状況も加味して今後の賃貸住宅の市場や需要を考える必要があります。
若者の動向や賃貸住宅の変化をとらえれば、「気軽で楽しい共同生活」を可能にするシェアハウスに需要の大きさと将来性を感じることができるでしょう。
(参考)
シェアハウスの市場規模と立地特性(三井住友トラスト基礎研究所)
https://www.smtri.jp/report_column/report/pdf/20180219_report.pdf
シェアハウスの立地や活用の調査については、下記のコンテンツで詳しく解説しています。
シェアハウスの規制緩和が追い風になる
2019年6月に建築基準法が改正(施行)されました。
規制の一部が緩和され、既存の住宅などをシェアハウスに転用しやすくなりました。
シェアハウス運営を展開したいオーナーや不動産投資家にとっては、追い風になるといえるでしょう。
ただし、自治体の中にはシェアハウスの規制を強化するところもあるので、シェアハウス運営を検討する際には立地や制度を事前によく調査しましょう。
【 関連コンテンツ 】
サブリース新法でより安全な賃貸経営へ
シェアハウス運営ではいわゆる「サブリース方式」を採用するケースが多くあります。
サブリース新法の施行によりサブリース業者に対する規制も強化され、オーナー側のリスク判断のポイントも明確化されました。
シェアハウスも含めて以前よりも安心して賃貸経営ができる環境が整ってきています。
【関連コンテンツ】
サブリース新法の規制について解説します(国土交通省ガイドライン)
シェアハウスの将来性を示す「データ集」
若者が地方から都市に流入する(特に東京)
今後、東京の人口はますます増えると言われています。
地方から流入する若者も増えるでしょう。
2020年5月1日現在、東京都の人口は、1,400万人を突破しました。
新型コロナウイルスの感染拡大などがありましたが、
(参考)「東京都の人口(推計)」の概要(東京都のホームページより)
最近では、1年ごとに約10万人ずつ増加しています。(2016~2018年)
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2018/11/28/06.html
また総務省の報告では、2021年は東京圏(東京・埼玉・神奈川・千葉)で約8万人の転入超過により人口が増加。
都道府県別のグラフを見ると、突出ぶりがよくわかります。
とくに若者の増加が多く、15~29歳で全体の90%以上を占めています。
住民基本台帳人口移動報告(総務省) 2021年(令和3年)結果の概要
この結果を見ても明らかなように、シェアハウスを利用する年代でもある「就職世代」の東京流入は止まりません。
新卒者は就職の条件がいい東京に上京してきています。(日本経済新聞)
また、就職情報サイトの「マイナビ」の会員調査によると、2020年卒業予定の大学生らの地元就職希望率は49.8%。
初めて50%を割ったという結果がでています。
(参考)マイナビの調査結果(PDF)
人口の推移を示す興味深い動画がありましたのでご紹介します。
日本の都市の人口推移 (1873-2015)
外国人が増えて賃貸住宅の需要が高まる
総務省が発表した人口動向調査(2020年1月1日時点)では、首都圏の外国人の増加率が日本人を上回っています。(日本経済新聞)
増加率も前年比6.23%と高水準を維持しており、国内に暮らす外国人のうち首都圏に占める割合が40%を上回る状態が続いています。
また、2019年4月に改正出入国管理法が施行されました。
5年間で最大34万人の外国人労働者が受け入れられます。
これにより、賃貸住宅の業界においても外国人の入居対応や外国人向けビジネスの重要性が高まっていく状況にあります。
シェアハウスのように家具や家電があらかじめ揃っていて、「すぐに生活できる賃貸住宅」が注目される可能性が高くなるのです。
入管法及び法務省設置法改正について(出入国在留管理庁)
http://www.immi-moj.go.jp/hourei/image/flow_h30.pdf
【関連コンテンツ】
新型コロナウイルス禍による入国制限が段階的に緩和され、外国人の入国が進み始めています。
1日あたりの入国者数の上限は、3月1日に5000人、同月14日には7000人に緩和。
その一方で、文部科学省の調査では、3月11日時点で留学生だけでも11万人ほどが入国待ちの状態とのこと。
3月の入居に関する問い合わせ数が2021年同月比で1.6倍に増加したというシェアハウス業者もおり、外国人向けの賃貸住宅市場も活気づいています。
シェアハウス市場調査
一般社団法人日本シェアハウス連盟(東京都渋谷区)が『
2020年の調査では、ウェブ上に存在するシェアハウスの棟を集計したところ、1年前の調査と比べて、棟数が5%弱増えたことがわかりました。
この調査によれば、シェアハウスは全国に5,104棟。(このうち約7割が東京都内)
ただ新型コロナウイルスの影響で、2021年の調査では物件数の減少が見られ、調査を開始した2013年以来はじめて減少へ転じた結果に。
人の移動の制限や諸外国からの入国制限により、外国人を入居者ターゲットとしていたシェアハウスの運営にも影響を及ぼしたと分析されています。
まとめ(シェアハウスの需要・将来性)
シェアハウスの運営をしていると、「若者や外国人の需要の高さ」に驚きます。
スマートフォンでいつでもどこでも気軽にシェアハウスの情報が手に入りますし、問合せも簡単にできます。
不動産会社に行く必要もなく仲介手数料もいらないので、入居希望者は初期費用をおさえて部屋探しをすることが可能になります。
このようにユーザーの需要に合った「シェアハウス」という住まい方は、今後の将来性も高いといえるでしょう。
- シェアハウスに住みたい若者の需要は高い
- 入居・退去しやすい仕組みが人気で受け入れられている
- スルガ銀行の事件の影響はほとんどない
- 賃貸住宅全体の状況を見てシェアハウス経営を考える
- 建築基準法の改正でシェアハウス開発には追い風になる
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