「シェアハウス」の運営は儲かるのでしょうか。
スルガ銀行の事件(かぼちゃの馬車)やサブリース問題などで失敗やリスクが気になる人もいるでしょう。
このコンテンツでは、他の賃貸住宅にはない利点・魅力として「シェアハウスの3つのメリット」を解説します。
スルガ銀行の事件のあとも、入居者に支持されているシェアハウスは安定的に稼働しています。
健全に運営されているシェアハウスがマスコミに報道される機会が少ないので、あまり情報がなく実態を知ることができないだけなのです。
シェアハウスはきちんと経営すれば、しっかりと利益が出ます。
20棟・300室のシェアハウスの管理会社で10年以上の経験がある筆者が、シェアハウス運営・経営の「優位性や魅力」について、事例を交えて詳しく解説します。
目次(もくじ)
シェアハウス経営 3つのメリット
3つのメリット(シェアハウス経営)
- 建築のメリット
- 賃貸(入居者)のメリット
- 差別化できるメリット
シェアハウス経営(投資)には3つのメリットがあります。
アパート・マンション経営と比較しつつ順番にご紹介します。
シェアハウス経営 ①建築のメリット
- 既存の建物があればシェアハウスに転用できる
- 設備の数をおさえて工事費を安くできる
- 木造や築年数の古さは問題にならない
- 運営年数が経過しても部屋ごとの大幅リフォームは不要
- 初期投資をおさえて高い収益性を確保できる
1. 既存の建物があればシェアハウスに転用できる
シェアハウスは、戸建て、寮・社宅、マンションの一室などの既存の建物をリフォームして運営することができます。
そのため、建物を所有している人にとっては建築費用をおさえることができ、「初期投資費用」を少なくすることができます。
また、土地を所有している人であれば新築のシェアハウスの経営も可能です。
しかし、土地・建物を購入してのシェアハウス経営は慎重な判断が重要です。リフォーム工事の費用や家具・家電の費用がかかるので、総合的な収支をシミュレーションする必要があります。
また、新築シェアハウスの「購入」も慎重に判断しましょう。スルガ銀行で問題になった「かぼちゃの馬車」の事例もあります。
投資物件としてのシェアハウスの価格には、不動産業者や建築業者の利益が含まれています。
購入時の仲介手数料なども考慮して「総合的に判断する」必要があります。
2. 設備の数をおさえて工事費を安くできる
シェアハウスは、トイレ、シャワー室、洗面所などの水回りを「共用部」として集約できます。
1室ごとにそれぞれ水回り設備が必要なアパート・マンションに比べて、工事費用を大幅におさえることができます。
たとえば、10室のシェアハウスであれば、トイレ・シャワー室・洗面所は2台ずつ、キッチン・リビングは1つで済みます。
また、退去後のクリーニング費用がほとんどかかりません。
個室内には水回り設備がないため、簡単な清掃ですぐに次の入居者募集ができます。
3. 木造や築年数の古さは問題にならない
シェアハウスは、ワンルームや戸建てなどの一般的な賃貸物件で決め手となるような「建物の構造」や「築年数」というデータに左右されません。
シェアハウスの入居者を募集するポータルサイトでは、建物の構造や築年数で分類されることはあまりありません。
そのため、木造や築年数の古い建物でもリフォーム工事により、シェアハウスとして人気の物件にすることが可能になります。
ただし、工事前に建物の「耐震診断」を実施し、適切な「耐震補強工事」を行いましょう。
「耐震基準適合証明書」を取得すればオーナーも入居者も安心です。金融機関の融資を受ける際も有利になります。
リフォームする際は、若い人が好む内装や住みやすいデザインが重要になります。
家具・家電を含めたインテリアがポイントになります。
4. 運営年数が経過しても部屋ごとの大幅リフォームは不要
一般のアパートやマンションでは、運営して数年が経過すると部屋ごとにリフォーム工事が必要になります。
賃料を維持したい場合や空室期間が長くなっている場合は、対策として各部屋の「キッチンを交換する」「洗面化粧台を交換する」「浴室を交換する」といった高額な設備投資をする必要が出てきます。
しかし、シェアハウスはその必要がありません。
入居者が使用する共用の設備は集約されており、個室内に水回り設備はありません。
そのため退去した後も簡単な清掃で済み、すぐに次の入居者を募集・案内することができます。
個室の魅力を高めたい場合には、内装や備品を交換したり、ちょっとした工夫で付加価値をつけたりすることができます。
5. 建築費をおさえて高い収益性を確保できる
シェアハウスの最大のメリットは「高い収益性」にあります。とくに、既存の建物を転用したシェアハウスは収益がより大きくなります。
たとえば、5LDKの物件をファミリーに貸した場合を見てみましょう。
首都圏の立地だとすると、そのままでは家賃は15万円くらいです。(月額)
それをシェアハウスとしてリフォームし、5室を5万円で貸せば25万円の収入になります。(月額)
高稼働率を維持し高収益の物件にすることができれば、「売却時」に有利になる可能性もあります。
高利回り物件が少ない不動産投資市場において注目され、「出口戦略」も有利になります。
シェアハウス経営 ②入居者のメリットも大きい
シェアハウスは入居者にとってもいくつかのメリットがあります。
そのため賃貸住宅としての満足度が向上し、結果として安定的な収益につながってオーナーや管理会社のメリットとなるのです。
- シェアハウスは退去が簡単
- 不動産会社の仲介が必要ない
- 部屋の原状回復費用がかからない
シェアハウスは退去が簡単
シェアハウスは入居も退去も簡単にできるのが特徴です。個室もそれほど広くないですし、荷物も多くはありません。
家電や家具もほとんどないのですぐに引越しができるのです。
これは、オーナーにとってもメリットなのです。
退去の申請があったらWEBサイト上ですぐに募集を開始します。
退去が済んだら部屋をチェックし、簡単な清掃をしてすぐに次の入居者を案内できます。
これは通常のアパートやマンションでは考えられないことです。
このことにより、空室の期間(リスク)を最小限におさえることが可能になります。
不動産会社の仲介が必要ない
シェアハウスはインターネットで入居者を募集し、管理会社(オーナー)が直接契約することが多くなります。
そのため、アパート・マンションのように不動産会社による仲介(媒介)がなく、入居者は「仲介手数料」が不要になります。
物件内に家具や家電もそろっていますので、入居時の「初期費用」を大幅に少なくすることができます。
入居や退去の手続きが簡単で気軽に引越しできます。これがシェアハウスが若者に人気の秘密なのです。
シェアハウス経営 ③差別化のメリット
- 間取り・内装で個性を出せる
- 交流・コミュニティが魅力
- コンセプト・テーマも設定できる
1. 間取り・内装で個性を出せる
シェアハウスは、同じ間取りやデザインの部屋はほとんどありません。部屋数が多くなるので、部屋ごとに個性を出すこともできます。
たとえば、全ての部屋を異なる壁紙にして部屋選びの楽しさを演出することもできます。
また、ハウス内に設置する家具にこだわり、独特の世界観を構築することもできます。
周辺に同じような条件の物件が多いワンルーム賃貸に比べて、「差別化」がはかれるのです。
差別化に成功したシェアハウスは、空室になっても次の入居者が決まりやすく、安定した運営につながります。
2. 交流・コミュニティが魅力
シェアハウスは「コミュニティ」が人気の秘密です。
毎日の生活の中で様々な人と出会い、コミュニケーションが生まれます。帰宅をすれば誰かが「おかえり」と言ってくれる安心感が、日々のストレスや孤独感を癒してくれます。
たとえば、食事をしながらの他愛のない会話やなんとなく始まる飲み会などを楽しむことができるのです。
同居人というだけで利害関係はなく、だからこそ色々と話せるのかもしれません。
一方、一緒に住んでいる仲間でありながら、それぞれの個室によりプライバシーは守られています。一人になりたければ個室で静かに過ごせばいいのです。
防犯面でも安心です。シェアハウスには誰かしら在宅していることが多く、人の気配があるため空き巣対策に有効なのです。
災害時も含めて協力して助け合える仲間がそばにいることは、入居者にとって心強いようです。
たとえば、シェアハウスでは女性のストーカー被害がほとんどなく、女性が安心して生活できることも魅力のひとつになっています。
3. コンセプト・テーマも設定できる
シェアハウスは、物件に「コンセプトやテーマ」を設定して運営することもできます。
たとえば、外国人と英会話ができるハウスや、アウトドア好きが集まるハウスなど様々なコンセプトのシェアハウスが実際に運営されています。
中にはシングルマザー専用のシェアハウスというものもあります。
コンセプトにより求められる設備や家電が異なりますので、リフォーム工事前にしっかりと計画をたてる必要があります。
内装デザインを工夫するだけでも、入居者の層を変化させたりタイプを絞ったりすることもできます。
たとえば、ナチュラルなテイストにすれば、落ち着いた女性が集まるかもしれません。スタイリッシュな内装デザインにすれば、都会的な若い人が集まるかもしれません。
企画・設計の段階で内装インテリアのテイストやスタイルを作り上げたり、デザインにこだわったりすることにより、シェアハウス物件の「差別化」が可能になるのです。
首都圏のシェアハウスは市場規模が大きい
シェアハウスは、これからの市場規模も魅力の1つです。とくに首都圏は人口が増え続けています。
東京都の転入超過は、15~29歳の最も割合が多くなっています。
つまり、全国の若者がどんどん東京都に移り住んでいるのです。
また、平成の30年間で東京都だけで107万人、埼玉県・千葉県・神奈川県を含めると469万人の転入超過です。
また、東京には少なくとも3000件・30000室のシェアハウスがあります。
把握されていない物件も含めると、5000件・50000室以上のシェアハウスがあるとみてもよいでしょう。
(参考)シェアハウスの市場規模と立地特性
https://www.smtri.jp/report_column/report/pdf/20180219_report.pdf
スルガ銀行の「かぼちゃの馬車」の問題でシェアハウスが話題となりましたが、他のシェアハウスの経営に大きな影響はありません。
いまも多くの若者がシェアハウスで生活をしています。
アパート経営とシェアハウス経営の比較
- 空室のリスクを低減できる
- 退去後の清掃が簡単
- 居座り・訴訟はほとんどない
1. 空室のリスクを低減できる
既存の物件をシェアハウスにリフォームした事例では、「空室のリスク」を減らすことができます。
たとえば、ファミリー物件では退去したら次の入居者が決まるまで家賃は入りません。
リフォーム期間を入れると入居までに数ヶ月かかることもあります。
しかし、5室のシェアハウスであれば、仮に2室が空いても3室の家賃が入ってきます。
2. 退去後の清掃がかんたん
退去後の部屋の掃除も簡単なので、いわゆる「原状回復工事」がほとんど必要ありません。
壁紙や床が傷ついたり汚れたりしていれば補修が必要ですが、通常は室内とエアコンの清掃で済んでしまいます。
シェアハウスは個室内に「水回り設備」がないので、退去後の本格的なクリーニングをする必要がないのです。
オーナーにとっては、アパート・マンションに比べて原状回復工事の費用をおさえることができ、物件のランニングコストを低減させることができます。
そのため、すぐに次の入居者を募集することができるのもメリットです。
3. 居座り・訴訟はほとんどない
入居者の荷物が少なく退去も簡単なため、部屋の居座りや明け渡し訴訟などもほとんど起きません。そういったトラブルがないのもシェアハウスのメリットといえます。
シェアハウスは入居時に保証人や保証会社がいらないケースも多くあります。これはアパート経営と比較するとリスクだと思うかもしれません。
しかし、シェアハウスは入居者と「定期借家契約」をむすんでいます。これは、期限がきたら賃貸借契約が満了することを明確に定めた契約です。
そのため、仮にトラブルがあっても入居者は契約が満了したら退去しなければなりません。
実際には、大きなトラブルがあると入居者は契約期間の満了を待たずに退去するケースが多くあります。
一般のアパートやマンションの契約では、入居者を簡単に退去させることはできません。
訴訟を提起し、判決(または和解)を獲得し、実際に明け渡しをしてもらわなければなりません。
その後に室内をリフォームして、はじめて次の入居者を募集することができます。ここまでに少なくとも数か月はかかってしまうでしょう。
保証人や保証会社との契約があったとしても、家賃や明け渡し費用が回収できるかどうかはわかりません。
シェアハウスでは前述のとおり退去や清掃が簡単なため、すぐに次の入居者を募集して案内することができます。
つまり、家賃の滞納やトラブルによる部屋の明け渡しに関しては、シェアハウスのほうが短期間で解決できます。
その分オーナーの損失も小さくなり、迷惑な入居者を短期間で排除することができるのです。
たとえば、外国人の入居者については、アパート経営で起こるデメリットを回避することも可能になります。
家賃債務保証会社の調査によると、一般の賃貸住宅に住む在留外国人による「無断退去」の発生率は、日本人入居者の「4倍」と
言葉の壁や生活習慣の違いなどが入居中のトラブルにつながってしまいます。
無断退去されると室内の「残置物撤去」に費用や手間がかかることになり、オーナーにとっては大きな損失となります。
シェアハウスとアパートのどちらの管理も経験した筆者からすると、この差は大きいと感じています。
「かぼちゃの馬車」の問題(スルガ銀行)について
スルガ銀行の問題により、シェアハウス経営に疑問をいだいている人もいるかもしれません。
不動産投資物件として販売されていた物件は「かぼちゃの馬車」という名前で運営されていました。
実は、「かぼちゃの馬車」の物件はシェアハウスとはいえない造りの建物だったのです。
入居者が交流するリビングがなく、投資家に売るために個室ばかりをならべて利回りを高く見せていた建物だったのです。
とても「シェアハウス」といえるような物件ではありませんでした。
また、サブリース契約や管理運営もオーナーに販売することを目的とした内容でした。
今回の事件をシェアハウス運営のプロの視点から冷静に考察してみると、シェアハウス業界に問題があったとは思えません。
「シェアハウス」という業態に問題があるのではなく、シェアハウスを語り「かぼちゃの馬車」を経営していたスマートデイズという会社に大きな問題があったのです。
いまも多くの若者が全国にあるシェアハウスで生活をしています。
「かぼちゃの馬車」の事件があっても、シェアハウスに住みたい若者の需要は衰えていません。
健全な運営をしているシェアハウスは入居率も高く、しっかりと利益を出しています。
まとめ(シェアハウス経営のメリット)
シェアハウスにはアパートやマンションと「差別化」できるメリットがあります。
建物を活用したり、賃貸経営のリスクを回避したりしたいオーナーや管理会社にとって、シェアハウス経営は魅力的な選択肢のひとつと言えるでしょう。
- シェアハウスはきちんと経営すればメリットが大きい
- 差別化できるポイントも多い
- 正しい方法で運営すれば高収益も可能になる
- 「かぼちゃの馬車」と比較してはいけない
Ⓒシェアハウス経営の教科書
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