
シェアハウスではアパートやマンションと同様、入居者の家賃滞納が起こることがあります。
当然ながら、オーナーや管理会社としては回避したい事態ですよね。
このコンテンツでは、シェアハウスの家賃滞納の対応方法について詳しく解説しています。
家賃滞納を起こさせないような「予防の方法」についてもお伝えします。
手順にしたがってポイントをおさえて対応すれば、それほど大きな問題に発展することはありません。
東京でシェアハウスの管理・運営の経験が10年以上ある筆者が、プロの視点から事例を交えてわかりやすくお伝えします。
目次(もくじ)
シェアハウスの家賃 滞納者への対応の流れ
シェアハウスの家賃は、共益費を含めると世間の人が思っているほど安くはありません。
同じエリアにあるワンルームアパートと同程度であり、付加価値の高い物件になると、むしろそれよりも高めに設定してあることもあります。
「シェアハウスは、収入の少ない人の住居」と考えがちですが、意外とそんなことはないのです。
そのため、仕事やアルバイトなどしっかりとした収入がなければ、家賃と共益費が払えない入居者が出てきます。
また、シェアハウスは保証人や保証会社を設定していないことも多いので、本人に請求することになります。
家賃の滞納が発生した際の対応手順は以下のようになります。
- 支払い期日が過ぎた入居者をピックアップする
- すぐに連絡を取る
- 連絡が取れない入居者にはあらゆる手段を活用して接触する
- 連絡を取り、支払い期日を決める
- 支払えない入居者には解約を検討する
シェアハウスの家賃滞納 対応方法(メール事例あり)
家賃滞納者への対応をもう少し詳しく見ていきましょう。
支払い期日 翌日の対応(事例あり)
- 家賃滞納者をリスト化する
- 全員に連絡をする
- その後の返信や入金状況を見守る
家賃支払日の翌日には、未払いの入居者をすべてピックアップしてリスト化します。
そしてリストのすべての入居者に入金を促すメールなどで連絡を取ります。
このリストの中には、入金をうっかり忘れていたり、時間がなくて入金できなかったりした入居者が含まれています。
【入居者へ送信するメールの事例】
物件名○○ 〇号室 〇〇様
いつも〇〇をご利用頂き誠にありがとうございます。
〇月分賃料が現在未入金となっております。
(〇月〇日 支払期日分)恐れ入りますが、
〇月〇日 〇曜日の14時 までにお振込みください。
※尚、本メールと行き違いで既に入金済みの場合は何卒ご容赦くださいませ。
お忙しいところ恐れ入りますがご確認よろしくお願い致します。
〇〇銀行 〇〇支店 口座番号 〇〇〇〇〇〇
普通 〇〇株式会社
〇〇〇〇(カ
支払い期日 1週間後の対応
支払い期日の翌日にメール等で連絡をすると、うっかり忘れていた人などからの入金があります。これはほとんど問題がありません。
そして、その後の対応には2つのパターンがあります。
- メールの返信があり、入金についての相談がある
- メールの返信も入金もない
メールの返信には、「○日までには入金します」とか「○日まで待ってもらえないでしょうか」という内容のものがあります。
今回たまたま事情があって入金できなかった入居者から、その理由なども届きます。
これまでの入金(過去の家賃)の履歴やメールの内容などを考慮して、支払い期日を決めましょう。
可能な限り早い日時での約束をすることが原則です。
一方、「メールの返信も入金もない入居者」への対応は非常に重要になります。
連帯保証人や保証会社をとっていない場合は、家賃の回収ができなくなる恐れがあるからです。
この場合は、さらに突っ込んだ対応が必要になります。
- 重要度を強調したメールを送信する(必ず返信を促す)
- 携帯電話に連絡する(留守電も残して折り返しの電話を促す)
入居者に連絡をする際には、「連絡が取れない場合は、安否確認のため室内の点検を行う」ことを伝えましょう。
驚いて連絡してくる入居者もいるので、その際は「翌日」に必ず入金するように促します。
(入居者から事情や相談があれば対応します。)
支払い期日 2週間後の対応(解約合意書サンプルあり)
ここまでの対応で入金があれば、それほど問題はありません。
また、連絡が取れて支払い期日を決めた入居者はその約束の履行を注視しましょう。
問題なのは、支払い期日から2週間経過しても「入金がなく連絡も取れない」入居者です。
この段階では、早急に入居者と連絡して協議をすることが重要になります。
そのため、さらに突っ込んだ対応が必要です。
- メール・電話・ショートメッセージ(SMS)で引き続き連絡する
- その連絡の中に「安否確認のため室内を点検する日時」を明記する
- 手紙を部屋に届ける(ドアにテープなどで張り付ける)
メールを読まなかったり電話に出なかったりする入居者に対応するため、ハウスの部屋に手紙を届けます。
手紙には、「返信がない場合は緊急連絡先に連絡する」ことと「室内を点検する日時」を記載します。
確実に届くように部屋のドアに張り付けるなどして対応します。
このとき、手紙は必ず封をして他の入居者に中身がわからないように配慮しましょう。
早急に入居者に接触して協議をおこないます。ここでは支払い能力を見極めることが重要になります。
その理由は、この段階ではすでに半月が経過し、次の家賃の支払いが半月後に迫っているからです。
わかりやすく事例をもとに見てみましょう。
【月末が支払日の例】
家賃の支払い期日が月末の場合、翌月の15日になると、あと半月で次の家賃の支払い日が来てしまいます。
早急に入居者と連絡を取り、下記の確認を行います。
- 緊急連絡先も含めて連絡し、本人との連絡を取れるようにする
- メールで返信があっても、必ず電話か面談で直接話すようにする
- すぐに家賃を支払うように促す(金額・日時を決める)
- やり取りの内容は、メールの送受信で証拠を残す(こちらからの送信だけではダメ)
- それが難しい場合、月末に2か月分を支払えるのか確認する
- 「念書」を発行して署名・捺印してもらう(支払日・金額を明記)
- 全額をすぐに払えない人は、一部の金額でも入金してもらう(必ず領収書を発行する)
- 支払えない時は協議のうえ月末にて解約する(退去)ことも盛り込む
契約書類の事前チェック
実際に滞納している入居者と接触する際には、事前に準備をしてから行います。
契約書や関連書類をチェックしておきましょう。
- 氏名・年齢・生年月日
- 顔写真
- 契約期間(入居日も確認)
- これまでの支払い履歴
- 手紙をプリントアウトして携帯する(不在時に置いてくる)
- 念書をプリントアウトして携帯する(会えた時に書いてもらう)
入居時の物件案内や契約などで、あなたが面識のある入居者であれば再確認をしておきます。
しかし、面識がない入居者の場合はしっかりと確認しておきましょう。
そうしないと、シェアハウスの部屋を訪問したり、リビングなどの
室内確認(安否確認)
まったく連絡がとれない入居者は、本人の安否確認のため室内をチェックします。(マスターキーを持参)
本人が不在の際は、見えるところに手紙を置いておきます。
もし本人が在室していた場合は、支払い期限を決めて念書に署名・捺印をもらいます。
支払い能力の判断
基本的には、シェアハウスの家賃が2か月分を支払えない人に対しては、「それ以上支払えない」と判断することになります。
とくに連帯保証人や保証会社による担保がない場合は、リスク管理上やむを得ない判断です。
入居者には解約を提案(合意解約)して退去を促します。
「解約合意書」を作成して署名・捺印をもらいます。
もちろん、退去に至るまでの間や退去後も債務(滞納家賃)の請求はおこなっていきます。
この際は、実家や勤務先の情報があるとよりスムーズに請求が可能になるでしょう。
このような事態があってもスムーズに対応ができるように、あらかじめ契約書やハウスルールに明記しておくとよいでしょう。
シェアハウスの家賃滞納 管理体制による違いについて
上記で見てきた家賃滞納の対応については、シェアハウスの「管理体制」によっても異なります。
オーナーの自主管理であれば、すべてをオーナー自らがおこなう必要があります。
管理会社に委託している場合は管理会社が対応します。
しかし、家賃滞納の情報をどこまでオーナーに報告するかは管理会社によってさまざまです。
管理会社の対応が悪いと家賃の回収ができなかったり解約や退去が遅れたりして、オーナーの収入に大きな影響がおよびます。
管理会社に委託する場合でも、オーナーは家賃滞納の対応について事前に確認しておくことが重要です。
シェアハウスの家賃滞納 予防の方法について(事例あり)
シェアハウスは管理運営者と入居者との距離が近いことが特徴でもあります。そのため家賃の滞納が少なくなるというメリットがあります。
オーナーや管理会社の担当者とは、普段からメールやSNSでつながっていて、ときにはパーティに招くこともある人物です。
そうした身近な人に対して、家賃を滞納し、後ろめたさを感じたくないというのが人間の心理といえるのです。
ただし、家賃滞納が起きないように「予防」をすることも非常に重要です。
とても簡単にできるものとして「支払い期日の直前に全員に一斉メールをする」ことがあります。
支払い期日をうっかり忘れてしまう入居者もいるため、前日にメールで入金を促すことで入金率を上げることができます。
また、支払い期日に入金が難しい入居者からは連絡が入りやすくなります。
入金状況の把握のためにも「事前メール」を毎月の「ルーティン作業」として家賃滞納の予防をおこないましょう。
※このメールアドレスは送信専用です。
お問合せは、〇〇〇@〇〇〇.com までお願いいたします。
ご入居の皆様
家賃のお支払い期日(〇〇日)が近づいてまいりましたのでお知らせいたします。
※本メールは全体配信です。既にお支払い済みの方はご容赦ください。
【銀行振込】
〇〇日が金融機関休業日にあたる場合は、前営業日までにお振込みください。
【現金支払】
来社希望の〇〇営業日前までにお支払いの予約をお取りください。
予約のない場合、ご来社いただいても支払い手続きは行えません。
現在のお支払い方法の変更を希望される場合は早めのご連絡をお願いいたします。
お忙しい中恐れ入りますが、ご確認よろしくお願い申し上げます。
株式会社〇〇
シェアハウスの家賃滞納 注意点について
シェアハウスの家賃滞納の対応では、いくつかのポイントがあります。
注意点も含めて見ていきましょう。
入居者との契約時に「緊急連絡先」として実家や勤務先などを把握していないシェアハウスの管理会社には注意が必要です。
緊急連絡先がない場合は「本人」に連絡をとって請求するしかなくなってしまいます。
そのため、室内への立ち入り、荷物の撤去、部屋の鍵交換などの手段で対応する可能性があります。
このような強引な手段は、法律的に問題となる恐れがあります。
オーナーが管理会社とサブリース契約(※)を結んでいる場合は、基本的にはオーナーが責任を取る必要はありません。
(※ここでいうサブリース契約とは、「入居者に転貸することを認めている契約」を指しています。)
しかし、管理会社が法を逸脱したり評判が悪くなったりすることで、物件の価値や既存の入居者の心理に影響を与え、シェアハウスの運営や入居者募集に支障をきたすことになりかねません。
家賃滞納への対応は、このコンテンツ内で示したようにきちんとした流れと方法によっておこなうことが重要になります。
(参考)
賃貸不動産管理をめぐるトラブル等の現状(国土交通省)
http://www.mlit.go.jp/common/000044505.pdf
筆者の体験談(滞納の事例)
実際にシェアハウスの管理をしているときに筆者が体験した事例を紹介します。
家賃の入金がない入居者に対して、これまで見てきた手順に沿って対応をしました。
しかし、2週間近く経過しても本人と連絡が取れません。
実家の家族に連絡して伝言をお願いしても、本人から連絡はなし。
そこで、シェアハウスの部屋を訪問し、ドアをノックしましたが反応がありません。
もしかしたら病気などで室内で倒れていて連絡がとれない可能性もあります。
そのため、翌日に安否確認のため室内をチェックすることにしました。
ドアをノックしましたが反応がありませんので、管理会社が保管しているマスターキーで鍵を開錠し、室内を確認することにしました。
すると・・・
本人が室内にいました。(笑)
すぐに家賃の支払いができないため、管理会社からの連絡から逃げ回っていたようです。
今後の支払い予定を確認し、支払い期限やだめなときの解約にも触れて、その場で「念書」に署名・捺印をもらいました。
本人に会うことができて安否が確認でき、支払いの約束もできたのでほっとしたのを覚えています。
シェアハウスの家賃滞納 Q&A
支払い期日が過ぎてからすぐに連絡をすれば、ほとんどの入居者から入金があります。
これまでの信頼関係や人物を考慮し、将来の支払い能力に問題がないようであれば、支払い期限はお互いが可能な範囲で協議して決定してもよいでしょう。
しかし、そうでない場合は本人にしか請求はできません。
家族や勤務先などへ依頼しても支払うかどうかは任意となります。
合意解約による退去または契約期間満了による退去をすすめましょう。
しかし、滞納や不良入居者がいてもオーナーにはわかりません。
家賃保証されていてもオーナーは管理や入居の状態をできる限り把握することが重要です。
まとめ(シェアハウスの家賃滞納)
シェアハウスの家賃滞納の対応について、もっとも問題となる場合の手順とポイントをまとめました。
- 支払い期日の翌日 メールを送信する
- 支払い期日の1週間後 メール・電話をする
- 支払い期日の2週間後 安否確認のため室内チェックをおこなう
- その後は本人と接触して協議する
- 支払い能力がない場合には解約・退去を促す
- 入居契約時に実家や勤務先の連絡先を把握しておく
- 支払い期日の直前に一斉メールで連絡して予防する
- 滞納者にはメールや電話ですぐに連絡する
- 支払い日時を決めるまで連絡をし続ける
- できるだけ早期に支払い能力の有無をチェックする
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