
2020年6月、賃貸住宅の管理業(制度)に関係する新しい法律が成立しました。
正式名称は、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」です。
この新法は、以下の2つの業者を規制の対象としています。
① 賃貸住宅管理業者
② 特定転貸事業者(サブリース業者)
このコンテンツでは、①の「賃貸住宅管理業者」に関係する規制について解説します。
新法は、令和3年(2021年)6月に施行される予定です。
※サブリース業者の規制については、下記のコンテンツで解説しています。
目次(もくじ)
賃貸管理業者の登録制度とは
賃貸住宅の管理業務の適正化を図るために、国土交通省の告示による賃貸住宅管理業の登録制度です。(告示公布H23.9.30、告示施行H23.12.1)
賃貸住宅管理業務に関して一定のルールを設けることで、借主と貸主の利益保護を図っています。
また登録事業者を公表することにより、消費者は管理業者や物件選択の判断材料として活用することが可能となります。
賃貸住宅管理業者登録制度(国土交通省)
http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/tintai/index.html
新法では、賃貸住宅管理業の登録を義務付けることとなりました。(2021年6月 施行予定)
- 登録義務に該当する事業者は直ちに登録をおこなう(200戸以上)
- 物件所有者に管理報酬などの「重要事項」を契約前に書面で説明する
- 一定の年数以上の実務経験を持つ人材や住宅管理の有資格者を配置する
- 入居者から預かった賃料等を登録事業者の財産と分けて管理する
- 登録の有効期間は5年(5年毎の更新が必要)
その内容をくわしく見ていきましょう。
賃貸住宅管理業者の登録が義務化(200戸以上)
現在の「管理業者登録」は任意の制度となっています。
しかし今後は、200戸以上を管理する事業者は登録が義務付けられることになります。(管理戸数が200戸未満の業者は制度義務化の対象外とする方針です。)
なお、サブリース事業の戸数とは異なりますので注意しましょう。
施行は、2021年(令和3年)6月 の予定です。
賃貸住宅管理業者に該当する事業者は、国土交通大臣の登録を受けなければならなくなります。
無登録で賃貸住宅管理業を行なってしまうと、「一年以上の懲役もしくは100万円以下の罰金(または両方)」が科される可能性があります。
賃貸住宅管理に登録制 200戸以上管理の業者を対象に(日本経済新聞)
貸主への「重要事項説明」が義務化
物件所有者(オーナー)に対して、管理受託契約の「重要事項」を説明し、書面を交付することが必要になります。
- 説明者は一定の資格者等であることを示す書面を提示する
- 実務経験者等や有資格者が説明する
- 書面の交付及び記名押印する
(※マスターリース契約・サブリース方式の重要事項説明とは異なります。)
事務所に実務経験者・有資格者を配置する
賃貸住宅管理業者の登録には、事務所ごとに「一定の年数以上の実務経験を持つ人材や住宅管理の有資格者」を配置する必要があります。
- 6年以上の実務経験者・・・賃貸住宅管理業者の登録時に業務経歴書を申請・認定
- 賃貸不動産経営管理士・・・賃貸不動産経営管理士証の資格保持者(宅地建物取引士を含む)
管理会社の社内に実務経験者や宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士がいないと、新法で定める業務管理者の設置が間に合いません。
不安がある管理業者は、今のうちから賃貸不動産経営管理士等の採用や従業員による資格取得を検討しておく必要があります。
入居者から預かった金銭を分けて管理する
入居者から徴収した金銭は、「業者の資金・財産と分割して」管理しなければなりません。
例えば、業者の財産と賃貸人の家賃や敷金等の預り金を、帳簿上、別々に管理することが挙げられます。
(分別管理)
第十六条
賃貸住宅管理業者は、管理受託契約に基づく管理業務(第二条第二項第二号に掲げるものに限る。以下この条において同じ。)において受領する家賃、敷金、共益費その他の金銭を、整然と管理する方法として国土交通省令で定める方法により、自己の固有財産及び他の管理受託契約に基づく管理業務において受領する家賃、敷金、共益費その他の金銭と分別して管理しなければならない。
分別管理の状況については、家賃等を集金してから貸主へ送金するまで、どのように管理されているかをわかりやすく確認できるように記載する必要があります。
管理業者は契約者に対して「定期的に報告する」必要がある
管理業者は物件の入居状況や入居者がトラブルを抱えていないかなどを、契約者に対して「定期的に報告する」ことが義務付けられます。
貸主と登録業者の信頼関係を維持できるよう、業務内容に応じて、適切に実施される必要があるでしょう。
例えば、毎月の家賃の受領については毎月、建物・設備の維持管理状況については1年ごとに報告することなどが考えられます。
登録の有効期間は5年(5年毎の更新が必要)
賃貸管理業者の登録の有効期間は5年です。
この有効期間満了後も賃貸住宅管理業の登録の継続をされる場合は、登録の更新を受ける必要があります。
登録の更新を受ける場合は、有効期間満了の日の90日前~30日前までに更新登録申請を行わなければなりません。
更新登録の申請がない場合には、有効期間満了とともに登録を抹消することになります。
注意
(登録制度は令和3年6月に施行予定)。
現在の制度(告示)において登録を受けていても、この新しい制度(法律)による登録を受けようとする場合は、新たに申請が必要となります。
(現在の登録が新制度に移行されるわけではありません)
業者に登録が義務付けられれば、インターネット上で登録事業者を確認することができるようになると思われます。
物件の管理を業者に委託する物件所有者(オーナー)は、契約前に必ずチェックして「登録事業者と契約を締結する」ようにすることがトラブルを防止することにつながるでしょう。
資料・リンク集など(賃貸住宅管理業法)
国土交通省が公開している賃貸住宅管理業法に関係する資料です。
1.賃貸住宅管理業法
賃貸住宅管理業務等の適正化に関する法律(概要版)
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の概要等(令和二年三月六日閣議決定)
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(令和二年六月十九日法律第六十号)
2.賃貸住宅管理業法施行令(施行期日)
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の一部の施行期日を定める政令(令和二年十月十六日政令第三百十二号)
3.賃貸住宅管理業法施行令
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律施行令(令和二年十月十六日政令第三百十三号)
4.賃貸住宅管理業法施行規則
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律施行規則(令和二年十月十六日国土交通省令第八十三号)
5.賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解釈・運用の考え方
・特定賃貸借契約(マスターリース契約)重要事項説明書(別添1様式)【PDF版】【Word版】
・業務状況調書(別添2様式)【PDF版】【Word版】
・申出書(別添3様式) 【PDF版】【Word版】
6.特定賃貸借標準契約書(マスターリース契約書) 【PDF版】 【Word版】
7.特定転貸事業者等の違反行為に対する監督処分の基準
【参考】監督処分の決定に至るプロセス及び業務停止処分等に係る基本的な考え方について
日本賃貸住宅管理協会は、会員向けに実務書式などの様々なサポートをしているので参考にするのもよいでしょう。
PS(追伸) 新法の最新情報
2021年1月、国土交通省は賃貸住宅管理業法の施行(6月予定)に向けて、論点の整理をおこなっています。
- 賃貸住宅管理業者の登録要件(財産的基礎要件)
- 管理戸数の確認方法等
- 業務管理者の配置
- 管理受託契約の締結前・締結時の書面交付等
- 金銭の分別管理
- 定期報告
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