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2020年の民法改正のポイント(賃貸契約)

 

改正民法が2020年(令和2年)4月1日より施行されます。

今回の見直しでは、社会・経済の変化へ対応して一般にわかりやすい民法とするために、確立した判例などの基本的なルールを明文化しています。

 

このコンテンツでは、改正民法の「不動産の賃貸借契約に関係する部分」について、シェアハウスの事例を中心に解説しています。

改正の内容とポイントに加え、国土交通省が作成した「契約書のひな形」も掲載。

改定民法の規定を取り入れた賃貸借契約書を作成することができます。

オーナーや管理会社にとっては、スムーズな準備と対応が可能になります。

 

民法の一部を改正する法律(債権法改正)について[法務省]
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_001070000.html

 

「民法改正」3つの重要ポイント(シェアハウス)

作業着の女性の写真画像

今回の改正民法の「3つの重要ポイント」を解説します

 

今回の民法改正の中でシェアハウスなどの賃貸契約に関わるポイントは3つあります。

 

  • 保証人(連帯保証人)について
  • 原状回復義務について
  • 約款について

 

シェアハウス運営でオーナーや管理会社が入居者に対して「保証人や保証会社」を求める場合は、改正民法に適応する必要があります。

また退去時の「原状回復義務」については、対象の範囲を明確にしておかなければなりません。

契約に「約款」を利用している会社は、改正民法の明文化された内容を確認して対応することが必要です。

 

この後くわしく見ていきましょう。

 

(参考)
改正民法を踏まえて国土交通省は「標準契約書」を作成しています。

賃貸住宅標準契約書(国土交通省)

定期賃貸住宅標準契約書(国土交通省)

 

「保証人」に関する改正(ポイント1)

保証:住宅:写真画像

①「保証人」の民法改正ポイントを見ていきましょう

 

民法改正のポイント1(保証人)
  • 保証人が負うべき責任の上限額(極度額)を定める
  • 定めていない場合その契約は「無効」となる(保証人の責任が限定される)
  • 家賃の1~2年分が目安となる(判例など)

 

アパートなどの賃貸契約時には、保証人(連帯保証人)を立てることが通例ですよね。

家主は家賃の滞納などに備えて、入居者の親などと保証契約を結ぶわけです。

 

これまでの契約では債務の対象が特定されにくいこともあり、保証人が多額の損害を請求されたケースがあります。

そのため、改正民法の保証契約では「極度額」を定めることが必要になります。

保証人が責任を負う限度の金額(上限額)を決める、ということです。

2020年4月1日以降に結ぶ保証契約は、この極度額を定めないと契約が「無効」となるので注意が必要です。

(※2020年3月31日以前に結ばれた契約は依然として有効です。)

 

賃貸住宅標準契約書:頭書:連帯保証人:極度額:国土交通省:写真画像

連帯保証人・極度額を記載する (賃貸住宅標準契約書・頭書6 )

 

賃貸住宅標準契約書:作成の注意点:連帯保証人:極度額:国土交通省:写真画像

頭書(6)作成の注意点

 

賃貸住宅標準契約書:17条:連帯保証人:極度額:国土交通省:写真画像

連帯保証人(17条)

 

保証契約書:賃貸住宅標準契約書(国土交通省):写真画像

保証契約書(サンプル)

 

シェアハウス運営では、保証人を求めずに入居契約をするオーナーや管理会社もあります。

しかし、入居時に保証人の契約を義務付けているオーナーや管理会社は、20204月の改正民法に合わせて準備が必要になります。

 

極度額の設定については、国土交通省が「参考資料」を公表しています。

極度額に関する参考資料(国土交通省)

 
 
民法改正を受けた賃貸住宅標準契約書Q&A(国土交通省)
 
 
                                                           
 

「原状回復義務」に関する改正(ポイント2)

空室の写真画像

②「原状回復義務」の民法改正ポイントを見ていきましょう

 

民法改正のポイント2(原状回復義務)
  • 原状回復の「範囲」を定める
  • 敷金の返還にも影響する可能性あり

 

アパートなど退去時の「原状回復義務」のルール改正が行われています。

通常の賃貸借契約書には、借り手は「原状回復して明け渡さなければならない」などと書かれていることも多いと思います。

 

現行の民法には原状回復の「範囲」についての規定がないので、借り手の義務がどこまで及ぶのかが不明確でした。

そのため、家主や管理会社は「部屋を入居時の状態に戻す必要がある」などと主張することもあるのが現状です。

壁紙の貼り替えや水回り設備の交換などの名目で多額の費用を請求したり、敷金の返還を拒んだりして、借り手とトラブルになる事例も多く発生しています。

 

改正民法では、原状回復義務は「借り手の不注意」によって壁や床を汚したり傷つけたりする場合などが対象としています。

普通に暮らしていて生じる損耗や経年劣化は、原状回復の範囲に含まれず、家主が請求することは難しくなります。

 

シェアハウスの運営の特徴としては、契約期間が比較的短く、また個室内に水回り設備がないことがあげられます。

そのため、原状回復義務に関してのトラブルがほとんどなく、「これまで通りの運用で問題がない」という点はメリットです。

 

賃貸借契約に関するルールの見直し(法務省)

 

「約款」に関する改正(ポイント3)

契約書など:写真画像

③「約款」の民法改正ポイントを見ていきましょう

 

 

改正民法では「約款」に関する規定が加えられ明文化されました。

約款とは、同じ取引を効率的に行なうために作られた定型的な内容の取引条項のことです。(定型約款)

 

企業が約款を契約内容とする旨をあらかじめ相手方に表示すれば、契約が成立したとみなされます。

また、相手方の一般的な利益になる場合は、契約後に定型約款の内容を変更できるとしています。

 

シェアハウスの契約などで「約款」を使用しているオーナーや管理会社があれば、今回の改正民法に対応する必要があります。

 

 約款(定型約款)に関する規定の新設(法務省)

 

筆者のシェアハウス運営管理の経験談より

筆者が管理・運営を経験したシェアハウスでは、入居者の賃貸借契約時に「保証人(連帯保証人)」・「保証会社」は不要としていました。

その理由は、シェアハウスがアパートやマンションに比べて「気軽に入居できること」が特徴・メリットだからです。

 

保証契約のやり取りや保証会社の申請・審査があると、入居時のハードルが上がってしまいます。

スピーディーな入居ができず、運営側は他のシェアハウスとの競争にも勝つことができません。

 

ではシェアハウス運営はどのように行なっているかというと、契約時に「緊急連絡先」として実家の住所と電話番号を確認しています。

職場や学校の連絡先を確認する場合もあります。

 

家賃滞納などのトラブルがあった場合は実家などに連絡し、結果的に入居者の親が支払うこともあります。

もちろん正式な「保証人」ではないので、法的に請求することはできません。

しかし、オーナーや管理会社が「入居者の緊急連絡先」を把握しておくことは、トラブルの抑止や解決につながることもあるので重要です。

 

シェアハウス運営では、家賃滞納や原状回復の案件があったときに、「保証人や保証会社がなくても運用できる」体制を整えておく必要があります。

 

最新ニュース(アパートローンの影響)

不動産経営やオーナーに関わる民法改正の最新ニュースです。

 

民法改正でアパートローンが厳しく
  • 法定相続人の「連帯保証」をなくす(原則)
  • 賃貸事業の審査に影響す

 

2020年4月に施行の改正民法を受け、大手銀行は融資の条件としてきた「個人保証」を見直すようです。

個人が賃貸住宅を建てる際に利用するアパートローンで、法定相続人の連帯保証を原則なくす方針。

これは、債務者がローン返済に行き詰まると、保証人の生活への影響が大きいという問題があったことによります。

たとえば、これまでは高齢のオーナーが融資を受ける際には、法定相続人である息子などが連帯保証をするのが通例でした。

 

民法改正後は、個人が事業用の融資の保証人になろうとする場合、原則として「公証人」に引き受けの意思を示す必要があります。

 

  •  公証役場に行く
  •  保証意思確認の手続(保証意思宣明公正証書の作成の嘱託)を行う
  •  保証意思宣明公正証書は,保証契約締結の日前1か月以内に作成されている必要がある
  • この手続は,保証人になる本人自身が公証人から意思確認を受ける(代理人に依頼できない)
  • 公証人から,「保証意思を有しているのか」を確認される
  • 所要の手続を経て,保証意思が確認された場合には,公正証書(保証意思宣明公正証書)が作成される

 

上記のような保証人の設定手続きが煩雑になるため、大手の銀行はアパートローンで法定相続人からの保証を取らない方針です。

一部の地方銀行も追随する可能性が高いと言われています。

 

これまで銀行は、高齢者が事業を行う場合に本人が亡くなったときに備えて子どもなどの法定相続人に債務を引き継ぐことを融資条件としていました。

今後は法定相続人などの「個人保証」がなくなる分、地方銀行を含めて一部の融資では審査が厳しくなったり、融資時の金利が高くなったりする可能性があります。

これからの不動産経営は、資金調達がますます厳しくなると言えるでしょう。

 

(参考)
保証のルールが変わります(法務省)

 

まとめ(民法改正とシェアハウス経営)

2020年に施行される改正民法について、賃貸契約にかかわる内容について見てきました。

シェアハウスの管理運営の方針によっては、対応が不要な項目もあるかもしれません。

賃貸借契約書の修正や見直しなど、法律の施行までに必要な業務を行なうようにしていきましょう。

 

賃貸契約に関わる3つのポイント(民法の改正)
  • 保証人(連帯保証人)は極度額を設定する
  • 原状回復義務の範囲をチェックする
  • 約款を使用している場合は条文を確認する

 

 

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