シェアハウスといえば、そのほとんどが単身者の若者を対象したものでした。
しかし最近では東京を中心に、夫婦や子供、シニアなどが同居する「多世代型シェアハウス」が増えているようです。
このコンテンツでは、日本経済新聞の記事を引用しつつ「多世代型シェアハウス」の可能性と課題について解説しています。
多世代型シェアハウスの運営や管理について興味のあるオーナーや管理会社のかたが、検討する際の参考になると思います。
20代~60代の入居者が住むシェアハウスでの筆者の運営経験を生かして、具体的な事例を交えてお伝えします。
目次(もくじ)
多世代型シェアハウスの「可能性」について
最近は単身者だけでなく、夫婦や親子やシニアが共同生活を送るシェアハウスが誕生しています。
日本経済新聞(東京版)でも取り上げられています。
シェアハウスを拠点としたコミュニティーづくりが首都圏で広がっている。
シェアハウスは単身者が住む場所というイメージが強い。
だが、夫婦や子連れでも入居できる施設が増えている。
0歳から60代までが生活するシェアハウスがあるとのことで、シェアオフィスのように使用する人もいるようです。
単なる同居にとどまらず、仕事や子育てをシェアすることで住人同士の結びつきが強まるとし、精神的な安心にもつながる新たなコミュニティーが生まれつつあるようです。
親子でシェアハウスなどの共同住宅に住み、家事や育児をシェアする取り組みが広がっている。核家族で不足する人手を補い合うことで、共働きが続けやすくなる利点がある。
プライベートな空間を確保したり夕食のサービスを付けたりするなど、物件やケアの内容も多様化している。
一般のマンションのように各世帯にトイレや台所がある一方、食事をしたりする共有スペースがあるとのこと。
入居する17世帯のうち6世帯が子育て中で、5世帯が共働き。
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子育てを共有するシェアハウス
単身者と家族がシェアハウスで共同生活すると、子育てをシェアすることが可能になります。
子どもの親は育児を助けられ、若い人は子育ての経験ができます。
たとえば、親が忙しい時には共用のリビングで他の入居者が子供の面倒を見ることができます。
子育ての経験がない若い世代にとっては、貴重な機会となるでしょう。
かつては同じ町内に住む子どもを周囲の大人がみんなで見守っていたようなコミュニティーと言えるかもしれません。
多世代が助け合うシェアハウス
若者だけでなく、50代~60代のシニアの入居をすすめるシェアハウスもあります。
多世代が共同生活をすることでお互いの価値観を広げ、単身生活では得られない経験が可能になります。
人々が助け合いながら暮らしていたかつての長屋や隣近所のような生活がシェアハウスによってつくられつつあります。
多世代型シェアハウスは、人と人とのつながりの幅が広がることで安心感につながります。
たとえば、若者が仕事のことで悩んでいるときに、シニアの入居者に相談にのってもらうこともできます。
高齢者向けシェアハウスの「事例」
高齢者と同居するシェアハウス(多世代型)を実際に運営する事例がありましたので紹介します。
多世代型シェアハウスの「事例」①
約3年間空き家となっていた築54年の一戸建てを運営会社がオーナー
総工費は約350万円で、各居室は約5.5~約10畳、
多世代型シェアハウスの「事例」②
仙台市にある多世代型シェアハウスが地元メディアに取り上げられています。
シェアハウス、和気あいあい シングルマザーなど多様な世帯が交流 | 河北新報オンラインニュース / ONLINE NEWS (kahoku.news)
多世代型シェアハウスの「事例」③
日雇い労働者の街として知られる大阪市西成区のあいりん地区(通称・釜ケ崎)にある、住人の6割を若者が占めるシェアハウス。
生活保護を受ける高齢者も住み、福祉アパートという側面も持っているようです。
夢追う若者と事情抱える高齢者が共存 日雇い労働者の街で新たな物語(毎日新聞) - Yahoo!ニュース
多世代型シェアハウスの「事例」④
栃木県大田原市で“高齢者の孤立”という社会問題の解決に取り組むのは「一般社団法人えんがお」。
6軒の空き家を活用しており、メインは高齢者の孤立の予防と解消を進めているとのこと。
高齢者だけではなく、おじいちゃん・おばあちゃんが集まる施設の目の前にみんなでご飯を食べられる地域食堂があったり、その奥には若者のシェアハウスがあったり、シェアハウスの隣には、精神・知的障がいを抱えた人のグループホームがあったり。
近隣で子どもから高齢者まで、障がいがある方も含めたいろいろな人が関われるコミュニティづくりをおこなっているそうです。
“高齢者の孤立”を解決するために…「一般社団法人えんがお」に人が集まってくる理由とは? | マイナビニュース (mynavi.jp)
多世代型シェアハウスの「課題」について
今までにない交流が生まれるなど、多世代型シェアハウスにはメリットもあります。
しかし、10年以上のシェアハウス運営・管理の経験からすると、デメリットも見えてきます。
様々な人が共同生活をするシェアハウスの「課題」について見ていきましょう。
共同生活での「トラブル対応」がシェアハウスの課題
日本経済新聞の記事では、多世代が生活する利点や前向きな内容が多く記載されていました。
しかし、実際にシェアハウスを管理・運営している視点からすると、楽観的な面ばかりではありません。
様々な入居者がいれば価値観も多様になり、これには良い面も悪い面もあるからです。
つまり、色々な入居者がいれば「トラブル」も起きやすくなるということです。
トラブルが起きても、住人同士の話し合いや管理運営会社の指導でうまく収まれば問題はありません。
しかし、大きなトラブルが起きたり、人間関係がこじれたりしてしまうと、「シェアハウスでの共同生活」が難しくなってしまうケースも出てくるのです。
たとえば家族で住めるシェアハウスで、子供の「しつけ」について意見の相違が起こった場合、入居している親は子育てがしにくくなるかもしれません。
シェアハウスは、リビングやキッチン、トイレ、浴室などを共用するため、どうしても入居者同士が顔を合わせる機会が多くなります。
気まずさや不信感などから、以前のように共同生活が送れなくなってしまう可能性があります。
シェアハウス「退去」についての課題
もちろん、若者が中心のシェアハウスでもトラブルが起こることはあります。
大きなトラブルを起こしたり、トラブルによって共同生活を送るのが気まずくなったりした場合には、退去するケースも多くあります。
単身者の若者であれば、他のシェアハウスへの引越しも比較的かんたんにできます。
しかし、多世代型シェアハウスでは夫婦や親子、高齢者などの入居者がおり、簡単に退去したり引越したりすることが難しくなります。
そのため、トラブルがあっても入居者の退去が進まず、同居による気まずさやハウス内の雰囲気の悪化につながる可能性があります。
オーナーや管理会社は、入居者同士のトラブルを早期に解決し、ハウスの雰囲気を常に良好に保つことが重要になります。
また、そのような管理運営体制ができていないと、安定したシェアハウス経営をすることは難しくなります。
その他の課題
- 築古の建物は地震に備えて耐震補強工事をしたかどうか(特に1981年以前の建物)
- 高齢者の健康状態の把握や緊急時の体制がどうなっているか
シェアハウスは、築古の建物を利用するケースも多くあります。
住人が安心して生活するためには、地震に備えて耐震補強工事がなされているかどうかは重要なポイントです。
また、高齢者は急に体調が悪くなるということもあるでしょう。
そのようなときの対応策がしっかりと考えられているかどうかも確認したいところです。
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まとめ(多世代型シェアハウス)
多世代型シェアハウスは、単身者が中心だったこれまでのシェアハウスとは異なる価値を創造する可能性が秘められています。
一方で、共同生活の難しさやモラルの維持といった課題もあるため、その運営には管理体制や経験が必要となります。
- 様々な世代で価値感を広げることができる
- 子育てをサポートしたりシェアしたりできる
- トラブルの解決など管理体制の課題もある
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