シェアハウス運営においては、「管理」はとても重要なポイントです。
管理には3つの方法があります。
それぞれの特徴やメリット・デメリットをわかりやすくお伝えします。
筆者は、20棟・300室のシェアハウスの管理・運営を10年以上経験しています。
このコンテンツでは、シェアハウスの始め方など、現場の具体的なシェアハウス管理の事例を解説しています。(オーナーと管理会社が締結する契約書のサンプルも掲載)
「かぼちゃの馬車」の事例もあるように、管理会社を間違えるとシェアハウス経営は成功しません。
シェアハウスの管理について知ることで、管理会社を選ぶときの指針や判断材料になります。
それでは、「シェアハウスの3つの管理方法」について見ていきましょう。
目次(もくじ)
シェアハウスには3つの管理方法がある
シェアハウス管理の方法は3つあります。
- 自主管理
- サブリース(変動家賃)
- サブリース(保証家賃)
オーナーに管理や運営のノウハウや時間の余裕がないと、自主管理をするのは難しく、シェアハウス専門の管理会社に任せざるを得ないのが現実です。
そのため、管理会社がオーナーから建物を一括借上げ(マスターリース契約)して運営するケースが多くなります。
アパートやマンションにくらべてシェアハウスの管理業務の内容がとても多い、というのもその理由です。
オーナーと管理会社は「マスターリース契約」(転貸が可能な契約)を結びますが、シェアハウスのサブリース事業の中にはオーナーの家賃保証がないものがありますので注意が必要です。
3つの管理方法 メリット・デメリット(シェアハウス)
メリット | デメリット | |
自主管理 | ・オーナーが自由に運営できる ・賃料収入を最大化できる |
・空室のリスクを伴う ・全ての管理業務を行なう必要がある |
サブリース (家賃保証なし) |
・入居率に応じた賃料を受け取れる ・管理業務を委託できる |
・空室のリスクを伴う ・管理料が必要になる |
サブリース (家賃保証あり) |
・一定の賃料を安定して受け取れる ・空室のリスクがない ・管理業務を委託できる |
・受け取る賃料が低くなる ・空室があっても気づきにくい |
自主管理(シェアハウス管理 ①)
管理会社に任せず、オーナー自身で賃貸経営にかかわる業務を行う管理形態です。
資格や免許などは特に必要ありません。
ハウスのコンセプトや入居者選びなど、オーナーの個性を出しながら自由に運営することができます。
賃料や経費をコントロールして、収益を最大化することが可能です。
一方で、入居者募集がうまくいかない場合には空室のリスクを伴います。
入居者募集、契約、家賃の回収、ルールづくり、家具や家電の購入、消耗品の補充、イベントの企画、コミュニティ管理など、管理内容は多岐にわたります。
民法や借地借家法などの知識も必要になります。
アパートやマンションなどの一般の物件の場合には、自主管理であっても、入居者募集、契約、更新、解約などの業務は不動産会社にお願いするのが一般的です。
しかし、シェアハウスは上記のような業務もオーナー自らが行う必要があるので、実際に行なうとなるととても大変なのが現実です。
サブリース(変動家賃)(シェアハウス管理 ②)
管理会社はオーナーと「マスターリース契約」を結んで建物一括借上げしますが、家賃を保証しない契約です。
オーナーが受け取る家賃は、入居率によって変動します。
オーナーが受け取る家賃は、入居者から徴収した家賃の80%くらいが目安になっています。(運営会社や管理内容により異なります。)
「家賃保証」のサブリースよりも、満室時に受け取る家賃は多くなります。
3. サブリース(家賃保証)(シェアハウス管理 ③)
入居者への転貸を目的に、サブリース会社や管理会社がオーナーから物件を一括で借上げ、「家賃を保証する」マスターリース契約もあります。
賃貸経営にかかわるほとんどの業務をサブリース会社が行います。
また、契約中は、満室でも空室があっても「毎月一定の保証家賃」がオーナーに支払われます。
そのため、安定した経営ができるのが魅力です。
シェアハウスの場合は、満室時の家賃の60〜70%が支払われる家賃の目安になります。(上記の%は、会社や契約内容により異なります。)
サブリースは家賃保証が魅力ですが、注意点があります。
契約期間、保証家賃の変更、解約の条件、免責事項などに注意しましょう。
※サブリース業者に対する規制・内容については、下記のサイトの解説を参考にしてください。
シェアハウス管理の注意点(かぼちゃの馬車の事例あり)
シェアハウス管理の注意点
シェアハウスのオーナーと管理会社の契約は、サブリース(転貸)を前提としたマスターリース契約がほとんどです。
オーナーは、管理会社にそのほとんどを任せることになります。
このことについては、大きな注意点がありますので以下に解説します。
シェアハウスは、管理会社による「建物1棟の借上げ契約」になっていることが多くなります。(マスターリース契約)
管理会社は、建物を一度オーナーから借りて、それを入居者に「転貸(サブリース)」する必要があるためです。
シェアハウスは入居者募集も管理会社が直接おこなうので、仲介手数料が発生しません。
そのため、管理会社は「貸主」として入居者(借主)と賃貸借契約を結びます。
管理会社は入居者への転貸(サブリース)を前提として、オーナーから物件を先に借りておく契約を結んでおくのです。(マスターリース契約)
「かぼちゃの馬車」の事例からの教訓
マスターリース契約をしたとしても、オーナーはシェアハウスの基本的な運営ノウハウは知っておくべきです。
「かぼちゃの馬車」の事件では、サラリーマンなどの不動産投資家がシェアハウスの管理についてほとんど理解していなかったと思われます。
サブリースによる家賃保証に安心してしまっていたようです。
結局は、管理会社による入居者募集がうまくいかず、オーナーに保証家賃が払えなくなり破たんしてしまいました。
その結果、オーナーは借り入れ資金・利息の返済ができなくなり、スルガ銀行の不祥事も合わせて問題になりました。
シェアハウスの管理は、アパートやマンションの管理と比べて多岐にわたります。
管理会社が本当にその実力をそなえているか、オーナーは事前に見極めなければなりません。
オーナー自身が少しでもシェアハウス管理のノウハウを知っていれば、管理会社を選定するときの指針や判断材料にすることができます。
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「かぼちゃの馬車」はシェアハウスではなかった!プロが解説します
オーナーと管理会社のマスターリース契約書(ひな形あり)
賃貸住宅におけるサブリース事業とは、賃貸管理事業者が建物所有者(オーナー)等から建物を転貸目的にて賃借し、自らが転貸人となって入居者(転借人)に転貸するシステムによって行う賃貸管理事業です。
サブリース事業の当事者間における紛争の未然防止を図るため、国土交通省は「標準契約書」を作成しています。(特定賃貸借標準契約書)
たとえば、下記のようなオーナーにとって非常に重要な事項が記載されています。
- 賃料の改定時期等の明確化
- 解約できない期間の設定
- 賃料支払義務発生日の明確化(免責期間)
◆ 特定賃貸借標準契約書(マスターリース契約書)国土交通省
【PDF版】 【Word版】
また、2020年12月15日からは、いわゆるサブリース新法の一部が施行されました。
オーナーとサブリース業者がマスターリース契約を締結する前に、「重要事項説明書」を作成して説明を行うことが義務化されました。
オーナーは、この重要事項説明の内容をよく理解しておくことが文字通り重要となります。
◆特定賃貸借契約(マスターリース契約)重要事項説明書(国土交通省) 【Word版】
マスターリース契約における「変動家賃」の契約書サンプル(ひな形)
シェアハウスの場合は、「マスターリース契約」であってもオーナーが受け取る家賃が変動の場合があります。(家賃保証なし)
そこで、国土交通省の「特定賃貸借標準契約書」の賃料に関する部分の「記載例」をのせておきますので、参考にしてください。
第●条 乙は、転貸により得られる賃料総額の●●%を本契約における賃料として、頭書(●)の記載に従い甲に支払わなければならない。
2 1か月に満たない期間の賃料は、1か月を30日として日割計算した額とする。
3 甲及び乙は、頭書(●)に記載する賃料改定日において、次の各号の一に該当する場合には、協議の上、賃料(料率%)を改定することができる。
一 土地又は建物に対する租税その他の負担の増減により賃料が不相当となった場合
二 土地又は建物の価格の上昇又は低下その他の経済事情の変動により賃料が不相当となった場合
三 近傍同種の建物の賃料に比較して賃料が不相当となった場合
甲:貸主(オーナー)
乙:借主(管理会社)
まとめ(シェアハウスの管理方法)
- シェアハウスの管理方法は「サブリース方式」が主流
- マスターリース契約には家賃が保証されるものとされないものがある
- オーナーも管理内容を理解しておく
- 国土交通省の「特定賃貸借標準契約書」を採用している管理会社を選ぶ
- サブリース新法や重要事項説明の内容を理解する
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