シェアハウス経営における「個室の作りかた」について解説します。
主に2つのテーマでお伝えしています。
- 間取りプラン上に個室を配置する方法
- 実際の個室をつくる際の方法
シェアハウスの個室の広さはどれくらいがよいのか。
入居者に支持される個室の内装設備や家具はどのようなものか。
ワンルームアパートやマンションの部屋との違いがわからないと、具体的にイメージができませんよね。
シェアハウスの経営を検討してプランを立てる際には、入居者が気持ちよく共同生活をおくれるような間取りや設備が必要です。
筆者は、20棟・300室のシェアハウス管理会社に10年以上たずさわり、実際に間取りプランや個室の内装を決定してきた経験があります。
入居者の満足度を高める個室をプランニングする際の重要なポイントや注意点について、詳細に解説します。
目次(もくじ)
シェアハウス経営 部屋の種類(個室・ドミトリー)
シェアハウスを運営するとき、入居者が生活する部屋の種類は大きく分けて3つあります。
- 個室
- ドミトリー
- セミプライベート
「個室」は完全なプライベートな部屋です。
「ドミトリー」とは相部屋(あいべや)のタイプです。
広めの部屋に2段ベッドを設置して複数人で生活するタイプの部屋になります。
「セミプライベート」も相部屋ですが、仕切りをしてプライバシーをより高めた部屋です。
このコンテンツでは、「個室の作りかた」を解説しています。
ドミトリー・セミプライベートなどの企画を検討する場合は、下記のコンテンツをご覧ください。
シェアハウス経営 間取りを企画する
シェアハウスの運営を検討する際には、まずは「間取りプラン」が必要になります。
事業収支を計算するにあたり、間取りプランがないと家賃収入が計算できません。
家賃収入は部屋の種類や広さによって変わりますので、早い段階で間取りプランを作成して想定家賃を確認する必要があります。
間取りプラン作成の流れは、下記のとおりです。
- 個室が何部屋できるか間取り案を作成してみる
- 立地条件をチェックする
- 共用部分(リビング・水回りなど)の数・広さをチェックする
- 全体を調整する(部屋数・広さ・入居人数・設備数・共用部の広さ)
シェアハウスは既存の建物をリフォームして運営するケースが多くなります。
間取りプラン作成の段階では、既存の広い部屋は2つに区切り、7~8平米(約4.2~5帖)の広さの個室をできる限り作成してみてください。
どうしても中途半端の広さの部屋ができてしまうこともありますが、とりあえず配置してみてください。
この間取り案を作成することで、その物件のシェアハウスとしての「収益性」が見えてきます。
「入居者が満足できるギリギリの広さの個室が何部屋とれるか」で、ハウスの最大の収益を見ることができます。
(ちなみにシェアハウスでは、部屋数を減らして1部屋の面積を広くしても、全体の合計賃料を上げることは難しくなります。)
次に、シェアハウスのポータルサイトで「近隣のシェアハウス相場」を確認します。
掲載されている類似の部屋の広さと金額を確認して、あなたのシェアハウスの合計賃料(概算)を算出してみましょう。
その金額が、あなたの希望の金額を上回っていれば事業化が可能になります。
個室を配置する際には、リビングやキッチン、水回り設備などの「共用部」も同時にプランニングしていきます。
個室や人数とのバランスを考えて共用部をプランし、同時に個室の広さを調整していきます。
これでシェアハウスの「間取りプラン」ができあがります。
シェアハウス経営「個室」の広さの決め方
間取りプランが決まったら、それぞれの個室をプランしていきます。
個室の広さは狭すぎても広すぎてもいけません。
立地や条件に合わせて「ベストな広さと賃料のバランス」を追求します。
具体的には、4畳くらいから8畳くらいまでの広さになります。
シェアハウスは、あまりに広い部屋をつくってもマンションのように高い家賃は取れません。
家賃と共益費を含めて10万円以上を取ることは難しいと考えてください。
4畳くらいの広さでも需要はあります。駅に近かったり、家賃が安かったりすれば希望者はいます。せまい個室を多くつくれば、物件の収益性は高まります。
しかし、各個室の家賃は安くなるので「安さに重点を置く」入居者が多くなり、入居時の審査やその後の管理に慎重さが求められます。
10畳以上の部屋は、2つの個室に分割すると収益力を高めることができます。
こういったリフォーム工事は木造の建物がやりやすいです。
10畳の部屋を分割して、4.5畳の部屋を2室つくる
8畳と3畳の部屋を仕切り直して、5畳の部屋を2室つくる
- 広い部屋を分割して個室にリフォーム工事をする際には、各部屋に「窓」の確保が必要になります。
- 建築基準法により床面積の1/7以上の面積の「窓」が必要です。
(窓がない部屋は、人が住む居室としては認められないので「納戸」となります。)
シェアハウスの部屋や広さをプランニングする際には、下記のコンテンツをご覧ください。
シェアハウス経営「個室」の仕様・設備の決め方
個室の広さ(面積)が決まったら、部屋の仕様や設備を決めていきます。
壁・床・ドアの仕様を決める
壁(防音)
個室の壁は基本的に住宅の仕様と同じで構いません。
しかし、共用スペースの隣にある個室は、防音シートや壁の厚みを増やして「防音性能」を高める必要があります。
たとえば、トイレやシャワー室などの水回り設備や、リビングや階段のそばの個室の防音に配慮するようにします。
入居者のクレームで多いのが音の問題なのです。
床(素材)
シェアハウスの床の素材も基本的にはアパートなどの賃貸物件と同じ仕様になります。
たとえば、フローリングやクッションフロア(CF)、塩ビタイルなどの素材があります。
筆者が10年以上シェアハウスの管理・運営にたずさわってきた経験からすると、素材や質よりも「傷や汚れが目立たない」ことが重要だとわかりました。
フローリングは傷がつきやすく、張り替えるのが面倒で費用もかかります。
また、クッションフロア(CF)は見た目が安っぽくなりがちです。
筆者のおすすめは、「フロアタイル」です。(塩ビタイルなど)
色や柄も豊富です。水や傷にも強く、一部分の張り替えも可能です。
シェアハウスは、退去があったときは簡単な清掃で済ませ、原状回復工事はしないのが一般的です。
そのため、部分的に補修ができる素材で施工していると、傷や汚れがついた部分だけ取り換える工事で済みます。
工事費をおさえられ、すぐに次の入居者を募集することができます。
塩ビタイル以外にも、最近では張り替えが簡単な素材も増えています。
床の一部分だけを張り替えることもできるため、そのような製品を選んでおくとオーナーも管理会社もリフォーム費用をおさえることができます。
(参考)タイル床のメリット・デメリット(外部サイトへ移動します)
https://hapisumu.jp/floor-merideme-a122021/
ドア(鍵)
個室のドアは室内用のもので構いません。
シェアハウスの個室は、すべてに「鍵」を設置します。
そのため、どんな鍵をつけるかを決めてからドアを決めていきましょう。
個室の鍵には通常のものの他、カードキーや暗証番号式などがあります。
それぞれコストも異なりますので、管理会社と協議して決定しましょう。
その他の設備を決める
個室のその他の設備も決めていきましょう。
エアコン
各個室に取付けましょう。
もっとも小型の6畳タイプで構いません。
(※注意点:部屋数が多いシェアハウスでは、建物の外に「室外機」の設置場所の確保が必要になります。)
電源コンセント・テレビアンテナ端子
電源コンセントは室内に最低2か所は設置しましょう。
テレビアンテナ端子は1か所で構いません。
施工前に家具の配置が決まっていると、入居者が使いやすい位置に設置ができます。
収納
室内の「収納」を充実させましょう。
下記を組み合わせて施工・設置します。
- クローゼットを施工する
- 壁に扉収納を施工する
- 壁にハンガーパイプや棚を施工する
- 既成の収納家具を設置する
- ベッド下収納の商品を用意する
部屋の広さや使い勝手に合わせて施工・設置してください。
照明
天井の照明器具やデスクライトなどを施工・設置します。
火災報知器・煙探知機
シェアハウスは室内にキッチンや水回り設備がないのが一般的です。
しかし、火災や事故の可能性を考えて火災報知器や煙感知器を設置しましょう。
家具・備品
個室にどのような家具や備品を設置するかは、オーナーや管理会社によって異なります。
一般的には、ベッド(マットレス)、デスク・チェア、カーテンなどを設置します。
寝具(ふとん・シーツ・まくら)は準備する必要はありません。(入居後に自分で用意してもらう)
個室内に冷蔵庫などの家電を設置する場合もあります。
その他
壁紙や床、カーテンの色などにこだわり、オーナーや管理会社、その物件の個性を演出することができます。
天井が高い部屋はロフトを施工することができます。
有線LAN端子を施工するとパソコンを使用する入居者には喜ばれます。
不要な設備など
電話回線端子は必要ありません。
各室に個別の「電気メーター」は基本的には設置しません。
まとめ(シェアハウス個室の作り方)
- 全体の間取りプランを考えて家賃収入をチェックする
- 個室と共用部を生活しやすいバランスに調整する
- 収納を念頭に個室の内装・設備・家具を決める
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