シェアハウスの入居者とは、「定期借家契約」(定期建物賃貸借契約)をむすびます。
「定期借家契約」になじみがないと、どこに注意して契約すればいいかわからないこともあると思います。
定期借家契約はきちんと「要件」を満たさないとそのメリットを生かすことができず、普通賃貸借契約とみなされてしまいます。
このコンテンツでは、シェアハウスの入居者と定期借家契約を結ぶ際の「流れ」を解説しています。
手順や手続きを知ることで必要な書類や説明内容をおさえることができ、契約業務をスムーズに進めることが可能になります。
シェアハウスの管理会社で10年超の経験がある筆者が、ポイントを押さえながらわかりやすくお伝えします。(契約書・規則・ハウスルールなど)
契約書面の雛形(ひな形・サンプル・テンプレート)やダウンロードができるサイト情報も掲載しています。
- 契約が仲介(媒介)に該当するかどうか確認する
- 定期借家契約書・説明書を準備する
- 定期借家契約の説明を書面と口頭でおこなう
- すべての書面に署名・捺印をもらう
- 再契約時も同様におこなう(更新ではないので注意する)
- 即日の入居や物件での契約は避ける
目次(もくじ)
シェアハウスは「定期借家契約」が基本(更新のない契約)
アパートやマンションでは入居者と更新のある「普通建物賃貸借契約」を締結することがほとんどです。
しかし、シェアハウス経営においては、入居者と更新のない「定期借家契約(定期建物賃貸借契約)」をむすぶことが基本になります。
定期借家契約の流れ
- 契約書類、審査書類を確認する
- 定期借家契約書類を説明する
- 必要な事項を記載し、入居者の署名・捺印をもらう
- 契約書類を貸主・借主で1部ずつ保管する
定期借家契約の作成方法は、下記のコンテンツで詳しく解説しています。
シェアハウス管理の「形態」を確認する
シェアハウスの入居希望者と契約するにあたっては、「貸主」と「借主」を確認しておきましょう。
その内容によっては、シェアハウス管理会社が入居者を仲介(媒介)する契約のケースも出てきます。
仲介(媒介)の場合は、管理会社に「宅地建物取引業の免許」が必要となり、また「宅地建物取引士による重要事項説明」も必要になります。
シェアハウスの管理形態についての詳細は、下記のコンテンツで詳しく解説しています。
定期借家契約書類の準備をする
定期借家契約は、契約書に要件を満たす事項が記載されていなければなりません。
さらに、契約書のほかに「定期借家契約の説明書面」が必要になります。
身分証明書などの審査に関する書類などは、契約時に入居者に持参してもらうようにしましょう。
- 定期借家契約書(2部)
- 定期借家契約に関する説明書面(2枚)
- ハウスルール書面(シェアハウスの場合)
- その他「審査」に関するもの(身分証明書など)
契約書・説明書面は、国土交通省のサイトからダウンロードできます。(定期賃貸住宅標準契約書)
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000030.html
- 朱肉
- マット(押印用)
- ペン
- 電卓
- 領収書
注意点
入居者との契約に当たり仲介(媒介)が発生する場合には、注意が必要です。(建物を「一括借り上げ」していない場合)
- 重要事項説明書を準備する
- 宅地建物取引士による説明を行う
- 書面に宅地建物取引士の署名・捺印する
- 管理会社は宅地建物取引業の免許が必要になる
定期借家契約の説明をする
定期借家契約では、契約の締結の前に「定期借家契約の説明」を書面を使っておこなわなければなりません。(契約書とは別紙の書面が必要)
契約の際には、記載してある下記の事項を説明します。
- 契約の更新がないこと
- 期間の満了により賃貸借が確定的に終了すること
- 契約の終了年月日
なお、書面を交付して「口頭で」説明することが必要なので、注意して下さい。
外国人と契約する場合にも、定期借家契約の内容を誤解が生じないように説明するようにしましょう。
契約書面や口頭の説明も、多言語でおこなうことが理想です。
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入居者の「最終審査」をおこなう
定期借家契約とハウスルールの内容を説明し、質問や疑問点があれば対応しましょう。
シェアハウスの場合は、共同生活するうえでの「さまざまな規則」をしっかりと理解し納得してもらうことが重要です。
ここで契約前の最終審査をおこないます。
契約内容やハウスルールをよく理解していなかったり納得していなかったりする人は、契約後にトラブルとなる場合があります。
お互いが不幸にならないように十分に確認をして進めていきましょう。
定期借家契約の締結をする
基本的には、定期借家契約書と説明書面を「2部ずつ」用意します。
定期借家契約の説明が終了したら、すべてに入居者の署名・捺印をもらいます。
契約書類は、貸主・借主の双方が1部ずつ保管します。
定期借家契約の期間が満了し、入居者と「再契約」をする場合には同様に繰り返します。(「更新」ではありませんので注意が必要です。)
その他、初期費用の精算、部屋のカギの受渡し、玄関カギの通知(暗証番号)などをおこないます。
(参考)
定期借家契約 契約から明渡しまで(定期借家推進協議会) 外部サイトへ移動します
http://www.teishaku.jp/system06.html
筆者のシェアハウス管理会社の事例(入居者契約)
筆者がたずさわるシェアハウスの管理会社は、首都圏に20棟・300室を管理運営しています。
事務所は東京に1か所だけですが、入居者の契約はすべてこのオフィスでおこなっています。
物件のオーナーとは、「建物を一括賃貸する契約書」を事前に契約しています。
これは、「入居者に転貸」することを目的として締結しているものです。(いわゆるマスターリース契約)
この契約があることで、シェアハウスの管理会社は入居者に対して「貸主」になることができます。
そのため、管理会社は入居者と直接に定期借家契約をすることが可能になり、仲介会社や仲介手数料、重要事項説明が不要になるのです。
- ネットや電話で問合せがくる
- 物件見学のアポイントをとる
- 現地を見学する
- 契約内容・ハウスルールを説明する
- 事務所で定期借家契約をむすぶ
- 入居開始
- 期間満了後は、再契約または退去
事務所での契約時は、定期借家契約の内容やハウスルールをしっかりと説明します。
書面だけでなく口頭でも十分に説明しています。
外国人の入居者に対しては、英語や韓国語などでも対応しています。
また、入居者の身分証明書を確認し、緊急連絡先や実家、勤務先などの情報を提示してもらいます。
シェアハウスは入居・退去がしやすいため、契約の前と後で大きなギャップがあると長期の入居にはつながりません。
そのため、契約時にオーナー・管理会社の方針やトラブル時の対応など、できるだけ細かく具体的に説明することが重要です。
シェアハウスでは、共同生活するうえでの「さまざまな規則」をしっかりと理解して納得してもらうことが重要です。
質問や疑問点があればお互いが理解できるまで対応しています。
ここで契約前の「最終審査」をおこなっています。
契約内容やハウスルールをよく理解していなかったり納得していなかったりする人は、入居後にトラブルとなる可能性があります。
そのため、状況によってはこの段階で契約しない場合もあります。
注意点
- 契約書やハウスルールに納得できない人には注意する
- 問合せから「即日の入居」は要注意
- 物件での即時契約はしない
シェアハウスの管理会社によっては、問合せから現地を見学して「即日の入居」を可能にしている場合があります。
ハウスの見学をして、そのままハウス内で契約をする管理会社もあるようです。
しかし、この方法はおすすめしません。
家賃などの金銭のやり取りも必要になりますし、契約に不備が発生する可能性もあります。
トラブルを防ぐためにも、契約に関する業務は日を改めて事務所でおこなうのが基本になります。
まとめ(定期借家契約の手順)
定期借家契約を締結する前提として、オーナー(管理会社)による「直接契約」なのか、いわゆる「仲介をしてもらう契約」なのかを確認しておきましょう。
管理会社が入居者と契約を行う場合、オーナーから建物を一括して賃貸(マスターリース)していれば、仲介(媒介)は必要ありません。
定期借家契約の手順やポイントをふまえて、契約業務を進めましょう。
- 契約が仲介(媒介)に該当するかどうか確認する
- 定期借家契約書・説明書を準備する
- 定期借家契約の説明を書面と口頭でおこなう
- すべての書面に署名・捺印をもらう
- 再契約時も同様におこなう(更新ではないので注意する)
- 即日の入居や物件での契約は避ける
(参考)
定期借家契約 契約から明渡しまで(定期借家推進協議会)
http://www.teishaku.jp/system06.html
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