シェアハウスの運営は、通常のアパート・マンションとはちょっと異なります。
せっかく運営するのであれば、できるだけ失敗を少なくしてスムーズに管理したいですよね。
このコンテンツでは、シェアハウス経営のよくある失敗例を7つのポイントにわけて解説しています。
実際にある失敗例やデメリットを把握することで、シェアハウスの企画や運営のリスクを回避することができます。
筆者は、20棟・300室のシェアハウス管理会社に10年以上もたずさわってきました。
その経験から、シェアハウスの失敗例とポイントをプロの目線でわかりやすくお伝えします。
目次(もくじ)
シェアハウス運営の失敗例 ① 「立地」
最寄り駅の利便性が重要
シェアハウスも賃貸住宅ですので、「立地」が重要になります。
とくに20代~30代の入居者がもっとも多いので、以下のような利便性が問われます。(東京都23区の事例)
- ターミナル駅から電車で20分くらいまで
- 最寄り駅から徒歩10分まで
このあたりの条件は、一般のアパート・マンションとそれほど変わりません。
人気の駅や街であったり、入居者を引き付ける独自のコンセプトがあったりすれば別ですが、そうでない場合は「駅の利便性」はシェアハウスの経営に大きな影響を及ぼします。
立地の失敗例
- 電車が各駅停車しかとまらず、ターミナル駅まで30分以上かかる
- 駅から徒歩10分以上かかる
- 駅からバスを利用する
シェアハウス運営の失敗例 ② 「間取り」
間取り・設計が重要
シェアハウスは、間取りや設計も重要です。
ひとつの建物の中で他人との共同生活になるので、暮らしやすい間取りや設備の配置が必要になります。
収益性に目を向けすぎると、入居者が使いにくく暮らしにくいシェアハウスになってしまいます。
間取りの失敗例
- せまい個室を多くつくる
- リビングなどの共用部がせまい(「かぼちゃの馬車」の失敗の一因)
- 水回り設備の数が少ない
- 共用部を広く取りすぎて収益力が低い
個室や共用部の広さは、シェアハウスの経営に直結する部分です。
広いと入居者には喜ばれますが、収益力は落ちてしまいます。せまいと満室になったときの収益力は高まりますが、長期的な入居率の維持が難しくなります。
また、シェアハウス運営の経験にもとづいた設計でないと、現場の運営がとてもしにくいものになってしまいます。
たとえば、玄関がせまくて靴の収納に困ったり、運営側の倉庫がなくて掃除道具の置き場所がなかったりしてしまいます。
個室と共用部の広さや必要な設備、管理運営のしやすさの「バランス」がもっとも重要になります。
※共用部がせまくて失敗したシェアハウスの事例は下記のコンテンツで詳しく解説しています。
シェアハウス運営の失敗例 ③ 「設備」
水回り設備と数が重要
シェアハウスはアパートとは異なる賃貸住宅なので、必要な設備にも違いがあります。
とくに重要なのは、トイレ、洗面所、シャワー室などの「水回り設備」です。
入居者の人数に応じて、必要な水回り設備の数を配置する必要があります。
設備の失敗例
- 水回り設備が少ない
- 設備のスペックが低い(機能的でない)
- 入居者が利用しづらい配置になっている
逆に、設備の数が必要以上に多いと、オープン時の工事費(初期費用)や維持費も余計にかかってしまいます。
たとえば、トイレやシャワー室の数が多いと、定期的な清掃の費用が多くかかります。
結果として「個室」の数が減ることになり、家賃や収益力にも影響します。
シェアハウス運営の失敗例 ④ 「契約内容・条件」
オーナーと管理会社の契約書が重要
オーナーがシェアハウスの管理を委託する場合は、「管理会社と結ぶ契約書」がもっとも重要になります。
当然に賃料等の条件も含まれますので、シェアハウスの収益を左右します。
サブリース(一括借り上げ)・賃料保証などの契約を結ぶケースもあります。
たとえば、オーナーにとって著しく不利な内容になっていないか、慎重に確認をする必要があります。
契約内容・条件の失敗例
- 契約内容・条件をよく確認しない
- 現地を見ないで契約する
- 賃料や管理料の査定や比較があいまい
- 賃料の変更の規定があいまい
- オーナー側から簡単に解約できない
- ハウスの管理内容・実績をよく確認しない
- 「特約」をよく確認しない
契約書には、シェアハウスの管理を委託する上での重要な事項が多く記載されています。
さらに、契約書の内容に問題がなくても、管理会社の能力や実績に問題がある場合があります。
詳細は、事項で見ていきます。
シェアハウス運営の失敗例 ⑤ 「管理会社・体制」
管理会社の実績を確認することが重要
オーナーがシェアハウスの管理を委託する場合には、その管理会社の能力・実績が重要になります。
管理会社は管理契約を受託したいため、都合のよいことしか言わないかもしれません。
たとえば、週1回のハウスを巡回する条件にもかかわらず、管理会社の体制が整っていないと守られないことがあります。
そのため、オーナーは独自に管理会社を見極める必要があります。
1社の管理会社だけでなく、数社から幅広く話をきく方がよいでしょう。
管理会社に関する失敗例
- 1社だけに話をきく
- 会社の規模・管理戸数・管理年数を確認しない
- 管理内容や実績をうのみにしてしまう(見学しない)
- 管理費がいちばん安い会社に安易に決める
- 入居者契約書・ハウスルールを確認しない
管理会社を選定する際には、少なくとも2社以上の話をきくとよいでしょう。
それぞれのメリット・デメリットを比較し、総合的に判断をすることができます。
疑問や不明点は確認してあいまいな部分をなくしましょう。
また、オーナーが自分の目で確認をすることが重要です。
管理するシェアハウスを見学したり、契約書面やハウスルールなどを見せてもらったりしましょう。
※管理会社の選定については、下記のコンテンツをご覧ください。
シェアハウス運営の失敗例 ⑥ 「入居者契約」
入居者契約書・ハウスルールの確認が重要
管理会社と管理契約をする前に、入居者用の賃貸借契約書やハウスルールを確認するようにしましょう。
シェアハウスでは、運営を管理会社に委託するケースが多くなり、管理会社は入居者と「定期借家契約」をむすぶのが一般的です。
入居者の審査・契約や入居後のやり取りも、そのほとんどを管理会社が行います。
そのため、オーナーは管理会社が入居者とどのような賃貸借契約をしているかがよくわかりません。
入居者用の賃貸借契約書やハウスルールを確認することで、管理会社の考え方やスタイルを知ることができます。
通常は、シェアハウス管理の実績が長く、経験が豊富な管理会社ほど契約書やルールの記載が細かくなります。
入居者契約書・ハウスルールに関する失敗例
- 入居者契約書・ハウスルールに目を通さない
- 定期借家契約の体裁を確認しない
- 疑問や不明な点を確認しない
定期借家契約は、普通の賃貸借契約とは書面が異なります。
必要な内容が欠けていると、一般的なアパートやマンションの契約と同じ契約とみなされてしまい、その効力を発揮することができなくなりますので注意が必要です。
内容に疑問や不明な点があれば質問して、管理会社の回答を確認しましょう。
たとえば、家賃の滞納に関する記載を確認して、どのように回収するのかを聞いてみるのもよいでしょう。
こういった対応を見ることで、管理会社を見極める参考にもなります。
シェアハウス運営の失敗例 ⑦ 「トラブル対応」
シェアハウスは共同生活ですので、入居者同士のトラブルが起こることがあります。
トラブルにどのように対処するかも管理会社によって変わってきます。
トラブル対応の失敗例
- 入居者契約書・ハウスルールに記載がない
- 入居者同士でトラブル解決を促している
- ハウスの担当者の力量にまかされている
- 管理会社内でトラブル対応・事例が共有されていない
シェアハウス内でよくあるトラブルはだいたい決まっています。
管理会社でトラブル事例が共有されマニュアル化されていれば、大きな問題に発展することはほとんどありません。
管理会社に対しては、過去のトラブル事例やその対応などを聞いてみるのもいいでしょう。
まとめ(シェアハウス運営の失敗例)
シェアハウス経営は、アパートやマンションの管理運営とは異なる点も多数あります。
そのため、ポイントをおさえないと失敗してしまいます。
「失敗例」を参考にして、シェアハウス運営のリスクを最小限におさえることが重要です。
- 立地の選定 (利便性)
- 間取り (個室と共用部のバランス)
- 設備 (必要な数とスペック)
- 契約内容・条件 (詳細に確認する)
- 管理会社・体制 (見極める)
- 入居者契約 (ハウスルールも確認する)
- トラブル対応 (管理会社の実力を見極める)
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