「空き家」をシェアハウスにするメリットを解説します(相続・オーナー向け)
Ⓒシェアハウス経営の教科書

 

総務省の調査によると、2018年の全国の空き家は、約349万戸(賃貸用・売却用を除く)にも及んでいます。

不動産の所有者の中には、空き家のメンテナンスに悩んでいる人も多いのではないでしょうか。

 

空き家を活用する手段の一つとして、「シェアハウス」が注目されています。

たとえば、5LDKの建物を「5人で利用するシェアハウス」にリノベーションするのです。

オーナーは空き家を活用しながら賃料収入を得ることができ、固定資産税の支払いや生活費をまかなうことが可能になります。

 

このコンテンツでは、空き家をシェアハウスにするメリットについて解説しています。

筆者は、シェアハウスの管理会社で空き家をシェアハウスにリノベーションする事業にもたずさわってきました。

その経験から、利点だけでなく注意点やリスク(デメリット)もお伝えしています。

様々な事例も含めて見ていきましょう。

 

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空き家をシェアハウスにするメリット

個室ごとに賃貸するシェアハウスは様々な運営メリットがあります

 

首都圏など若い人が多く住む地域に空き家を所有していれば、「シェアハウス」として活用できる可能性があります。

(関連コンテンツ : シェアハウスとは

 

たとえば、都心部への通勤や通学が可能な地域であり、物件から鉄道の最寄り駅まで徒歩10分以内であれば、シェアハウスに住みたいという若者からの需要が見込めます。

 

シェアハウスにするメリット(空き家)
  • 賃料収入が得られる
  • 入居率が高く安定した運営ができる
  • 人が住むことで建物の老朽化を予防できる
  • いつでも運営をやめることができる
  • 投資物件として売却も可能になる

 

もう少し詳しく見ていきましょう。

 

賃料収入が得られる

空き家をシェアハウスとして貸し出せば、オーナーは賃料収入を得ることができます。

一般的には、戸建として賃貸するよりも高い家賃を得ることができます。

 

入居率が高く安定した運営ができる

シェアハウスの入居者は、20代~30代が中心です。

初期費用をおさえながら住人同士が交流して楽しく住めるシェアハウスは、人気があり高い入居率で安定した運営が可能になります。

ファミリーに賃貸する「戸建て」よりも空室リスクが低いことも特徴です。

個室を一人一人に賃貸することで、シェアハウス全体が空室になるというリスクを防ぐことができるのです。

 

人が住むことで建物の老朽化を予防できる

人が住まない建物は老朽化が早くなります。

シェアハウスとして賃貸することで、収入を得ながら建物を維持することができます。

 

いつでも運営をやめることができる

シェアハウスの大きなメリットのひとつは、「いつでも運営をやめられる」ということです。

入居者とは「定期借家契約」をむすぶため、期限がくれば退去してもらえます。

たとえば、将来的にオーナーが土地や建物を利用したり活用したりする必要が出てきたときなどに、その後の計画が立てやすくなります。

物件を兄弟姉妹などで共有している場合でも、手続きを比較的スムーズに行なうことができます。

 

投資物件として売却も可能になる

シェアハウスとして安定した運営ができていれば、オーナーにとっては「投資物件として売却する」という選択肢も出てきます。

入居者から人気があり賃料が高ければ「高利回りの物件」となり、高値での売却も可能になります。

 

 

シェアハウスなどの「住宅市場を活用した空き家対策モデル事業(国土交通省)」は国も支援をしています。

 

住宅市場を活用した国の空き家支援の写真画像

住宅市場を活用した国の空き家支援

 

 

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空き家をシェアハウスにする際の注意点

注意を促す人の写真画像

シェアハウスにする際の注意点も確認しましょう

 

空き家をシェアハウスとして運営する際には、注意が必要な点もあります。一つずつ見ていきましょう。

 

築古の物件は工事費がかかる

築年数が経過した建物をシェアハウスにする場合には、内装工事だけでなく大掛かりな改修工事が必要になることがあります。

たとえば、屋根の葺き替えや外壁の工事をしなければならないケースも出てきます。

ただし、シェアハウスにリノベーションをする場合は、「耐震補強工事」も含めた総合的な工事を行なうため、オーナーと入居者の双方にとって安心・安全な物件にすることができます。

 

管理会社との契約条件によりすぐに解約できないことがある

シェアハウスの運営は、専門の管理会社に委託するケースも多くなります。

オーナーは、管理会社との契約条件によってはすぐに解約できないこともあります。

 

オーナーが同居できない場合もある

シェアハウスの運営は、オーナーと同居するケースは少ないといえます。

建物内や敷地内にオーナーが同居することはまれであり、建物全体をシェアハウスとして運用することが一般的です。

 

 
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空き家を放置する「リスク」(オーナー向け)

古い倉庫・建物の写真画像

空き家を放置すると様々なリスクが高まります

 

2014年にいわゆる「空き家法」(空家等対策の推進に関する特別措置法)が施行されました。

これは、危険な空き家について自治体が対応することを可能にした法律です。

空き家の持ち主について市区町村に固定資産税の納税記録を照会して特定して立ち入り調査権限をすることを認め、倒壊の恐れがある等の「特定空き家」については撤去や修繕を命じ、行政代執行を可能にすることを規定している。

空家等対策の推進に関する特別措置法(概要)の写真画像

特別措置法の概要(国土交通省)

(参考)

特定空き家は「解体」や「増税」の可能性も

このいわゆる「空き家法」に沿って、各自治体が「条例」を制定することができます。

危険な「特定空き家」と認定されると、行政により解体されて所有者は費用を請求される可能性があります。

その土地に対する「税の特例」がなくなり、その結果、所有者は最大で6倍の固定資産税を負担しなければならない場合があります。

 

行政代執行・略式代執行 取組事例集(総務省)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000595224.pdf

 

危険な特定空き家の認定までには至らなくても、空き家は建物や庭などのメンテナンスの手間や費用がかかります。

たとえば、建物のメンテナンス工事を怠っていると、屋根の瓦や外壁、草木などが近隣に被害を及ぼすこともあります。

瓦が飛んで通行人に当たってしまったら、建物のオーナーは損害賠償責任が生じてしまいます。

 

また放置された空き家は、犯罪等に利用される可能性もあります。

たとえば、不審火による火災、不審者の侵入・占拠などのほか、動物(アライグマ、ハクビシンなど)のすみかになることもあります。

自治体によっては、建物の解体費用を助成する制度もありますので、確認しておくのもよいでしょう。

 

空家法施行後、全国の空き家対策の状況(国土交通省)

国土交通省が地方公共団体を対象にした「空家対策の推進に関する特別措置法」の施行状況について、調査結果を公表しています。

全国の市区町村(1,741)のうち、空家等対策計画は 1,332 市区町村(77%)で策定されています。

また、法定協議会は 907 市区町村(52%)で設置されています。

法律の施行から令和2年度末までに、空家法に基づく措置が、27,322 件の特定空家等に講じられています。

 

助言・指導 勧告 命令 行政代執行  略式代執行 合計
24,888 件 1,868 件  215 件 92 件  259 件  27,322 件

 

法律の施行から令和2年度末までに、空家法に基づく措置や市区町村による空き家対策によって、112,435 件の管理不全空き家の除却等(除却、修繕、繁茂した樹木の伐採、改修による利活用、その他適切な管理)が進んでいます。

 

空家法の措置により除却等がなされた
管理不全空き家(特定空家等を含む。)
市区町村による空き家対策の取組により
除却等がなされた管理不全空き家
合計
15,161 件 97,274 件 112,435 件

 

空き家の現状(国土交通省の資料)の写真画像

空き家の現状(国土交通省)

 

土地の登記が義務化へ(相続3年内に)

相続や住所・氏名を変更した時に、土地の登記を義務付ける法改正案が検討されています。(毎日新聞

相続から3年以内に申請しない場合に、10万円以下の過料が科されるとのこと。(2023年度にも施行)

 

土地の登記が義務化されれば所有者の情報が明確になり、税金の不払いや空き家の放置をすることはできなくなるでしょう。

 

また法案では、相続開始から10年を過ぎると「法定相続割合」で分けるようにするとのこと。

つまり、「遺産分割協議の期間」が設定され、相続人が複数いる場合は、土地や建物を「共有」することになります。

 

親の自宅を相続しても子が住まなかったり、子同士(兄弟姉妹)で意見が分かれて放置したりした空き家を、シェアハウスなどで有効活用することもできます。

家賃を受け取ることができれば、仮に土地・建物が共有でも金銭での分配が可能になります。

また、相続人の意見がまとまるようならタイミングを見て「売却」を検討するのも良いでしょう。

 

空き家のニュース

ニュースのイラスト:写真画像

空き家の関連ニュースをまとめました

 

空き家の「最新ニュース」

2022年9月

日本経済新聞によると、2023年には住宅の総数が世帯数に対して、約1000万戸も余る見通しとのことです。

家余りが深刻化し、すでに約850万戸ある空き家問題が一段と拡大しかねません。

シェアハウスも含め、既存の住宅を有効活用するがカギとなりそうです。

 

家余り1000万戸時代へ 「住宅リストラ」待ったなし(日本経済新聞  nikkei.com)

 

空き家のニュース ①(全国の市区町村別ランキング)

日本経済新聞が全国の空き家数を市区町村別にランキングしています。

最も空き家数が多いのは、東京都世田谷区。(約49,000戸)

2位は、東京都大田区。(約48,000戸)

(総務省の2018年の住宅・土地統計調査の確定値より)

 

世田谷区内は東急世田谷線沿線や祖師谷地区など、戸建てや比較的小さい集合住宅が集まる地域で65歳以上の人口の割合が高い。

区によると、空き家はこうした地域で目立つという。
区の担当者は、「旧耐震基準住居も多く、区も対策を講じている」と説明する。

日本経済新聞(2020.1.12)

 

空き家のニュース ②(危険な空き家の急増)

NHKのニュースによると、倒壊などのリスクがあるいわゆる「危険な空き家」の撤去に、全国の自治体が投じた費用は合わせて3億8000万円あまりにのぼり、3年間で17倍と急増していることがわかりました。(2018年度)

2018年の総務省の調査では、空き家は、849万戸あり一貫して増え続けています。

こうした空き家の中には、長い間管理されず放置されたままの「危険な空き家」が増えているものとみられます。

たとえば、台風の影響で建物の外壁が崩れたケースや、屋根瓦が道路に落下したケース、それに建物が放火されて火災が発生したケースなどがありました。

 

「危険な空き家」自治体の撤去費用 3年間で17倍に(NHKニュース)

危険な空き家!解体の瞬間(FNNプライムオンライン 2022年)

 

空き家のニュース ③(大阪府営住宅シェアハウス)

2021年9月

大阪府営住宅を使った初のシェアハウスが、大阪府茨木市に開設されました。

 

 

空き家のニュース④(岐阜市で女性向けシェアハウスに)

2021年9月

岐阜女子大学の学生が空き家を女性向けシェアハウスに改修しました。

築30年ほどの木造2階建て、延べ床面積は約100平方メートルの空き家とのこと。

空き家の再生を手がける不動産賃貸会社が大学や市の空き家の取り組みを知り、シェアハウスのアイデアなどの協力を依頼。

学生15人が中心となり、リビングをおしゃれなカフェ風にしたり、ポップな色合いの個室を作ったりしました。

洗面所は広めにして洗面台を二つ作るなど、学生の意見を参考にしたそうです。

 

空き家が「女性向けシェアハウス」に変身、女子大生のアイデア満載(朝日新聞デジタル)

 

 

空き家のニュース⑤(空き家問題の実態調査)

空き家情報を扱っているアニスピホールディングスが「空き家問題の実態調査」を実施しました。

調査結果の中には「シェアハウス」への言及もあり、空き家の活用としてシェアハウスが有効な手段の一つとなっていることがうかがえます。

詳細は、下記のコンテンツで解説しています。

 

 

空き家のニュース⑥(宮城県石巻市でシェアハウス事業)

宮城県の石巻市では、空き家を活用して中古物件を改築したシェアハウスの新事業を行う企業もあります。

新型コロナウイルス禍で多様化する生活様式に対応し、旅先で働く「ワーケーション」や多地域居住を視野に入れた取り組みとのこと。

商店街や駅に近い住宅街に立地し、築35年以上の空き家を使い、共用キッチンや風呂、トイレなどをリノベーション。

賃料は月3万~5万円。

これまでの賃貸物件より入退居や契約のハードルを下げ、初期費用や違約金は不要としています。

 

シェアハウス事業 新展開 空き家を改築、賃貸 石巻地方 | 河北新報オンラインニュース

 

空き家のトラブル事例(全国)

レッドカードの写真画像

全国の空き家トラブル事例をまとめました

 

2021年10月
熊本市北区植木町で空き家1棟全焼(テレビ熊本)

 

2020年1月
空き家分譲マンション 行政代執行で解体 外壁崩落、危険と判断 滋賀・野洲市 | 毎日新聞

 

2019年8月 家を相続したくない(NHK おはよう日本)

 

2019年7月 奈良県 桜井市が危険な空き家を解体へ
https://www.nara-np.co.jp/news/20190706104527.html

 

2019年6月 6年放置され倒壊の恐れ、空き家撤去で行政代執行 特措法で愛知県内初
(中日新聞)

 

2018年12月 宮城県の空き家解体代執行(仙台市)

 

2018年11月 長崎市が危険な空き家解体で代執行
https://www.asahi.com/articles/ASLCQ5DCDLCQTOLB00L.html

 

2018年10月 千葉市初、代執行で空き家撤去 特措法に基づき
https://www.chibanippo.co.jp/news/local/538210

 

2018年10月 横浜市、空き家解体の代執行停止 所有者、自主解体の意向
https://www.kanaloco.jp/article/entry-37425.html

 

2012年4月 “空き家”が街をむしばむ(NHK クローズアップ現代)

 

「空家等対策の推進に関する特別措置法」の情報・リンク集(国土交通省)

法令・告示

『法律』 〔H27年2月26日施行(9条2項~5項、14条、16条:H27年5月26日施行)〕
 空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号) (法律概要)

『省令』
空家等対策の推進に関する特別措置法施行規則(平成27年総務省・国土交通省令第1号)

『告示』(基本指針) 〔令和3年6月30日改正〕
 空家等に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための基本的な指針(平成27年総務省・国土交通省告示第1号) (基本指針概要)

『ガイドライン』 〔令和3年6月30日改正〕
「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン) (ガイドライン概要)

『空き家対策の現状』
空き家対策の現状

 

 

空家等の所有者等に関する情報の利用等(第10条関係)

■固定資産税の課税のために利用する目的で保有する空家等の所有者に関する情報の内部利用について
■空き家所有者情報の外部提供に関するガイドライン (概要) (詳細)

 

 

財政上の措置及び税制上の措置等(第15条関係)

財政上の措置

■空き家再生等推進事業(平成20年度~) (概要)
■空き家対策総合支援事業(平成28年度~) (概要)
■住宅市場を活用した空き家対策モデル事業(令和3年度~) (概要) (詳細)
■空き家対策の担い手強化・連携モデル事業(平成30年度~令和2年度) (概要) (詳細)
■先駆的空き家対策モデル事業(平成28年度~平成29年度) (概要) (詳細)
■空き家管理等基盤強化推進事業(平成25年度~平成27年度)(詳細)
■空き家所有者情報提供による空き家利活用推進事業(平成29年度) (概要) (詳細)

 

税制上の措置

■空家の除却等を促進するための土地に係る固定資産税等に関する所要の措置(平成27年度税制改正)(概要) (地方税法) 
■空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)(平成28年度税制改正)(概要) (詳細) 

 

法の施行状況等

空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について(R4.3.31時点)
空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について(詳細版:R元.10.1時点)
都道府県別等の調査結果(R4.3.31時点) 
空家等対策計画策定済み市区町村一覧(R4.3.31時点) 
法定協議会設置済み市区町村一覧(R4.3.31時点) 

 

 

空家等対策に係る関連施策・支援メニュー等

■空家等対策に係る関連施策等(令和3年7月版) (一覧) (個票)
空き家対策の支援メニュー等一覧(令和2年度末時点)
空き家・空き地バンク総合情報ページ

 

空き家対策に関する情報提供

 空き家対策に関する情報提供
・空き家の現状と課題
・地方公共団体の空き家対策の取組事例
・空き家対策における事例集
・その他の制度等
・地方公共団体における空家調査の手引き
・地方公共団体における空家等対策に関する取組状況
・地方分権改革に関する情報提供
・最後の相続放棄者の取扱い
・空家等対策に係る災害対策基本法の規定に基づく措置について
・空き家対策の推進を目的とした固定資産税の住宅用地特例に関する取組について
・在留届照会フォーマット

 

まとめ

オーナーは、建物が活用できるうちに空き家の解決策を考えておく必要があります。

シェアハウスなどの賃貸住宅として運用することも有効な手段といえるでしょう。

 

Ⓒシェアハウス経営の教科書

 

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