シェアハウスはアパートやマンションと同様の賃貸住宅業であり、それに関連した法律が適用されます。
ただし、建築基準法ではシェアハウスは寄宿舎に該当する、といった特別な面も持っていますので注意が必要です。
また、オーナーや管理会社など、立場によっては関連する法律も変わる場合があります。
コンプライアンスに沿った運営・管理を行うためにも、適用される法律やその内容を知っておくことは重要です。
このコンテンツでは、「シェアハウスの経営や管理に関連した法律」についてまとめました。
目次(もくじ)
サブリース新法(賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律)
シェアハウスの物件は管理に独自のノウハウが必要なため、管理会社に委託するオーナーも多くいます。
管理会社が物件を一括借上げし、入居者に転貸(サブリース)するのが一般的です。
一括借上げの際に物件オーナーと管理会社で結ぶ契約が「マスターリース契約」です。
管理会社(サブリース業者)とのマスターリース契約について規定したのが、いわゆる「サブリース新法」です。(賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律)
この法律では、一定規模の賃貸住宅管理業者の登録も義務付けています。(国土交通省)
またオーナーが管理契約を結ぶ際には、業者による重要事項説明を義務付けています。
改正民法(2022年4月に施行)
2020年に改正民法が(施行)されたのに続き、新たな改正民法が2022年(令和4年)4月1日より施行されます。
近年の民法改正では、シェアハウスを含めて賃貸住宅業に大きくかかわる内容となっています。
- 成人年齢(18歳)について
- 保証人(連帯保証人)について
- 原状回復義務について
オーナーや管理会社にとっては、新しい規定を取り入れた賃貸借契約書の作成も必要になります。
改正民法については、下記のコンテンツで詳しく解説しています。
重要なポイントに加え、国土交通省が作成した「賃貸借契約書のひな形」も掲載しています。
借地借家法と旅館業法
シェアハウスとゲストハウスは混同されることがあります。
言葉の定義が難しいということもありますが、根本的には大きな違いがあり下記のように分類できます。
ゲストハウス・・・宿泊施設(旅館業法など)
一般的にシェアハウスは賃貸住宅として運営されており、借地借家法が適用されます。
入居者と定期借家契約を結ぶことも多く、正確な理解と運用が必要です。
一方、ゲストハウスは宿泊施設としての運営が多く、旅館業法が適用になります。
(賃貸住宅と宿泊施設の機能を併用している施設もあります。)
なお、ウィークリーマンションは宿泊業であり(旅館業法)、いわゆる民泊も宿泊業として住宅宿泊事業法が適用されます。
住宅宿泊事業法(民泊新法)とは? | 民泊制度ポータルサイト「minpaku」 (mlit.go.jp)
その他、下記のコンテンツで詳しく解説しています。
空き家法
2014年にいわゆる「空き家法」(空家等対策の推進に関する特別措置法)が施行されました。
これは、危険な空き家について自治体が対応することを可能にした法律です。
総務省の調査によると、2018年の全国の空き家は、約349万戸(賃貸用・売却用を除く)にも及んでいます。
このいわゆる「空き家法」に沿って、各自治体が「条例」を制定することができます。
条例によって危険な「特定空き家」と認定されると、行政により解体されて所有者は費用を請求される可能性があります。
その土地に対する「税の特例」がなくなり、その結果、所有者は最大で6倍の固定資産税を負担しなければならない場合があります。
相続や住所・氏名を変更した時に「土地の登記を義務付ける」という、不動産登記法の改正案も検討されています。
相続から3年以内に申請しない場合に、10万円以下の過料が科されるとのこと。(2023年度にも施行)
土地の登記が義務化されれば所有者の情報が明確になり、税金の不払いや空き家の放置をすることはできなくなるでしょう。
また法案では、相続開始から10年を過ぎると「法定相続割合」で分けるようにするとのこと。
つまり、「遺産分割協議の期間」が設定され、相続人が複数いる場合は、土地や建物を「共有」することになります。
「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン概要)
空家等対策の推進に関する特別措置法 関連情報 - 国土交通省 (mlit.go.jp)
空き家については、下記のコンテンツで詳しく解説しています。
家賃滞納・督促に関連した法律
オーナーの自主管理のシェアハウスであれば、家賃滞納の対応はオーナー自ら行います。
管理会社がオーナーから物件を一括借上げして入居者に転貸している場合(サブリース方式)、入居者にとっての「貸主」は管理会社となります。
この場合は、管理会社が滞納賃料の回収をすることは問題がありません。
しかし、オーナーと管理会社がマスターリース契約(サブリース方式)ではなく「単なる管理契約」を締結している場合は、貸主はオーナーとなります。
滞納賃料の回収は貸主が行うことが原則ですので、管理会社が代理人として報酬を得て法律事務を行うと弁護士法に違反する可能性があります。
代理人の立場でできるのは、通知・督促状程度となり、契約解除を内容とするもの(内容証明郵便・訴訟の提起等)まではできません。
オーナーや管理会社は、お互いの契約内容や権限について確認して入居者の家賃滞納の対応を決めておくことが重要です。
(参考)
賃貸不動産管理をめぐるトラブル等の現状(国土交通省)
http://www.mlit.go.jp/common/000044505.pdf
シェアハウスと建築基準法
2019年6月に建築基準法(改正)が施行されました。
既存の建物をシェアハウス等に転用しやすく規制が緩和されています。
ただし、消防法等の関係規定については従前のままです。
また、シェアハウスは各自治体によっても規制の内容が異なりますので、検討の際は役所への確認が大切です。
シェアハウスに関連する建築基準法や自治体の規制については、下記のコンテンツで詳しく解説しています。
外国人の入居に関連した法律
シェアハウスは短期間の入居が可能なこともあり、外国人を受け入れることも多くあります。
外国人と賃貸借契約を結ぶ際には、契約時にビザや身分証明書を確認することが不可欠です。
外国人のなかには偽造の身分証明書などを所持しているケースもあります。
不法滞在・不法就労の人と契約しないためにも、在留カードの確認は厳重に行う必要があります。
在留カードの確認方法については、下記のコンテンツで詳しく解説しています。