シェアハウスに興味がある人や入居している人の考えや意見については、普段はなかなか耳にする機会がありません。
シェアハウス経営に関わるオーナーや管理会社にとっては、確認しておきたい情報ですよね。
実は、シェアハウスのポータルサイトである東京シェアハウスが「シェアハウスに関するアンケート」を実施しています。
シェアハウス運営・管理の経験がある筆者から見ても、興味深い内容でした。
このコンテンツでは、アンケートの回答結果からうかがえる「シェアハウスを利用する人々の意識や考え」をまとめました。
シェアハウス経営や管理に生かすことができ、オーナーや管理会社にとっても有益な情報といえるでしょう。
入居者の考えを知ることで、実際の需要に合ったシェアハウス運営が可能になり、安定した経営にもつながります。
目次(もくじ)
- 1 シェアハウスに関するアンケートの内容
- 2 「シェアハウスへの入居を考えたきっかけ」の回答
- 3 「シェアハウス生活に期待すること」の回答
- 4 「シェアハウスの交流」についての回答
- 5 「シェアハウスの魅力」についての回答
- 6 「シェアハウスの欠点」についての回答
- 7 「シェアハウスでのトラブル」についての回答
- 8 「シェアハウスのハウスルール」についての回答
- 9 「シェアハウスでのプライバシー」についての回答
- 10 「シェアハウスのコミュニケーション」についての回答
- 11 「シェアハウスは一人暮らしより節約できるのか」の回答
- 12 アンケート結果からの考察(管理会社・オーナー向け)
- 13 「入居希望者の気持ちを理解する」ことが重要なポイント
- 14 アンケート結果の注意点
シェアハウスに関するアンケートの内容
●対象 : 東京シェアハウス(ポータルサイト)の利用者
●期間 : 2020年3月〜2021年2月
●結果 : シェアハウス未経験者、経験者、合わせて663名から回答
回答者の属性
- シェアハウスの経験がない 約70%
- シェアハウスの経験がある 約30%
- 男性 約45%
- 女性 約55%
アンケートのテーマ
- シェアハウスへの入居を考えたきっかけ
- シェアハウス生活に期待すること
- シェアハウスの交流について(経験者)
- シェアハウスの魅力について
- シェアハウスの欠点について
- シェアハウスでのトラブルについて
- シェアハウスでのプライバシーについて
- シェアハウスでのコミュニケーションについて
- シェアハウスは一人暮らしより節約できるのか
「シェアハウスへの入居を考えたきっかけ」の回答
以前から興味があった (25%)
ネットなどで知り興味を持った (23%)
寮などで共同生活を経験したことがある (約21%)
※1つ選択
シェアハウスの入居(きっかけ)に関しては、興味のある人はもちろんのこと、寮など共同生活の経験者が検討していることが伺えます。
シェアハウスのポータルサイトには、共同生活に理解を示す人が訪れていると言えるでしょう。
「シェアハウス生活に期待すること」の回答
生活費の節約 (約80%)
交友関係を広げられる (約50%)
一人暮らしの部屋にはない設備 (約40%)
※複数選択可
トップの「生活費の節約」には 80% 以上の人が票を入れており、金銭面でもシェアハウスを魅力的に感じていることが分かります。
「シェアハウスの交流」についての回答
実際にシェアハウスに入居した経験のある方を対象に、「交流頻度」と「交流内容」、そして「交流頻度に関するイメージとのギャップ」について調査しています。
入居者同士の交流頻度
あいさつ程度 (38.7%)
月1回イベントがある (24.7%)
年に数回イベントがある (17.5%)
交流内容
シェアハウス内での食事会 (76.1%)
誕生日会などのお祝い (40.3%)
ショッピングなど外出 (34%)
屋外でのイベント (24.5%)
シェアハウス入居前のイメージとのギャップ(交流頻度)
イメージ以上 (21.5%)
イメージ通り/変わらない (60.2%)
イメージ以下 (18.3%)
シェアハウスごとに交流の内容や頻度は様々です。
また、シェアハウスの交流内容は、「イベント」というよりは「日常的な会話などの気軽な交流」が多いのが実情です。
そんな風に簡単なコミュニケーションであっても、一人暮らしじゃ味わえないもの。
忙しい日々の中でも適度に誰かと繋がっていられる生活が、シェアハウスの魅力といえます。
「シェアハウスの魅力」についての回答
シェアハウスは共同生活なので、「実際に住んでみたら期待と全然違った…」となると退去につながりやすくなってしまいます。
「シェアハウスの魅力」に関するイメージと、実際の経験者の声との比較は、とても参考になる情報といえます。
主なアンケート項目
- 生活費を節約できる
- 家具など生活アイテムが揃っている
- 交友関係が広がる
- 一人では手の届きにくい設備が使える
- 国際交流できる
アンケートの結果を見ると、シェアハウスに入居したことのない方がイメージする”シェアハウスの魅力”と、実際に入居経験のある方が感じた魅力の順位が、ほぼ一致していました。
「金銭面でのメリット」「すぐに生活できる環境」「交友がひろがる共同生活」「充実した設備」「外国人との交流」など、基本的なシェアハウスの魅力に関する理解がすすんでいることがうかがえます。
また、「シェアハウスは一人暮らしより安心」という意見も多く見られたとのこと。
「災害時に一人でないことは心強い」「何かあった時、常にすぐ近くに誰かしらいる」など、普段の防犯だけでなく災害などイレギュラーな事態への対応が心強い点も、シェアハウスの魅力と言えます。
「シェアハウスの欠点」についての回答
シェアハウスに入居したことがない方には「欠点としてイメージすること」を、入居経験のある方には「実際に住んでみて感じた欠点について」アンケートを行なっています。
上位3位の結果(両者共に)
- 共同生活ゆえのトラブル
- 他の入居者の生活スタイルに気になることがある
- プライバシーを確保しにくい
シェアハウスは共同生活ですので、共用部の衛生面や生活音に関するトラブルは起こることがあります。
また、他人の目が気になることもあるでしょう。
ただ、アパートやマンションであっても一定のトラブルは発生します。
シェアハウスだけが特別ではないことは理解しておきましょう。
「シェアハウスでのトラブル」についての回答
シェアハウスに入居経験のある方を対象にした「シェアハウスでのトラブル」についてのアンケートでは、実際にトラブルに遭遇した人は全体のおよそ3割とのこと。
70.8%の人が「トラブル経験は無い」と答えています。
一方で、シェアハウスでトラブル経験がある人の回答を見ると、「騒音問題」「掃除・家事の問題」「人間関係」に関する回答が目立つ結果に。
異なる価値観や生活態度がぶつかり合ってトラブルになることがあるようです。
「シェアハウスのハウスルール」についての回答
シェアハウスには共同生活を快適に送るため、管理会社やオーナーが定めた「ハウスルール」が存在します。
主なハウスルールについてアンケート結果を見てみましょう。
- 私物を置かない
- 深夜は生活音へ配慮する
- 清潔に保つ など
- 汚したらすぐに清掃する
- 使ったものは綺麗にして元にもどす
- 交代制で掃除とゴミ捨てを行う など
来客・宿泊についてのハウスルール
- 1週間前に事前連絡が必要
- 当日SNSのグループでハウスメイトに伝えればOK
- 宿泊代として一人につき千円 など
その他のルール
- 「ハウス内の公用語は英語」(国際交流に特化したハウス)
- 「ただいま、おかえりを必ず言うようにしましょう」(コミュニティ重視のハウス)
- 「あだ名で呼び合う」などのユニークなルールも
また、シェアハウスによっては「ハウスルール」が特に定められていない物件もあります。
「シェアハウスでのプライバシー」についての回答
プライバシー確保のイメージについて、シェアハウス経験者に入居前・入居後のギャップの有無を聞いています。
その結果、「イメージ以上」「イメージ通り」という回答が合わせて9割を占めています。
また、シェアハウス未経験者にとっては、共同生活においてどれくらいプライバシーを保てるのか心配になる方も多いようです。
プライバシーに関する疑問について、主なものが紹介されています。(下記)
- 個室に鍵はついているのか?
- 個室の壁の厚さは?防音できるのか?
- 盗難の心配は?
- 部屋に友達を呼んでもよいか?
シェアハウスの入居者募集の際には、オーナーや管理会社は上記のような「入居希望者の疑問」について丁寧に対応することが大切です。
詳細は下記のコンテンツで詳しく解説しています。
「シェアハウスのコミュニケーション」についての回答
アンケートには、シェアハウスが未経験の人の疑問・不安が寄せられています。
- ハウスの内覧時に入居者に会える?
- 生活リズムや気の合う入居者と出会うには?
- 入居者と仲良くなる方法は?
- 入居者同士のトラブルは?
入居希望者は、上記のような疑問を持ちながら物件の問い合わせや見学をしています。
オーナーや管理会社は、その疑問や不安に一つ一つ丁寧に答えてシェアハウスの魅力を伝えていくことが重要になるでしょう。
「シェアハウスは一人暮らしより節約できるのか」の回答
シェアハウスが未経験の人にとって、「シェアハウスは一人暮らしより節約できるのか」というのはとても気になる内容のようです。
シェアハウスの期待や魅力に関する先のアンケートでも、「節約」はどちらも一位にランクインしていました。
具体的な疑問については、主に下記のものがあったようです。
- 初期費用はどのくらいかかるのか?
- 共益費が高いのはなぜか?
- もっと節約したいがキャンペーンなどはあるのか?
節約をしたい入居希望者も多く、上記のような疑問を持ちながら物件の問い合わせや見学をしています。
オーナーや管理会社は、費用の面も含めたシェアハウスの魅力を伝えていくことが重要になるでしょう。
アンケート結果からの考察(管理会社・オーナー向け)
このアンケートの結果を踏まえて、シェアハウスのオーナーや管理会社が参考にすべきポイントを見ていきましょう。
シェアハウス入居のきっかけ
シェアハウスのポータルサイトの訪問者は、シェアハウスの未経験者を含めて「共同生活」を前提にしている人が多いことが伺えます。
このことは、ポータルサイト以外のシェアハウス物件のサイトでもおそらく同様でしょう。
基本的には「ネットからの流入」がほとんどと言えるでしょう。
シェアハウスでは生活費の節約ができる
アンケート結果からは、生活費の節約の面でもシェアハウスへの期待が見て取れます。
物件内には主な家電や家具が備え付けてあり、水道光熱費やインターネット費用も固定されているという物件も多くなっています。
「引越しや買い物などの初期費用を節約できる」「毎月の生活費もおさえられる」というメリットが注目されているといえるでしょう。
シェアハウスでは交流ができる
シェアハウスの交流は、運営会社や入居者によっても異なります。
たとえば、管理会社が積極的にイベントを開催したり設備を充実させたりすれば、ハウス内の交流は起きやすくなります。
そういったシェアハウスには、イベントや交流が好きな入居者が集まる傾向があります。
ただし、シェアハウスの運営は、交流が盛んであれば良いとは限りません。
イベントが重なれば、その分トラブルも起きやすくなります。
入居者の中には静かに過ごしたい人もいますので、運営・管理には様々な入居者への配慮が重要になります。
シェアハウスに魅力を感じる部分
アンケート結果では、シェアハウスの経験者・未経験者ともに回答がほぼ一致していました。
シェアハウスの入居前のイメージと実際の生活にはギャップがなくなっているのです。
これは、シェアハウスの運営側にとっては重要なポイントです。
オーナーや管理会社がしっかりと発信すれば、シェアハウスの魅力が伝わると言えます。
ただし、運営側が発信した内容どおりにシェアハウス管理がなされている、ということが大前提なのは言うまでもありません。
シェアハウスの欠点も知ってもらう
共同生活には小さなトラブルはつきものです。
オーナーや管理会社は、迅速な対応が求められます。
また、入居前と後のギャップができるだけないように、入居希望者には必ず内覧してもらいましょう。
最近ではオンライン内覧も増えていますが、実際に物件へ行くことによって確かめられる点も多くあります。
近隣の様子や駅までの道のりなども確認できます。
ハウス内の空気感も現地へ行かなければ感じられないことです。
実際にハウスで生活するイメージを持ってもらうためにも、物件の内見は重要なポイントです。
シェアハウスのトラブルを理解しておく
できるだけトラブルを防ぐためには、オーナーや管理会社の対応が重要になります。
入居前の面談・内覧を活用する
入居を決める前にオーナーや運営者との面談、内覧の機会を設けましょう。
シェアハウスの雰囲気やコミュニティの居心地の良さを感じてもらいます。
入居後に「価値観の違い」を感じるなどのトラブル防止することができます。
また、ハウスでのマナーやルールなどを確認し、納得した上で入居を決めてもらうことが大切です。
オーナー・運営者に相談してもらう
些細な問題は入居者同士で解決してもらおうと考えがちですが、筆者の経験からおすすめしません。
その場はうまく収まっても、入居者の間でモヤモヤが残ってしまうこともあります。
トラブルを防いだり解決したりするために決めてあるのが「ハウスルール」です。
入居者に困ったことがあったら必ず運営者に相談してもらい、ハウスルールに則って解決していくことが重要です。
「ハウスルール」設定の重要性
特に女性専用シェアハウスではその傾向が強いようです。
オーナーや管理会社によっては比較的自由に出入りできるシェアハウスもあります。
ただし防犯・セキュリティ面の課題もあるので注意が必要です。
その他のルール
ハウスルールはその物件のコンセプトやオーナー・管理会社の方針によっても異なります。
特にハウスルールを定めなかったり、入居者の話し合いでルールを決めたりするというシェアハウスもあります。
貸す側はルールを周知し、借りる側もよく理解して入居することが重要です。
プライバシーの確保について
- 個室に鍵はついているのか?
- 個室の壁の厚さは?防音できるのか?
- 盗難の心配は?
- 部屋に友達を呼んでもよいか?
シェアハウスの入居者募集の際には、オーナーや管理会社は上記のような「入居希望者の疑問」について丁寧に対応することが大切です。
詳細は下記のコンテンツで詳しく解説しています。
コミュニケーション(交流)について
シェアハウスが未経験の人は、共同生活の楽しみと同時に不安も持っています。
オーナーや管理会社は、ハウスや入居者の特徴を伝えてシェアハウスの魅力をアピールする必要があるでしょう。
キッチンやリビングを充実させて、入居者どうしのコミュニケーションや交流を促すことも重要になります。
またトラブル時には早急に対応することで、安心して住みやすいシェアハウスを構築することができます。
シェアハウスは節約できるのかについて
物件にもよりますが、シェアハウスは「初期費用」を大きく節約することができます。
たとえば、敷金、礼金、仲介手数料、家具・家電の購入費用などです。
シェアハウスは家賃のほかに一般の賃貸より高い「共益費」がかかります。
その理由は、水道光熱費、ネット料金、各設備のメンテナンス費、日用品などが含まれているため。
総合してみれば、一人暮らしで毎月かかる費用よりも割安といえることがほとんどです。
また、シェアハウスでは「新規入居者を対象にしたキャンペーン」を行っているハウスもあります。
物件や管理会社によっては、初期費用が無料になったり、決まった時期までに申し込めば賃料が値下げされたりするキャンペーンも。
一方、シェアハウス経験者の方から寄せられたコメントの中には、「イベントが多くて逆に出資がかさむ」という声も。
さまざまな人との交流はシェアハウスの醍醐味ですが、イベントが多いハウスだと思ったより節約できないこともあるので注意が必要です。
「入居希望者の気持ちを理解する」ことが重要なポイント
このアンケートを踏まえてオーナーや管理会社は、物件に問合せをする人の意識について再認識しておきたいところです。
入居希望者は、「シェアハウスでの共同生活への興味」「生活費の節約や交友関係の拡大」など、まずはシェアハウスのメリットを意識しています。
シェアハウスには共同生活ならではの魅力が沢山ありますが、「何を目的としてシェアハウスに入るか」は人それぞれです。
コンセプトや設備はシェアハウスのオーナーや管理会社ごとに異なるため、入居希望者は「本当にそのシェアハウスが自分に合っているのか」を確認したいと思っています。
オーナーや管理会社がシェアハウスの魅力をしっかりと伝え、きめ細かい管理を実施すれば、満足度も上がって入居期間も長くすることができるでしょう。
運営側において最も重要なことは、「入居前とのギャップをなくす」ことです。
期待していた生活とのギャップが大きければ、早期の退去につながってしまいます。
シェアハウスはアパートやマンションと比べて「入居・退去がしやすい」ので注意が必要です。
- シェアハウスの入居に期待感を高めている入居希望者に対して、契約につなげること
- 入居後は行き届いた管理で退去を減らすこと
これらがシェアハウス経営の重要なポイントとなります。
アンケート結果の注意点
アンケート結果を見る際には注意点もあるので確認しておきましょう。
まず、このアンケート結果はあくまでもシェアハウスのポータルサイト「東京シェアハウス」のサイト利用者ということです。
つまり、シェアハウスに関して何らかの興味がある人が回答しているということです。
Googleなどの検索エンジンから「シェアハウス」などのキーワードで検索し、東京シェアハウスのサイトを利用した人が対象になっています。
近年はテレビ等で取り上げられることも増えてシェアハウスの一般的な認知度も上昇していますが、まだまだシェアハウスがどんなものなのかを理解していない人もいます。
今回のアンケートでは、そういった人の意見は含まれていないので注意が必要です。
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