このコンテンツでは、シェアハウス運営における「物件の案内・見学」の方法について解説します。
シェアハウスのオーナーや管理会社の中には、入居希望者から問い合わせはあるにもかかわらず、物件の案内をしても契約にむすびつかなくて悩んでいるケースもあると思います。
せっかくアポイントをとって案内をしても、ハウスの特徴を伝えられなかったり、準備がしっかりとできていなかったりすると契約率が落ちてしまいます。
入居希望者の契約率を高めるには、案内前の準備から案内後のフォローまでの「流れ」をつくることが重要になります。
流れをつくって物件の案内(見学)をすることで、契約率の低下を防ぐことができます。
20棟・300室のシェアハウス管理会社で10年超の経験をもつ筆者が、プロのノウハウをお伝えします。
目次(もくじ)
シェアハウスの案内(見学)業務とは
アパート・マンションの案内(見学)との違い
シェアハウスは、通常のアパートやマンションの案内・見学とは方法が異なります
大きな違いは、「不動産仲介会社には依頼しない」ということです。
物件のオーナーや管理会社の担当者が案内をおこないます。
これは、シェアハウスが共同生活する賃貸住宅であり、入居希望者の協調性をよく見極めなければならないからです。
そのため、どんなに属性が良い人でも入居を断るケースもあるのです。
たとえば、大企業に勤めていて高収入であっても、「共同生活が難
オーナーや管理会社の担当者は、自分で案内・見学し、すべての責
もし審査が甘くなれば、ハウス内で入居者がトラブルを起こす可能性が高まります。
そうすればハウスの秩序が乱れ、既存の入居者に迷惑がかかり、住
ハウスの雰囲気が悪くなり、優良な入居者が退去してしまいます。
その結果、空室や減収につながり、シェアハウスの運営や管理にも大きな影響
案内(見学)業務 全体の流れ
シェアハウス案内(見学)の業務の全体的な流れを確認しておきましょう。
- アポイントの再確認と当日の準備・ハウス巡回の段取りをする(前日)
- 最寄り駅で待ち合わせる
- ハウス内を案内する
- 審査をする
- 契約に向けての手続きを行う(アポイントなど)
- 募集サイトの更新をする
それでは、具体的な業務を見ていきましょう。
案内の前日までにすること(シェアハウスの見学・内見)
一般のアパートやマンションの案内の場合は、希望に合致した物件を数件ほど一緒に見て回り、その中から選んでもらうことが多いと思います。
しかし、シェアハウスの場合は複数の物件を見て回るというよりは、特定の物件をピンポイントで見たいというケースが多くなります。
ネットなどを通じてかなり絞り込みされているためです。
そのため見学の際は、物件の「最寄り駅」で待ち合わせをして案内するというのが一般的です。
2-1 アポイントの再確認をする
案内の前日に入居希望者と連絡をとるようにしましょう。
ここで「アポイントの再確認」を行ないます。
- 氏名(性別)
- 日時
- 待ち合わせ場所(最寄り駅・改札口・出口)
- 携帯電話の番号
- 服装など
他のシェアハウス物件を見ている人の場合は、この時点でキャンセルになることもあります。
たとえば、2週間前に案内の日時を決めていたとしても、その間に他のシェアハウス物件に入居を決めてしまうかもしれません。
そして、当人がこちらとの約束をキャンセルするのを忘れている場合もあります。
そうすると、案内の当日に「待ちぼうけ」をくってしまいます。
また、前日にメールや携帯電話で連絡が取れないこともあります。
この場合も翌日の案内がキャンセルや待ちぼうけになる可能性が出てきます。
当日のキャンセルや待ちぼうけを防ぐためには、入居希望者に前日の指定の時間までに連絡をしてもらうようにしましょう。
こちらの指定の時間までに連絡がなければ、翌日の案内をキャンセルすることとしておくのです。(メール文の事例を紹介します。)
○○様
○月○日にシェアハウス○○のご見学のお約束をしております。
○時にJR○○線の「○○駅」の改札前にお越しください。
念のため、このメールにご返信をいただきたく存じます。
なお、誠に恐れ入りますが○日の○時までにご返信をいただけない場合は、今回のご案内はキャンセルとさせていただきます。
どうぞよろしくお願いいたします。
2-2 ハウス巡回の段取りをする
入居希望者の案内をするときには、同時に「ハウスの巡回業務」をしてしまうのが効率的です。
せっかくハウスを訪問するのであれば、そのハウスで早急に対応する業務などを事前に確認しておきます。
必要のある備品や買い物などがあればチェックしておきましょう。
たとえば、共用部の電球の交換、退去があった部屋の確認などを事前に確認して準備しておきます。
ハウスの巡回業務とは、シェアハウスのルールが守られているかを確認するために、定期的に物件をチェックする管理業務です。
筆者の携わるシェアハウス管理会社では、共同生活の環境や問題点を把握するために、「週1回のハウス巡回」をおこなっています。
案内の当日にすること(シェアハウスの見学・内見の手順
- ハウスの最寄り駅で待ち合わせる
- 会話をしながら物件に向かう
- ハウス内を案内する
- 注意点を伝え、質問に答える
- 全体を通して審査をおこなう
- その後の手続きをする
3-1 最寄り駅でのシミュレーションをする
案内の当日は、ハウスの最寄り駅からの見学方法をシミュレーションしましょう。
たとえば、入居希望者が見学にあてる時間に余裕がある場合は、最寄り駅周辺のお店やサービスなどを紹介することもできます。
また、近くに管理しているシェアハウス物件が他にあれば、そのハウスも同時に案内する可能性もあります。
入居希望者がハウスを気に入らない可能性も含め、類似の物件を紹介するなど次の戦略も考えておきましょう。
3-2 案内業務を行う(審査も)
待ち合わせ時間の10分前には物件の最寄り駅に到着するようにしましょう。
待ち合わせの時間がきたら、入居希望者の携帯電話で通話をして合流します。
案内時のコツは、物件がわかりやすい場所にあるとしても現地集合にはせず、あえて「最寄り駅」で待ち合わせをすることです。
その理由は、入居希望者と「会話をするため」です。駅から物件に移動する間に、街の紹介をすることもできます。
また、シェアハウスに入居した経験の有無や問合せの理由なども会話の中から聞き出しましょう。
物件に到着したら、ハウス内をひと通り案内します。
- 玄関・ポスト
- キッチン・リビング
- 個室
- ベランダ・屋上など
- 水回り設備(シャワー・トイレなど)
- その他の共用部
各箇所を案内しながら、ハウスの特徴や生活上の重要なポイント、ハウスルールなどを伝えます。
入居希望者からの質問があれば答えましょう。
とくに、女性や初めてシェアハウスに住む人は不安をかかえていることも多くあります。
その不安を解消し、安心して生活できる環境であることをしっかりと説明しましょう。
ハウス内を案内しているときに他の入居者に会った場合は、あいさつや声をかけるようにしましょう。
シェアハウスの管理や入居者とのコミュニケーションができていることをアピールすることができます。
また入居希望者と会話をしながら、シェアハウスの生活になじめそうな人なのかを判断していきましょう。
シェアハウスの案内(見学)は、面接(審査)の意味合いも含まれているのです。
- 服装・身だしなみ
- 態度
- マナー
- 言葉使い
- 時間を守るかどうか
- 会話やコミュニケーション
- その他のヒアリング
(部屋探しの理由、現在の住所、仕事、学校、出身、年齢、シェアハウスの経験など)
シェアハウスで生活するためには、協調性があり、共同生活のルールを守る社会常識を持ち合わせていることが前提です。
その上で、案内するシェアハウスのコンセプトや雰囲気に合っているかどうかを判断しましょう。
運営側の担当者ときちんと話しができるかどうか、契約やルールを理解できる人かどうかが基準となります。
すでにシェアハウス内に入居者の「コミュニティ」ができている物件の場合は、「性格的に合いそうか」を考えることも重要です。
ルールやマナーを守らない入居者がいれば、共同生活の秩序が乱れて暮らしにくいシェアハウスとなってしまいます。
社会的な常識やマナーから逸脱しているひとや、コミュニケーションが取れない人は避ける必要があります。
他の入居者にも影響を与え、良質な入居者が退去してしまうことにもなりかねません。
たとえば、あまりにも音に敏感な人はシェアハウスでの生活には向かないでしょう。
共同生活なので生活音や多少の話し声は許容しなければなりません。
また、神経質な人や自己主張が強すぎる人には注意する必要があります。
シェアハウスの秩序やコミュニティのことを考えて、入居を断ることも考えましょう。
物件の案内時に「シェアハウスの特徴やルール」についてきちんと説明することが重要です。
オーナーや管理会社にとっては、経営上、早く満室にしたい気持ちはわかりますが、「この人はシェアハウスになじめそうにないな」と感じたら、心を鬼にして断るべきです。
その人が原因で人間関係やトラブルが生じ、先に入居していた方が退去することになっては元も子もないからです。
「他にも入居希望者がいるため、ご入居が可能な場合はこちらから連絡します。連絡がなければご縁がなかったと思ってください」などとうまくかわしましょう。
もしくは、その場で申込書を渡さず、「興味がありましたら、ご連絡ください」などとワンクッションをおきます。
審査の理由は明かす必要はありません。無用なトラブルを防ぐ意味でも「総合的に判断」するというスタンスでよいのです。
案内後にすること(シェアハウスの見学・内見)
4-1 入居希望者に対する審査をする
物件の案内が終わった後には、入居希望者に対する「審査」を行ないます。
服装・マナーや会話などから物件の入居者として問題がないかどうかをチェックします。
「入居申込書」を記入してもらう場合はその内容を確認し、必要に応じて身分証明書などの確認を行いましょう。
オーナーがハウスを自主管理する場合は、これらの入居希望者の審査はオーナー自らおこなう必要があります。
シェアハウスの管理会社に任せている場合は、管理会社や担当者が入居希望者の審査を行ないます。
案内時の内容を総合的に判断して、入居を認めるかどうかを決めます。
- 社会的な常識・マナーを持ち合わせているか
- 物件のコンセプトや雰囲気に合っているか
- ハウス内の入居者たちと協調できそうか
- しっかりとコミュニケーションが取れるか(協調性)
- 他人や音に神経質でないか
- 自己主張が強すぎないか
なお、入居希望者から「審査の内容」に関する質問があった場合には答えなくて構いません。
4-2 契約に向けての手続きを行う
審査に問題がなければ、契約に向けての手続きをすすめていきましょう。
案内(見学)が終わったときに、人物の審査に問題がなければ「入居申込書」を提出してもらったり、契約の日時を調整したりします。
契約時に必要な持ち物を伝え、契約予定の部屋をキープしておきましょう。
入居希望者の中には、「もう少し検討したい」「他の物件も見たい」「他社のシェアハウスも検討している」といった人もいます。
その際には、期限を切って部屋をキープしましょう。
相手のスケジュールを聞き、こちらの都合を考慮して、「それでは〇日までお部屋をキープしておきます。」と伝えます。
その後は、メールや電話で連絡を取って相手の検討状況を確認し、契約へつなげていきましょう。
注意
物件の案内後、「当日に契約する」のは避けましょう。
契約を急いでいる人は、何らかの問題をかかえている場合があります。
4-3 募集サイトの更新をする
契約の日時まで決めることができたら、ポータルサイトやホームページなどの情報を更新しましょう。
空室 → 満室へ
いくつかのポータルサイトに掲載している場合は、すべてのサイトを更新するのを忘れないように注意します。
注意点(シェアハウスの案内・見学・内見)
ハウスの案内(見学)時やその後に「ハウス巡回」の業務をおこないましょう。
せっかく物件を訪問したのですから、ハウスルールや問題点がないかどうかをチェックします。
玄関
シェアハウスの玄関は、入居者希望者を案内するときの第一印象につながります。住人の靴が散乱していると悪い印象を与えてしまいます。
入居者にとっては毎日利用する場所であり、玄関が整理整頓されていなければ気持ちよく生活することはできないでしょう。
廊下・リビングなど
廊下やリビングなどの共用部に「入居者の私物」が置かれていないかどうかも注意しましょう。
オーナーや管理会社がハウスの内装にこだわったりインテリアを統一したりしていても、入居者の私物が勝手に置かれていれば雑然としてしまいます。
もしハウスルールの違反や気になる点を見かけた場合は、すぐに対応や改善に着手します。
案内時も含めて「ハウスの定期的な巡回」を行い、問題がないかどうかを常にチェックすることが重要です。
シェアハウスの定期巡回については、下記のコンテンツで詳しく解説しています。
まとめ
- 案内の前日から準備を行う
- 案内時は入居希望者と会話をして人物チェックをおこなう
- 案内後に審査をする
- 共同生活に問題がないかどうかを重点的に確認する
- ハウス巡回も実施して物件内の問題点をチェックする