入居者のトラブルがあっても経営できる「仕組み」を解説します(契約書・ハウスルールのサンプル事例あり)

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シェアハウスの運営は、「入居者同士のトラブルがある」というイメージで不安があるかもしれません。

確かにシェアハウスは共同生活なのでトラブルが起きることもあります。

しかし、事前にきちんと対策しておけば大きな問題に発展することはほとんどありません。

このコンテンツでは、

 

  • どんなトラブルが起きやすいのか
  • その対策はどうすればいいのか

 

ということを実際の事例をもとに解説しています。

 

10年以上のシェアハウス運営・管理の経験がある筆者が、事前のトラブル対策と対応策をまとめました。

これからシェアハウスを運営する人がわかりやすいように具体例も示してお伝えします。

 

シェアハウスのトラブル・クレーム管理
  • 「音」に関するクレーム・トラブルが最も多い
  • トラブルがあっても管理運営できる「仕組み」がある
  • 契約書・規則・ハウスルール・ハウス巡回でトラブルを予防する
  • 定期借家契約で悪質な入居者を排除できる
  • クレーム・トラブルは迅速な対応が重要になる
  • 何度も繰り返す入居者は解約して退去してもらう
  • 正しい方法で運営すれば不動産投資のブルーオーシャンとなる

 

 

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シェアハウスのトラブル事例

賃貸住宅のトラブルは、ハード面(設備など)とソフト面(隣人など)に分かれます。

シェアハウスのクレーム・トラブルは、そのほとんどが「ソフト面」によるものです。

同じ建物内での共同生活のため、ルールや人間関係のクレーム・トラブルが多くなっています。

その事例を具体的に見ていきましょう。

 

1-1 騒音のトラブル

シェアハウスは「音」のトラブルがいちばん多い

 

シェアハウスでいちばん多いのが「音」のトラブルです。

 

  • 個室内の音
  • 楽器の演奏
  • 洗濯機・乾燥機(共用部)
  • ドライヤー
  • 話し声
  • 深夜早朝

 

個室内の音が隣室に聞こえてしまうとクレーム・トラブルの原因となります。

たとえば、電話の話し声、音楽鑑賞、楽器の演奏などです。

共用部の洗濯機・乾燥機の音もトラブルになりやすくなります。

廊下での話し声や、洗面所のドライヤーの音もクレームになる場合があります。

とくに深夜・早朝はトラブルになりやすいので注意が必要です。

 

シェアハウスの騒音トラブルについては、下記のコンテンツで詳しく解説しています。

 

1-2 共用部の使い方について

入居者同士で利用するリビングやキッチンなどの「共用部」の使い方もクレームやトラブルの原因となります。

たとえば、キッチンで調理をして片づけなかったり、食事をした後に食器を洗わない人がいたりするとクレームになります。

 

1-3 友人の招待・宿泊について

勝手に友人をハウスに呼んだり、宿泊させたりしてトラブルになる場合があります。

モラルだけでなく、玄関のカギの管理や暗証番号の漏えいなど防犯上の問題も関係してきます。

 

1-4 人間関係について

共同生活のルールを守らないと人間関係のトラブルになる

 

シェアハウスは様々な人との共同生活です。

そのため、人間関係のトラブルになることもあります。

そのときにどのように対応するのかも重要になります。

 

1-5 その他のルール違反について

シェアハウスでは共同生活の様々なルールが決められています。

たとえば、玄関の利用、ゴミ出し、冷蔵庫の利用方法、喫煙、Wifi利用など多岐にわたります。

これらのルール違反があるとクレーム・トラブルにつながります。

 

 トラブルがあってもシェアハウスが運営できる理由

シェアハウスはトラブルがあっても運営できる「仕組み」ができている

 

シェアハウスでは、様々なトラブルが起こってもなぜ運営することができるのでしょうか。

その理由は、トラブル対策の「仕組み」にあります。

 

トラブル対策のポイント
  • 契約書の記載と説明
  • 定期借家契約
  • ハウスルールの設定
  • ハウス巡回によるチェック
  • 迅速なトラブル対応

 

定期借家契約と説明

シェアハウスの運営では、入居者と「定期借家契約」をむすびます。

トラブル対策に必要な「禁止事項」を契約書に記載し、契約時にしっかりと説明しています。

その際、契約が守れないと解約(退去)になることも説明します。

定期借家契約は「更新」がなく、期間満了で契約が終了することも重要なポイントです。

 

定期借家契約については、下記のコンテンツで詳しく解説しています。

 

ハウスルールの設定

契約書のほかにも、生活上の細かいルール・規則を「ハウスルール」として設定します。

たとえば、洗濯機・乾燥機の利用時間を「7時~23時」に設定している物件もあります。

契約時にハウスルールも説明し、理解してお互いに納得したうえで契約をすることが重要です。

 

ハウス巡回によるチェック

ハウスルールを設定しても、守られていなければ意味がありません。すぐにクレーム・トラブルが起きてしまいます。

通常シェアハウスには「管理人」はいません。

そのためオーナーや管理会社は、「定期的にハウスを巡回」してルール違反がないかどうかをチェックします。

シェアハウス管理を10年以上おこなっている筆者の経験では、「1週間に1回」以上の巡回チェックをする必要があると考えています。

ハウス巡回時は、規則・ルールが守られているか、ハウス内に変化はないかをよく観察します。

また、入居者とも積極的に会話するようにしています。

会話の中から、迷惑な住人のことや困っていることなどを聞き出すことができます。今後の対応や対策に役立てることができるのです。

 

トラブル対応は早急におこなう

クレーム・トラブルの対応は迅速に行います。

何かあれば事実関係を確認し、契約やルール違反があればすぐに対応しています。

ささいなことでも早急に対応すれば、大きなトラブルになることを防ぐことができます。

また、オーナー・管理会社と入居者との信頼関係の構築につながり、協力を得やすくなるというメリットもあります。

 

クレーム・トラブルの対策方法(シェアハウス運営)

シェアハウスのクレーム・トラブルには迅速な対応が不可欠です

 

3-1 迅速なクレーム・トラブル対応が重要

シェアハウスの入居者は、共同生活を前提として暮らしています。

そのため、多少のことは「お互い様」と思って生活しています。

入居者からクレーム・トラブルの連絡があった時には、我慢の限界を超えているか、かなりひどい状況のことが多くあります。

そのため、クレーム・トラブルには常に迅速な対応が必要になります。

 

まずは情報収集が重要になりますが、基本的には「即日」に対応します。

土日などでオーナーや管理会社が休みの場合でも、メールの返信など可能な範囲で対応しましょう。

シェアハウスは共同生活ですので入居者同士で会話したりSNSでやり取りしたりする機会も多く、すぐに広まってしまいます。

クレーム・トラブルだけでなく、「オーナーや管理会社の対応」についても話題になります。

「入居者との信頼関係」を損なわないように素早い行動が求められます。

 

トラブル対応のポイント
  • 常に素早い対応をする
  • 入居者から情報をヒアリングする
  • 可能であれば現場写真などの証拠を手に入れる

 

3-2 ルール違反者には注意を促す

情報(写真・証言など)を収集し、契約やルール違反をしている可能性がある人がいたら、本人に確認をします。

ただし、ここで性急に責め立ててはいけません。

集めた情報が間違っていたり、場合によっては人違いやこちらの勘違いであったりすることがあるからです。

間違いの可能性があることも念頭に置いて、本人には慎重に確認しましょう。

 

メールや電話のやりとりや対面などで本人の口からルール違反を確認できた場合は、一度目は注意するだけで終わります。

ルール違反があると他の入居者からの指摘ですぐにわかります。そのため、トラブルを起こした本人も認めやすくなっています。

誰でも間違いはありますし、今後はハウスルール(規則)を厳守してもらうように伝えてください。

重大な契約違反でなければ、その後の様子を見守ってください。

 

クレーム・トラブルの中には、ルール違反者がわからないケースもあります。

たとえば、ゴミの分別がなされずにゴミ出しがされているなど。

その場合は、「入居者全員にアナウンス」して注意喚起を行います。

全体メールを送信したり、ハウス内の掲示板に連絡したりしましょう。

 

3-3 何度言ってもルールが守れない人は退去を促す

シェアハウスの入居者の中には、同じクレーム・トラブルを繰り返す人や他の入居者に迷惑をかける人がいる場合があります。

何度もトラブルを起こす入居者には解約して退去を促すことが必要になります。

シェアハウスはトラブルを起こす不良入居者を排除しやすい仕組みになっています。(定期借家契約)

  • 入居時に禁止事項の説明をしっかりとする
  • 契約・ルールを守れない場合には退去になることも説明する
  • トラブルを繰り返し起こしたら退去してもらう
  • 合意の上で賃貸借契約を解約し、退去してもらう
  • すぐには退去しない場合でも、シェアハウスは「定期借家契約」のため期限が切れたら退去になる
  • アパートやマンションの契約(普通賃貸借契約)のように居座られたりすることがない

 

入居者はシェアハウスが「共同生活」であることをわかって住んでいます。

共同生活を前提にして、他人との接触や交流に抵抗のない人が多いです。

シェアハウスは、入居者がお互いを知っている「顔の見える」関係とも言えます。

そのため、日常生活の多少のことなら割り切ることができます。

きちんと話せば理解してもらえます。ダメなら退去する、ということを確認して契約をしているのです。

 

3-4 実際はクレーム・トラブルは多くない

パーティーなどで仲良くなるとクレームやトラブルは起こりにくくなる

 


シェアハウスは共同生活でお互いのことを知っているため、多少のことなら割り切って暮らしています。

アパートのように顔を合わせない隣人がうるさいのと、一緒に食事をしたことのあるような隣人がうるさくしているのとでは、感じ方が違ってきます。

実際には、ささいなことであれば、直接本人同士で解決していることも多くあります。

本人に言いづらいことであれば、管理会社などの運営者が間にはいって、カドが立たないように解決することもできます。

 

また、ルール違反をしていれば他の入居者からの指摘ですぐにわかってしまいます。

共同生活がうまくできないと判断されれば、解約や期間満了での退去となります。

シェアハウスは入居者の荷物も多くなく、すぐに引っ越せるため「居座り」がないこともオーナーや管理会社にとってのメリットです。

 

シェアハウスはその特性上、日常的に入居者と管理担当者が顔を合わせたり、メールや電話でやり取りしたりすることが多くあります。

アパートなどと比べてもお互いの距離が近いといえます。トラブルや話し合いが必要な場合でもスムーズに行うことができます。

シェアハウスでは、運営側と入居者のコミュニケーションがとても密にとられるのです。

管理会社の担当者は、通常、週に1回はハウスに顔を出します。

また、イベントやパーティーなどの開催を通じて緊密になることも多くあります。

そのため、実際にはクレーム・トラブルが発生することはそれほど多くはありません。

ルールの設定や迅速な対応ができていれば大きな問題に発展することはほとんどないのです。

 

入居者との契約書・ハウスルールの事例(サンプルあり)

トラブルの防止には契約書・ハウスルールが重要になります

 

トラブルを予防するためには、入居者とむすぶ契約書やハウスルール(規則)が重要になります。

実際のシェアハウスの契約書・ハウスルールの事例を紹介します。

 

入居契約書の事例
(禁止事項)
第○○条 乙は本物件の使用にあたり、次に掲げる行為をおこなってはなりません。
騒いだり、大声で話したり、テレビなどの大音量を出すこと
近隣や他の入居者の迷惑となる行為や争いごとになる行為をすること
(解約)
第○○条 乙が次の事項に該当したときは、甲は直ちに本契約を解約できるものとします。
共同生活の環境および秩序・平穏を阻害する行為を反復したとき
甲:オーナーまたは管理会社  乙:入居者
ハウスルールの事例
  • 他の入居者へ迷惑をかけた場合、またはその可能性があると判断された場合、および入居者や管理会社との協調性に欠ける者については解約の対象とする。
  • 他の入居者および近隣住民に迷惑や不快の念をいだかせる行為をしないこと。
  • 建物内や共用部分は常に清潔にすること。私物を置いたり占領したりしないこと。
  • テレビ、ステレオ、その他の音量は、周囲に迷惑がかからない程度におさえること。
  • 洗濯物は終わったら速やかにとりだし、洗濯機・乾燥機に放置しないこと。
  • 管理会社の定めたルールを守ること。

 


筆者がたずさわっているシェアハウスの管理会社では、ささいなことでも入居者同士で指摘せず、「管理会社に相談する」ように促しています。

その理由は、入居者同士の指摘ではわだかまりが残ったり、不仲になるきっかけになったりする可能性があるからです。

そうはいっても、筆者の感じているところでは、日常のささいなことは入居者同士で解決しているのではないか、と思っています。

このような管理方法で、これまで10年以上大きなトラブルが発生することを防いでいます。

 

定期借家契約の契約書・説明書面は、国土交通省のサイトからダウンロードできます。(定期賃貸住宅標準契約書)
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000030.html

 

よくある質問(FAQ) トラブル解決の仕組み(シェアハウス)

シェアハウスはトラブルが多いというイメージがあるのですが・・・
建物内での共同生活のためにトラブルが起こりやすいイメージがあるようです。
アパートやマンションの近隣トラブルと比べて格段に多いということはありません。
シェアハウスはオーナーや管理会社がすぐに対応できるトラブルも多いため、その影響も小さくて済んでいます。
契約書やハウスルールでトラブルを防止できますか?
契約書などで注意してもトラブルが起きるケースはあります。
契約時にトラブルについての説明をすることで、入居者の自覚を促してトラブル発生を抑止することができます。
トラブルが起きにくいようにするために重要なことは?
契約書・ハウスルール以外に、「定期的なハウス巡回」がポイントです。
ハウス巡回をしてルールが守られているかどうかを確認したり、入居者と会話をして不満がないかどうかを確認したりすることでトラブルの芽を摘むことができます。
トラブルが発生して対応するときに注意することは?
情報を収集して「事実関係を確認」したうえでトラブルを起こした本人に確認を行なうようにしましょう。
明確な証拠がないケースもありますので、本人との協議は言葉を選びながら慎重に行なうことが重要です。
それでもルールを守らない入居者がいる場合のハウス運営は?
何度も同じ注意を受けたり契約書・ルールを守らなかったりする入居者には、退去してもらいます。
「定期借家契約」であれば契約更新がないため契約を期間満了で終了(退去)させることができます。

 

シェアハウス経営(投資)にはチャンスもある

シェアハウスは賃貸経営において差別化できるチャンスも大きい

 

「シェアハウスはトラブルが多い」というイメージがあるため、シェアハウスの経営や投資をする人は少なくなっています。

しかし、オーナーや管理会社がきちんと対策し、トラブルが起きても丁寧に対応すれば大きな問題には発展しません。

筆者が管理にたずさわっている物件では、開業から10年以上のシェアハウスも多数あります。

正しい方法で管理を行えばトラブルは防ぐことができ、高い入居率を確保することも可能になります。

その結果、リフォーム工事などの初期費用を5年以内に回収しているオーナーも少なくありません。

シェアハウスは正しい方法で運営すれば、不動産投資の中でもまだまだ「ブルーオーシャン」ということができます。

他の人が敬遠することに積極的に取り組めば、高い収益を得ることができるのです。

 

シェアハウス経営の魅力(メリット)については、下記のコンテンツで詳しく解説しています。

 

まとめ

共同生活であるシェアハウスには、小さなトラブルはつきものです。

しかし、入居時に契約書・規則・ハウスルールをしっかりと説明し、入居後は順守してもらう管理体制をとれば大きなトラブルが起きることはありません。

シェアハウスの入居希望者は、共同生活を前提にして心構えができている人が多いといえます。

そのため、アパートの入居者と比べても小さなトラブルは「お互い様」と許容する傾向があります。

仮にトラブルが発生したとしても、悪質な入居者を排除できる仕組みがあります。

アパートのようにトラブルが長引いたり退去させられなかったりすることがほとんどないのも、オーナーにとってのメリットといえるでしょう。

 

シェアハウスのトラブル管理(まとめ)
  • 「音」に関するクレーム・トラブルが最も多い
  • トラブルがあっても管理運営できる「仕組み」がある
  • 契約書・ハウスルール・ハウス巡回でトラブルを予防する
  • 「定期借家契約」で悪質な入居者を排除できる
  • クレーム・トラブルは迅速な対応が重要になる
  • 何度も繰り返す入居者は解約して退去してもらう
  • 正しい方法で運営すれば不動産投資のブルーオーシャンとなる

 

Ⓒシェアハウス経営の教科書

 

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