特定賃貸借契約(マスターリース契約)の締結時には、サブリース業者から契約書が交付されます。
しかし、契約書に重要な内容が書かれていないことがあれば、不動産オーナーや投資家は不利益を被る可能性が出てきます。
サブリース新法(第31条)では、トラブルを防止するために「必要な事項を記載した書面の交付」することを義務付けています。
サブリース業者とマスターリース契約を締結する際の書面について、その内容と注意するポイントをまとめました。
※マスターリース契約の前にはサブリース業者による重要事項説明が義務付けられています。
重要事項説明については、下記のコンテンツで解説しています。
目次(もくじ)
規定の趣旨(契約締結時の書面の交付)
マスターリース契約は、家賃その他賃貸の条件、維持保全の実施方法や費用分担、契約期間、契約解除の条件など多岐にわたる複雑なものとなります。
そのため、契約締結後に契約内容や条件を確認できるよう、サブリース業者に対し、契約締結時に相手方に「必要な事項を記載した書面を交付する」ことを義務づけています。
当事者間の認識の相違による紛争の発生防止を図ること、を規定の趣旨としています。
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(サブリース新法)
(特定賃貸借契約の締結時の書面の交付)
第 31 条 特定転貸事業者は、特定賃貸借契約を締結したときは、当該特定賃貸借契約の相手方に対し、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。
一 特定賃貸借契約の対象となる賃貸住宅
二 特定賃貸借契約の相手方に支払う家賃その他賃貸の条件に関する事項
三 特定転貸事業者が行う賃貸住宅の維持保全の実施方法
四 契約期間に関する事項
五 転借人の資格その他の転貸の条件に関する事項
六 契約の更新又は解除に関する定めがあるときは、その内容
七 その他国土交通省令で定める事項2 前条第二項の規定は、前項の規定による書面の交付について準用する。
マスターリース契約締結時の「書面」の記載事項
サブリース業者は、特定賃貸借契約(マスターリース契約)締結時に以下の事項を書面に記載し、交付しなければなりません。
ただし、これらの事項が記載された契約書であれば、当該契約書をもってこの書面とすることができます。
国土交通省が別途定める「特定賃貸借標準契約書(Word)」には、必要な事項が記載されています。
【記載事項】
(1)マスターリース契約を締結するサブリース業者の商号、名称又は氏名及び住所
(2)マスターリース契約の対象となる賃貸住宅
(3)契約期間に関する事項
(4)マスターリース契約の相手方に支払う家賃その他賃貸の条件に関する事項
(5)サブリース業者が行う賃貸住宅の維持保全の実施方法
(6)サブリース業者が行う賃貸住宅の維持保全に要する費用の分担に関する事項
(7)マスターリース契約の相手方に対する維持保全の実施状況の報告に関する事項
(8)損害賠償額の予定又は違約金に関する定めがあるときは、その内容
(9)責任及び免責に関する定めがあるときは、その内容
(10)転借人の資格その他の転貸の条件に関する事項
(11)転借人に対するサブリース業者が行う賃貸住宅の維持保全の実施方法の周知に関する事項
(12)契約の更新又は解除に関する定めがあるときは、その内容
(13)マスターリース契約が終了した場合におけるサブリース業者の権利義務の承継に関する事項
※各事項の内容については、重要事項説明を参照してください。
もし、上記「12の事項」のいずれかが記載されていないマスターリース契約書の場合は、サブリース業者は契約書とは別に「12の事項」が記載された書面を交付しなければなりません。
不動産投資家やオーナーは、マスターリース契約時に交付される書面に不備がないかどうか、をよく確認することが重要です。
契約締結時の書面交付に「電磁的方法」を活用する場合
サブリース業者は、マスターリース契約の相手方となろうとする者の承諾を得れば、マスターリース契約書面の交付の代わりに「電磁的方法」により提供することができます。
国土交通省が定める「電磁的方法」とは
- 電子メール
- WEB からのダウンロード
- CD-ROM など
ファイルへの記録方法(使用ソフトウェアの形式やバージョン等)も示すこと。
また、2つの留意点も示されています。(国土交通省)
(1)電磁的方法により提供する際の承諾
サブリース業者が契約書面等を電磁的方法により提供しようとする場合は、契約者がこれを確実に受け取れるようにすること。
また、電子メール、WEB による方法、CD-ROM 等、契約者側が承諾したことが記録に残る方法で承諾を得ること。
(2)電磁的方法で提供する場合の留意事項
電磁的方法で提供する場合、出力して書面を作成でき、改変が行われていないか確認できることが必要。
たとえば、電子署名等の活用など。
不動産オーナーや投資家は、「契約締結後に契約内容や条件を確認することで、当事者間の認識の相違による紛争の発生防止を図る」という契約締結時の書面交付義務がサブリース業者に課せられた趣旨をよく理解することが重要です。
契約書面の電磁的方法による提供については、下記のコンテンツが参考になります。
【不動産書面の電子化】国土交通省マニュアルを解説します(5月18日より)
マスターリース契約の重要事項説明にITを活用する場合
マスターリース契約の前にはサブリース業者による重要事項説明が義務付けられています。
重要事項説明は、対面のみならず「ITを活用」して行うことも可能になっています。(IT重説)
重要事項説明については、下記のコンテンツで解説しています。