令和2年(2020年)12月15日より、いわゆる「サブリース新法」が施行されています。
サブリース新法(賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律)では、特定賃貸借契約(マスターリース契約)の際に「重要事項の説明」・「重要事項説明書の交付」(重説)が義務付けられました。
賃貸住宅事業(シェアハウスを含む)でマスターリースやサブリースに関わる事業者は、新法に対応する必要があります。
オーナーや投資家もサブリース新法の「重要事項説明」について理解しておくことが大切になります。
このコンテンツでは、契約の当事者である物件所有者(オーナー)とサブリース業者・不動産業者(管理会社)に向けて「重要事項説明」のポイントをわかりやすく解説します。
(なお、賃貸住宅管理業の契約時の重要事項説明ではありません。賃貸住宅管理業の登録について)
目次(もくじ)
サブリース新法における「重要事項説明」とは(重説)
サブリース新法(賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律)では、サブリース業者(特定転貸事業者)に対して特定賃貸借契約(マスターリース契約)の締結前に、オーナーとなろうとする者に書面を交付して説明することを義務づけています。
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(サブリース新法)
第 30 条(特定賃貸借契約の締結前の書面の交付)
特定転貸事業者は、特定賃貸借契約を締結しようとするときは、特定賃貸借契約の相手方となろうとする者(特定転貸事業者である者その他の特定賃貸借契約に係る専門的知識及び経験を有すると認められる者として国土交通省令で定めるものを除く。)に対し、当該特定賃貸借契約を締結するまでに、特定賃貸借契約の内容及びその履行に関する事項であって国土交通省令で定めるものについて、書面を交付して説明しなければならない。
2 特定転貸事業者は、前項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、当該特定賃貸借契約の相手方となろうとする者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。この場合において、当該特定転貸事業者は、当該書面を交付したものとみなす。
重要事項説明の詳細について、順番に見ていきましょう。
国土交通省による「オンライン説明会」(サブリース新法)
国土交通省が実施したWEBによる説明会は、動画で確認することができます。
新法で求められる事項や法違反となり得る具体的事例といった、業務を適正に行うために求められる水準を示しながら、これらの規制の内容を関係者にわかりやすく説明しています。
なぜ「重要事項説明」が導入されるのか(サブリース新法)
サブリース事業では、オーナーとなろうとする人には賃貸住宅を賃貸する事業の経験・専門知識に乏しい場合もあります。
サブリース業者との間では、経験・専門知識等に大きな格差があるといってもいいでしょう。
業者の中にはこのような格差を利用して、オーナーとなる人とのマスターリース契約(一括借上げ等)の締結時に十分な説明を行わないケースも。
家賃改定条件や契約解除条件等について、契約内容を誤認させたまま契約を締結させる悪質業者も存在するために、オーナーとの間で大きなトラブルが多発しています。
このため、オーナーとなろうとする人が契約内容を正しく理解した上で、適切なリスク判断のもとにマスターリース契約を締結することが重要です。
適切な契約の環境を整えるため、サブリース新法ではサブリース業者に対し「契約締結前にオーナーとなろうとする人に書面を交付し説明すること」を義務づけているのです。
サブリース新法についての詳細は、国土交通省の資料を確認してください。(下記)
・サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン(PDF形式)
重要事項の説明者とは(サブリース新法)
サブリース業者が重要事項の説明をする際、「どのような者に説明をさせなければならないか」(資格)については法律上の定めはありません。
重要事項について正確な情報を適切に説明することで、オーナーとなろうとする者が十分に理解をした上で契約締結の意思決定ができるようにすることがポイントです。
そのため、一定の実務経験を有する者、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士など、専門的な知識及び経験を有する者によって説明が行われることが望ましいとされています。
また、重要事項説明の「代理・委任」は認められていません。
これは「契約の責任関係を明確にする」という新法の趣旨によります。
処罰規定もあることから、「処罰対象となり得るサブリース業者」が説明する必要があります。
重要事項説明のタイミング(サブリース新法)
オーナーとなろうとする者が契約内容とリスク事項を十分に理解し、契約意思が安定した状態で契約を締結できるように、サブリース業者はマスターリース契約の内容を十分に理解するための「熟慮期間」を与えることが必要です。
そのため、マスターリース契約を締結するための重要な判断材料となる重要事項の説明から契約締結までに、1週間程度の十分な期間をおくことが望ましいとされています。
ただ、重要事項の説明から契約締結までの期間を短くせざるを得ない場合もあるかもしれません。
その際は事前に重要事項説明書等を送付し、重要事項説明書等の送付から一定期間後に説明を実施するなどして、オーナーとなろうとする者が契約締結の判断を行うまでに十分な時間をとることが望ましいでしょう。
また、サブリース業者が借地借家法第32条第1項(※)に基づく「家賃の減額請求権」を行使しようとする場合の規定もあります。
マスターリース契約の内容変更に関わることから、家賃の減額請求権の行使の前に、賃貸人(オーナー)に対して書面の交付等を行なった上で説明する必要がある、としています。
- 変更(減額)しようとする家賃の額
- 家賃の設定根拠
- その他の変更事項
(※)借地借家法 第32条1項
建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。
ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
相手方の知識、経験、財産の状況等に応じた説明が必要(サブリース新法)
サブリース業者は、相手方がサブリース新法の第30条の重要事項説明の対象となる場合は、その者がマスターリース契約について一定の知識や経験があったとしても、書面に記載し、十分な説明をすることが必要です。
その上で、説明の相手方の知識、経験、財産の状況、賃貸住宅経営の目的やリスク管理判断能力等に応じた説明を行います。
説明の相手方の属性やこれまでの賃貸住宅経営の実態を踏まえて、以下の点に留意して説明を行う必要があるとしています。
② 説明の相手方の属性や賃貸住宅経営の目的等に照らして、マスターリース契約のリスクを十分に説明すること。
③ 説明の相手方が高齢の場合は、過去に賃貸住宅経営の経験が十分にあったとしても、身体的な衰えに加えて短期的に判断能力が変化する場合もあることから、説明の相手方の状況を踏まえて慎重な説明を行うこと。
重要事項説明は対面でおこなう(サブリース新法)
サブリース新法の重要事項説明は、原則として「直接の対面での説明」が必要となります。
または、いわゆる「 IT重説」を活用します。
映像と音声でのリアルタイムにより、相手の認識の確認や質問に答えられる環境にあるのかどうかが重要です。(IT重説は契約の相手方の承諾をとって行うこと。)
IT重説には、次に掲げるすべての事項を満たしている場合に限り、対面による重要事項説明と同様に取扱うことができます。
- 説明者及び重要事項の説明を受けようとする者が、図面等の書類及び説明の内容について十分に理解できる程度に映像が視認でき、かつ、双方が発する音声を十分に聞き取ることができるとともに、双方向でやりとりできる環境において実施していること
- 重要事項説明を受けようとする者が承諾した場合を除き、重要事項説明書及び添付書類をあらかじめ送付していること
- 重要事項の説明を受けようとする者が、重要事項説明書及び添付書類を確認しながら説明を受けることができる状態にあること並びに映像及び音声の状況について、特定転貸事業者が重要事項の説明を開始する前に確認していること
なお、説明の相手方に事前に重要事項説明書等を読んでおくことを推奨するとともに、重要事項説明書等の送付から一定期間後に、IT を活用した重要事項説明を実施することが望ましい、としています。
【関連コンテンツ】
重要事項説明書の記載事項・説明事項(サブリース新法)
サブリース業者は、契約締結前に以下の【記載事項】①~⑭を書面に記載し、説明をしなければならないとしています。
重要事項説明書の作成には注意点もありますので確認しましょう。
重要事項説明書の作成の注意点(サブリース新法)
重要事項説明書の作成にあたっては、国土交通省から以下の留意点が示されています。
(サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン)
・「書面の内容を十分に読むべき旨」を太枠の中に太字波下線で、日本産業規格Z8305に規定する「12ポイント以上の大きさ」で記載すること。
・書面の内容を十分に読むべき旨の次に、借地借家法第32条、借地借家法第28条の適用を含めたマスターリース契約を締結する上でのリスク事項を記載すること。
・書面には日本産業規格Z8305に規定する「8ポイント以上の大きさの文字及び数字」を用いること。
・サブリース業者がオーナーに支払う家賃の額の記載の次に、当該額が減額される場合があること及び借地借家法第32条の概要(契約の条件にかかわらず借地借家法第32条第1項に基づきサブリース業者が減額請求を行うことができること、どのような場合に減額請求ができるのか、オーナーは必ずその請求を受け入れなくてはならないわけではないこと等)を記載すること。
・契約期間の記載の次に、借地借家法第28条の概要(借地借家法第28条に基づき、オーナーからの解約には正当事由が必要であること等)を記載すること。
なお、重要事項説明書はマスターリース契約締結に先立って交付する書面であり、契約の締結時の書面(マスターリース契約書)は交付するタイミングが異なる書面であることから、「両書面を一体で交付する」ことはできません。
重要事項の書面による説明を行う際には、国土交通省による「重要事項説明書 記載例」に準拠した書面を用いることが望ましいでしょう。
記載事項(重要事項説明) | |
---|---|
(1) | マスターリース契約を締結するサブリース業者の商号、名称又は氏名及び住所 |
(2) | マスターリース契約の対象となる賃貸住宅 |
(3) | 契約期間に関する事項 |
(4) | マスターリース契約の相手方に支払う家賃の額、支払期日、支払方法等の条件並びにその変更に関する事項 |
(5) | サブリース業者が行う賃貸住宅の維持保全の実施方法 |
(6) | サブリース業者が行う賃貸住宅の維持保全に要する費用の分担に関する事項 |
(7) | マスターリース契約の相手方に対する維持保全の実施状況の報告に関する事項 |
(8) | 損害賠償額の予定又は違約金に関する事項 |
(9) | 責任及び免責に関する事項 |
(10) | 転借人の資格その他の転貸の条件に関する事項 |
(11) | 転借人に対する(5)の内容の周知に関する事項 |
(12) | マスターリース契約の更新及び解除に関する事項 |
(13) | マスターリース契約が終了した場合におけるサブリース業者の権利義務の承継に関する事項 |
(14) | 借地借家法その他マスターリース契約に係る法令に関する事項の概要 |
それでは、順番に詳細を見ていきましょう。
重要事項説明書の記載事項(サブリース新法)
サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドラインから抜粋しています。
(1)マスターリース契約を締結するサブリース業者の商号、名称又は氏名及び住所
(2)マスターリース契約の対象となる賃貸住宅
所在地、物件の名称、構造、面積、住戸部分(部屋番号、住戸内の設備等)、その他の部分(廊下、階段、エントランス等)、建物設備(ガス、上水道、下水道、エレベーター等)、附属設備等(駐車場、自転車置き場等)等について記載し、説明すること。
(3)契約期間に関する事項
・契約の始期、終期、期間及び契約の類型(普通借家契約、定期借家契約)を記載し、説明する必要がある。
・特に、契約期間は、家賃が固定される期間ではないことを記載し、説明すること。
(4)マスターリース契約の相手方に支払う家賃の額、支払期日、支払方法等の条件並びにその変更に関する事項
・サブリース業者がオーナーに支払う家賃の額、支払期限、支払い方法、家賃改定日等について記載し、説明すること(家賃の他、敷金がある場合も同様とする。)。
・サブリース業者がオーナーに支払う家賃の設定根拠について、近傍同種の家賃相場を示すなどして記載し、説明すること。
・特に、契約期間が長期である場合などにおいて、オーナーが当初の家賃が契約期間中変更されることがないと誤認しないよう、家賃改定のタイミングについて説明し、当初の家賃が減額される場合があることを記載し、説明すること。
・さらに、契約において、家賃改定日が定められていたとしても、その日以外でも、借地借家法に基づく減額請求ができることについても記載し、説明すること。(詳細は⑭)
・また、入居者の新規募集や入居者退去後の募集に、一定の時間がかかるといった理由から、サブリース業者がオーナーに支払う家賃の支払いの免責期間を設定する場合は、その旨を記載し、説明すること。
(5)サブリース業者が行う賃貸住宅の維持保全(※2)の実施方法
・サブリース業者が行う維持保全の内容について、回数や頻度を明示して可能な限り具体的に記載し、説明すること。
・維持保全の内容としては、住戸や玄関、通路、階段等の共用部分の点検・清掃等、電気設備、水道設備、エレベーター、消防設備等の設備の点検・清掃等、点検等の結果を踏まえた必要な修繕等が考えられる。
・賃貸住宅の維持保全と併せて、入居者からの苦情や問い合わせへの対応を行う場合は、その内容についても可能な限り具体的に記載し、説明すること。
・なお、維持又は修繕のいずれか一方のみを行う場合や入居者からの苦情対応のみを行い維持及び修繕(維持・修繕業者への発注等を含む。)を行っていない場合であっても、その内容を記載し、説明することが望ましい。
※2
「賃貸住宅の維持保全」とは、居室及び居室の使用と密接な関係にある住宅のその他の部分である、玄関・通路・階段等の共用部分、居室内外の電気設備・水道設備、エレベーター等の設備等について、点検・清掃等の維持を行い、これら点検等の結果を踏まえた必要な修繕を一貫して行うことをいう。
例えば、定期清掃業者、警備業者、リフォーム工事業者等が、維持又は修繕の「いずれか一方のみ」を行う場合や、エレベーターの保守点検・修繕を行う事業者等が、賃貸住
宅の「部分のみ」について維持から修繕までを一貫して行う場合、入居者からの苦情対応のみを行い維持及び修繕(維持・修繕業者への発注等を含む。)を行っていない場合は、賃貸住宅の維持保全には該当しない。
(6)サブリース業者が行う賃貸住宅の維持保全に要する費用の分担に関する事項
・サブリース業者が行う維持保全の具体的な内容や設備毎に、オーナーとサブリース業者のどちらが、それぞれの維持や修繕に要する費用を負担するかについて記載し、説明すること。
・特に、オーナーが費用を負担する事項について誤認しないよう、例えば、設備毎に費用負担者が変わる場合や、オーナー負担となる経年劣化や通常損耗の修繕費用など、どのような費用がオーナー負担になるかについて具体的に記載し、説明すること。
・また、修繕等の際に、サブリース業者が指定する業者が施工するといった条件を定める場合は、必ずその旨を記載し、説明すること。
(7)マスターリース契約の相手方に対する維持保全の実施状況の報告に関する事項
・サブリース業者が行う維持保全の実施状況について、賃貸人に報告する内容やその頻度について記載し、説明すること。
(8)損害賠償額の予定又は違約金に関する事項
・引渡日に物件を引き渡さない場合や家賃が支払われない場合等の債務不履行や契約の解約の場合等の損害賠償額の予定又は違約金を定める場合はその内容を記載し、説明すること。
(9)責任及び免責に関する事項
・天災等による損害等、サブリース業者が責任を負わないこととする場合は、その旨を記載し、説明すること。
・オーナーが賠償責任保険等への加入をすることや、その保険に対応する損害についてはサブリース業者が責任を負わないこととする場合は、その旨を記載し、説明すること。
(10)転借人の資格その他の転貸の条件に関する事項
・反社会的勢力への転貸の禁止や、学生限定等の転貸の条件を定める場合は、その内容について記載し、説明すること。
(11)転借人に対する⑤の内容の周知に関する事項
・サブリース業者が転借人に対して周知を行う以下に掲げる維持保全の内容についてどのような方法(対面での説明、書類の郵送、メール送付等)で周知するかについて記載し、説明すること。
・サブリース業者が行う維持保全の具体的な内容(住戸や玄関、通路、階段等の共用部分の点検・清掃等、電気設備、水道設備、エレベーター、消防設備等の設備の点検・清掃等、点検等の結果を踏まえた必要な修繕等)、その実施回数や頻度
・サブリース業者が行う入居者からの苦情や問い合わせへの対応の具体的な内容(設備故障・水漏れ等のトラブル、騒音等の居住者トラブル等)、対応する時間、連絡先
(12)マスターリース契約の更新及び解除に関する事項
・オーナーとサブリース業者間における契約の更新の方法(両者の協議の上、更新することができる等)について記載し、説明すること。
・オーナー又はサブリース業者が、契約に定める義務に関してその本旨に従った履行をしない場合には、その相手方は、相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がないときは、契約を解除することができる旨を記載し、説明すること。
・契約の解約の場合の定めを設ける場合は、その内容及び⑧について説明すること。
・契約の更新拒絶等に関する借地借家法の規定の概要については、⑭の内容を記載し、説明すること。
(13)マスターリース契約が終了した場合におけるサブリース業者の権利義務の承継に関する事項
・入居者の居住の安定を図るため、マスターリース契約が終了した場合、オーナーがサブリース業者の転貸人の地位を承継することとする定めを設け、その旨を記載し、説明すること。
・特に、転貸人の地位を承継した場合に、正当な事由なく入居者の契約更新を拒むことはできないこと、サブリース業者の敷金返還債務を承継すること等についてオーナーが認識できるようにすること。
(14)借地借家法その他マスターリース契約に係る法令に関する事項の概要
a. 借地借家法第32条第1項(借賃増減請求権)について
・マスターリース契約を締結する場合、借地借家法第32条第1項(借賃増減請求権)が適用されるため、サブリース業者がオーナーに支払う家賃が、変更前の家賃額決定の要素とした事情等を総合的に考慮した上で、
①土地又は建物に対する租税その他の負担の増減により不相当となったとき
②土地又は建物の価格の上昇又は低下その他の経済事情の変動により不相当となったとき
③近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったとき
は、契約の条件にかかわらず、サブリース業者は家賃を相当な家賃に減額することを請求することができること及び空室の増加やサブリース業者の経営状況の悪化等が生じたとしても、上記①~③のいずれかの要件を充足しない限りは、同条に基づく減額請求はできないことを記載し、説明すること。
・特に、契約において、家賃改定日が定められている場合や、一定期間サブリース業者から家賃の減額はできないものとする、○年間は家賃の減額をできないものとする、オーナーとサブリース業者が合意の上家賃を改定する等の内容が契約に盛り込まれていた場合であっても、借地借家法第32条第1項に基づき、サブリース業者からの家賃の減額請求はできることを記載して説明し、オーナーが、これらの規定により、サブリース業者からの家賃減額はなされ
ないと誤認しないようにすること。
・さらに、借地借家法に基づき、サブリース業者は減額請求をすることができるが、オーナーは必ずその請求を受け入れなければならないわけでなく、オーナーとサブリース業者との間で、変更前の家賃決定の要素とした事情を総合的に考慮した上で、協議により相当家賃額が決定されることを記載し、説明すること。なお、家賃改定額について合意に至らない場合は、最終的には訴訟によることとなる。(※3)
※3
借地借家法に基づく家賃減額請求権の行使が認められた平成 15 年 10 月 23 日の最高裁判決においては、「家賃減額請求の当否や相当家賃額を判断するに当たっては、賃貸借契約の当事者が家賃額決定の要素とした事情を総合考慮すべきであり、特に本件契約においては、上記の家賃保証特約の存在や保証家賃額が決定された事情をも考慮すべきである。」とされ、その後の差戻審において、「被控訴人が本件の事業を行うに当たって考慮した予想収支、それに基づく建築資金の返済計画をできるだけ損なわないよう配慮して相当家賃額を決定しなければならないというべきである。」と判断された。
b. 借地借家法第28条(更新拒絶等の要件)について
・普通借家契約としてマスターリース契約を締結する場合、借地借家法第28条(更新拒絶等の要件)が適用されるため、オーナーから更新を拒絶する場合には、
①オーナー及びサブリース業者(転借人(入居者)を含む)が建物の使用を必要とする事情
②建物の賃貸借に関する従前の経過
③建物の利用状況及び建物の現況並びにオーナーが建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えにサブリース業者(転借人(入居者)を含む)に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮
して、正当の事由があると認められる場合でなければすることができない旨を記載し、説明すること。
・特に、契約において、オーナーとサブリース業者の協議の上、更新することができる等の更新の方法について定められている場合に、オーナーが、自分が更新に同意しなければ、サブリース業者が更新の意思を示していても、契約を更新しないことができると誤認しないようにすること。
c. 借地借家法第38条(定期建物賃貸借)について
・定期借家契約としてマスターリース契約を締結する場合、家賃は減額できないとの特約を定めることにより、借地借家法第32条の適用はなく、サブリース業者から家賃の減額請求はできないことを記載し、説明すること。
・定期借家契約としてマスターリース契約を締結する場合、契約期間の満了により、契約を終了することとできることを記載し、説明すること。
・定期借家契約としてマスターリース契約を締結する場合、オーナーからの途中解約は、原則としてできないことを記載し、説明すること。
「重要事項説明書の記載例」など国土交通省の書面を活用する
サブリース新法における「重要事項説明書」の内容を見てきましたが、とても細かい内容となっています。
実際に「重要事項説明書」を作成する際には、国土交通省のテンプレート(ひな形)や記載例を参考にするのがよいでしょう。(下記)
入居者と契約する際の「標準契約書」(国土交通省)
「サブリース住宅標準契約書(令和2年12月版 家賃債務保証業者型)」[PDF形式]
・承諾書例 [Word形式]
「サブリース住宅標準契約書(令和2年12月版 連帯保証人型)」[PDF形式]
・契約書本体 [Word形式]
・承諾書例 [Word形式]
「サブリース住宅定期建物賃貸借標準契約書(令和2年12月版 家賃債務保証業者型)」[PDF形式]
・契約書本体 [Word形式]
・承諾書例 [Word形式]
「サブリース住宅定期建物賃貸借標準契約書(令和2年12月版 連帯保証人型)」[PDF形式]
・契約書本体 [Word形式]
・承諾書例 [Word形式]
重要事項の変更・契約の更新について(サブリース新法)
●マスターリース契約中に重要事項の内容に変更があった場合
●マスターリース契約の更新時に内容の変更がある場合
●新法が施行される前の契約であっても、更新時に内容の変更がある場合
●契約期間中に物件が売却された場合(新オーナーに対して)
特定賃貸借契約が締結されている家屋等が、
契約期間中現賃貸人から売却され、賃貸人たる地位が新たな賃貸人に移転し、 従前と同一内容によって当該特定賃貸借契約が承継される場合であっても、特定転貸事業者は、 賃貸人たる地位が移転することを認識した後、遅滞なく、新たな賃貸人に特定賃貸借契約重要事項説明書の交付及び特定賃貸借 契約重要事項説明をするものとする。
特定賃貸借標準契約書(マスターリース契約書)の記載事項
- マスターリース契約を締結するサブリース業者の商号、名称又は氏名及び住所
- マスターリース契約の対象となる賃貸住宅
- 契約期間に関する事項
- マスターリース契約の相手方に支払う家賃その他賃貸の条件に関する事項
- サブリース業者が行う賃貸住宅の維持保全の実施方法
- サブリース業者が行う賃貸住宅の維持保全に要する費用の分担に関する事項
- マスターリース契約の相手方に対する維持保全の実施状況の報告に関する事項
- 損害賠償額の予定又は違約金に関する定めがあるときは、その内容
- 責任及び免責に関する定めがあるときは、その内容
- 転借人の資格その他の転貸の条件に関する事項
- 転借人に対するサブリース業者が行う賃貸住宅の維持保全の実施方法の周知に関する事項
- 契約の更新又は解除に関する定めがあるときは、その内容
- マスターリース契約が終了した場合におけるサブリース業者の権利義務の承継に関する事項
ただし、重要事項説明書とマスターリース契約書の「両書面を一体で交付する」ことはできませんので注意が必要です。
まとめ
※サブリース業者に対する規制・内容については、下記のサイトの解説を参考にしてください。
Ⓒシェアハウス経営の教科書
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