不動産投資のサイトに「健美家」(けんびや)というサイトがあります。
その中の賃貸経営ニュースに「シェアハウス」の記事ページがありました。
そのページのタイトルに「築50年の工場と住宅をシェアハウスに~」とあり、筆者としてはちょっと気になることがあったので確認してみることにしました。
このシェアハウスの運営会社に実際に話をきいてみました。
その内容も含め、今回のコンテンツでは「古い建物をシェアハウスにするときの重要なポイント」をまとめました。
オーナーや管理会社の方や、これからシェアハウスの運営を検討する方は、参考にしてください。
目次(もくじ)
築50年の工場+住宅をシェアハウスにした事例
健美家という不動産投資のサイトの下記のページでシェアハウスが紹介されていました。
「借地を活かして高収益!築50年の工場+住宅をDIYでシェアハウス&貸しスペースに」
https://www.kenbiya.com/ar/ns/for_rent/share_house/3435.html#pagetop
築50年の工場と住宅をリフォームしてシェアハウスにした物件とのことです。
土地は借地ということもあり、このシェアハウスの表面利回りは15%以上になるようです。
このシェアハウスの気になる点:建物の築年数と工場
筆者は、10年以上のシェアハウスの運営・管理をしてきています。
その経験からすると、「築50年の工場+住宅」をシェアハウスにするというところが気になりました。
築50年ということは1968年(昭和43年)に建てられた物件です。
震度5強程度の地震で検証した、いわゆる「旧耐震基準」の時代に建てられたものです。
旧耐震基準とは(政府広報オンライン)
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201402/3.html
わかりやすく言うと、「耐震性能が現在の基準には合わないとても古い工場をリフォーム工事してシェアハウスにしている」ということです。
この建物は現在の基準である「震度6強~7」に達する大規模な地震がきても倒壊・崩壊しないことは検証されているのでしょうか。
シェアハウス管理会社にきいてみた(取材)
築50年の古い物件をシェアハウスにして入居者の安全に問題はないのか気になります。
そこで、この物件の管理会社の担当者に話をきいてみました。
会社の代表者であり、物件の所有者でもあるようです。
専門家にも見てもらっていません。
役所の見解の確認や、手続きなどはしていますか?
この物件は、耐震補強工事はしていないとの回答でした。
ということは当然、「耐震基準適合証明書」も発行されていない物件ということになります。
(耐震基準適合証明書は、建物の耐震性が基準を満たすことを建築士等が証明する書類です。)
シェアハウスにリフォーム工事をされてはいますが、話をきいた限りでは、建物が耐震基準を満たしていない物件のようです。
ちなみに、シェアハウスの内装は主にオーナー(このシェアハウスの管理会社の代表)がDIYしているとのことです。
古い建物をシェアハウスにするときの注意点
不動産の貸主は、「安心・安全な住宅を提供する」という大前提があります。
収益性や利回りよりも優先するとても重要なことです。
シェアハウスもアパートと同様に、多くの入居者が暮らす建物です。
大規模な地震があったときには、住人に与える影響も大きくなります。
そのため、シェアハウスを計画する際には必ず耐震補強工事をおこない、「耐震基準適合証明書」を受領するようにしましょう。
(参考)耐震適合証明書とは(木耐協)
また、すでに運営している物件であっても耐震補強工事を行うことは可能です。
耐震補強などの必要な工事をせずに地震で入居者が亡くなった場合、オーナーや管理会社はその責任を問われる可能性があります。
(参考)
神戸地裁 判例 (阪神・淡路大震災)
賃貸マンションの貸主の土地工作物責任(約1億3000万円の支払いを命じる)
まとめ(シェアハウスの耐震補強工事)
1981年以前の築年数が古い建物を改修(リフォーム)してシェアハウスにする場合には、耐震性の安全基準を高めることが重要です。
オーナーや管理会社は、入居者の安全性を第一に考えて運営をする必要があります。
- 旧耐震基準(1981年・昭和56年以前)の建物は注意が必要
- リフォーム工事の際に耐震補強工事が必要になる
- 売買やリフォーム時には「耐震基準適合証明書」を確認すること
- オーナーや管理会社は建物・入居者の安全性を確保することが重要
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