賃貸住宅のオーナーにとっては、物件のメンテナンスやリフォーム工事は収益面に与える影響も大きく、気になる方も多いと思います。
実は、サブリース新法の重要事項説明では、賃貸住宅の「維持保全」についても規定しています。
なぜなら、維持保全の費用は高額になることもあり、内容をオーナー側が把握していないとサブリース業者とのトラブルに発展しかねないからです。
このコンテンツでは、マスターリース契約の重要事項説明に必要な、サブリース業者による「維持保全」について解説しています。
サブリース業者とのトラブルを防止するためにも、不動産オーナーや投資家は物件の「維持保全」について、重要事項説明での説明事項をよく確認し、内容を把握することが重要です。
国土交通省が公表している「重要事項説明書の記載例」を見ながら、詳細を確認していきましょう。
維持保全の「実施方法」について
重要事項説明(マスターリース契約)では、サブリース業者が行う「賃貸住宅の維持保全」の内容について、回数や頻度を明示して可能な限り具体的に記載し、説明しなければなりません。
「賃貸住宅の維持保全」とは、玄関・通路・階段等の共用部分、居室内外の電気設備・水道設備、エレベーター等の設備等について、点検・清掃等の維持を行い、これら点検等の結果を踏まえた必要な修繕を一貫して行うことをいいます。
オーナー側は、自分の物件のどの箇所がどのように維持・保全されるのかを確認・把握しておくことが重要です。
サブリース業者が維持保全の実施を他の業者などへ「委託」する場合は、委託先も記載します。
オーナー側は、物件の維持保全をおこなう「委託先の業者」も把握しておきましょう。
また、賃貸住宅の維持保全と併せて、「入居者からの苦情や問い合わせへの対応」を行う場合は、その内容についても可能な限り具体的に記載し、説明する必要があります。
建物だけでなく、入居者や近隣に対する対応についても、オーナー側は確認しましょう。
なお、維持または修繕のいずれか一方のみを行う場合や、入居者からの苦情対応のみを行い維持および修繕(維持・修繕業者への発注等を含む。)を行っていない場合であっても、サブリース業者はその内容を重要事項説明書に記載して説明することが望ましい、としています。(国土交通省)
(維持保全に該当しない例)
・定期清掃業者、警備業者、リフォーム工事業者等が、維持または修繕の「いずれか一方のみ」を行う場合
・エレベーターの保守点検・修繕を行う事業者等が、賃貸住宅の「部分のみ」について維持から修繕までを一貫して行う場合
・入居者からの苦情対応のみを行い維持および修繕(維持・修繕業者への発注等を含む。)を行っていない場合
維持保全に要する「費用の分担」に関する事項
サブリース業者が行う維持保全の具体的な内容や設備ごとに、オーナーとサブリース業者のどちらが、「それぞれの維持や修繕に要する費用を負担するか」について、重要事項説明書に記載して説明する必要があります。
物件のオーナーにとっては、賃貸住宅のメンテナンスやリフォーム工事の費用を「どちらが負担するのか」は大きな問題です。
内容や金額によってはキャッシュフローにも大きな影響を及ぼしますので、「費用の分担」は必ず確認・把握することが重要です。
重要事項説明においては、「オーナーが費用を負担する事項」について誤認しないように記載・説明がなされなければなりません。
たとえば、設備ごとに費用負担者が変わる場合や、オーナー負担となる経年劣化や通常損耗の修繕費用など、「どのような費用がオーナー負担になるか」について、具体的な記載と説明がポイントです。
また、修繕(リフォーム工事)等の際に、「サブリース業者が指定する業者が施工する」といった条件を定める場合は、必ずその旨を記載して説明しなければなりません。
他の業者への相見積もりができなくなる、などの影響もありますので、オーナー側は要チェックなポイントです。
維持保全の「実施状況の報告」に関する事項
サブリース業者は、維持保全の実施状況について、「賃貸人に報告する内容やその頻度」について記載し、説明しなければなりません。
サブリース業者が提示する「報告の内容・頻度」をよく確認します。
また、オーナー側は、自身が「報告してほしい内容や頻度」があれば事前にサブリース業者に伝え、重要事項説明書に記載するように協議しましょう。
不動産オーナー・投資家の注意点(まとめ)
物件の「維持保全」について、サブリース業者は重要事項説明書に「実施方法」・「費用の負担」を記載して説明しなければなりません。
特に、「どの費用を誰が負担するか」については、オーナー側はしっかりと確認しておきましょう。
リフォーム工事等の際のトラブルを防ぐためにも、重要なポイントです。
また、「維持保全」はサブリース業者がすべて行うとは限りません。
サブリース業者が一部の業務を「他の業者に委託」することもあります。
たとえば、樹木の管理や消防設備の点検などを専門の業者に委託するなど。
オーナー側は、重要事項説明書の記載をよく確認し、「維持保全」のどの業務をどの業者が担当しているのかを把握しておくことが重要です。
重要事項説明書の記載例(国土交通省)