不当な勧誘等の禁止 の「具体例」とは?
サブリース新法の具体例を解説

 

サブリース新法(賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律)では、サブリース業者や勧誘者に対して不動産オーナー・投資家への「不当な勧誘等の禁止」を規定しています。

そして、国土交通省は、客観的に判断してオーナー等の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものについて、「事実の不告知」・「不実告知」に該当すると考えられる場合を例示しています。

 

サブリース事業やマスターリース契約についての重要なものに対して、サブリース業者や勧誘者等から事実が告げられなかったり、事実でないことを告げられたりすれば、賃貸住宅の経営者は大きな損害を被ります。

 

また、「オーナー等の保護に欠けるもの」として、勧誘方法などにも規制があります。

 

オーナー自らも「不当な勧誘等の禁止」の事例を確認して、正しい情報を入手できるようにしておくことが重要になります。

「事実の不告知」とは (具体例)

「故意に事実を告げない」ことで、事実を認識しているにもかかわらず、あえてこれを告げない行為をいいます。
以下のような点について、サブリース業者や勧誘者等が(マスターリース契約)勧誘時にオーナーにはあえて伝えず、サブリース事業のメリットのみを伝えるような勧誘行為です。
  • 将来の家賃減額リスクがあること
  • 契約期間中であってもサブリース業者から契約解除の可能性があること
  • 借地借家法の規定によりオーナーからの解約には正当事由が必要であること
  • オーナーの維持保全、原状回復、大規模修繕等の費用負担があること等
  • 家賃見直しの協議で合意できなければ契約が終了する条項
  • 一定期間経過ごとの修繕に応じない場合には契約を更新しない条項サブリース業者側に有利な条項があり、これに応じない場合には一方的に契約を解除される)
  • マスターリース契約にて新築当初の数ヶ月間の借り上げ賃料の支払い免責期間があること
 
 

「不実告知」とは? (具体例)

「故意に不実のことを告げる行為」で、事実でないことを認識していながらあえて事実に反することを告げる行為をいいます。
虚偽を告げるという点で、「事実の不告知」に比べて悪質と言えます。
 
借地借家法により、オーナーに支払われる家賃が減額される場合があるにもかかわらず、 断定的に以下のようなことを伝える行為。
  • 都心の物件なら需要が下がらないのでサブリース家賃も下がることはない」
  • 「当社のサブリース方式なら入居率は確実であり、絶対に家賃保証できる」
  • 「サブリー ス事業であれば家賃 100%保証で、絶対に損はしない」
  • 家賃収入は将来にわたって確実に保証される」
原状回復費用をオーナーが負担する場合もあるにもかかわらず、「原状回復費用はサブリース会社が全て負担するので、入退去で大家さんが負担することはない」といったことを伝える行為。
 
大規模な修繕費用はオーナー負担であるにもかかわらず、維持修繕費用は全て事業者負担である」といったことを伝える行為。 
 
近傍同種の家賃よりも明らかに高い家賃設定で、持続的にサブリース事業を行うことができないにもかかわらず、周辺相場よりも当社は高く借り上げることができる」といったことを伝える行為。
近傍同種の家賃よりも著しく低い家賃であるにもかかわらず、周辺相場を考慮すると、 当社の借り上げ家賃は高い」といったことを伝える行為。
 

「保護に欠けるもの」とは?(具体例) 

違反を示す写真画像

オーナーの「保護に欠けるもの」の事例

 

国土交通省令では、特定賃貸借契約(マスターリース契約)に関する行為であって、特定賃貸借契約の相手方又は相手方となろうとする者(オーナー等)の「保護に欠けるもの」について規定しています。

 

オーナー等を威迫する行為

「マスターリース契約を締結若しくは更新させ、又はマスターリース契約の申込みの撤回若しくは解除を妨げるため、オーナー等を威迫する行為」

威迫する行為とは、脅迫とは異なり、相手方に恐怖心を生じさせるまでは要しないが、 相手方に不安の念を抱かせる行為が該当します。
例えば、相手方に対して、「なぜ会わないのか」、「契約しないと帰さない」などと声を荒げ、面会を強要したり、拘束するなどして相手方を動揺させるような行為が該当します。

迷惑な時間の電話・訪問による勧誘

「マスターリース契約の締結又は更新についてオーナー等に迷惑を覚えさせるような時間に電話又は訪問により勧誘する行為」 

「迷惑を覚えさせるような時間」については、オーナー等の職業や生活習慣等に応じ、 個別に判断されます。

一般的には、オーナー等に承諾を得ている場合を除き、特段の理由が無く、午後9時から午前8時 までの時間帯に電話勧誘又は訪問勧誘を行うことは、「迷惑を覚えさせるような時間」の勧誘に該当します。 

「電話勧誘」または「訪問勧誘」を禁止しているものであることから、これら以外の勧誘を「迷惑を覚えさせるような時間」に行ったとしても本規定の禁止行為の対象とはなりません。 

例えば、オーナー等がサブリース業者の事務所に訪問した場合などは禁止されません。

 

深夜・長時間の勧誘など

「マスターリース契約の締結又は更新について深夜又は長時間の勧誘その他の私生活又は業務の平穏を害するような方法によりオーナー等を困惑させる行為」 

「オーナー等を困惑させる行為」については、個別の事例ごとに判断がなされますが、下記のような事例がありえます。
  • 深夜の勧誘
  • 長時間の勧誘
  • オーナー等が勤務時間中であることを知りながら、執ような勧誘を行ってオーナー等を困惑させること
  • 面会を強要してオーナ ー等を困惑させること

断っても執ように勧誘する行為 

「マスターリース契約の締結又は更新をしない旨の意思(当該契約の締結又は更新の勧誘を受けることを希望しない旨の意思を含む。)を表示したオーナー等に対して執ように勧誘する行為 」

「契約の締結又は更新をしない旨の意思」は、口頭であるか、書面であるかを問わず、 契約の締結又は更新の意思がないことを明示的に示すものが該当します。
具体的には、オ ーナー等が「お断りします」、「必要ありません」、「結構です」、「関心ありません」、「更新しません」など明示的に契約の締結または更新意思がないことを示した場合が該当します。
また、「(当該勧誘行為が)迷惑です」など、勧誘行為そのものを拒否した場合も当然該当することとなります。
オーナー等がマスターリース契約を締結しない旨の意思表示を行った場合には、引き続き勧誘を行うことのみならず、その後、改めて勧誘を行うことも「勧誘を継続すること」に該当するので禁止されます。
同一のサブリース業者の他の担当者による勧誘も同様に禁止されます。 
電話勧誘または訪問勧誘などの勧誘方法、自宅または会社などの勧誘場所の如何にかかわらず、オーナー等が「契約を締結しない旨の意思」を表示した場合には、意思表示後に再度勧誘する行為は禁止され、1度でも再勧誘行為を行えば、サブリース新法「不当な勧誘等の禁止」(29条) に違反することとなります。

「更新」についての注意点

オーナーとサブリース業者とのマスターリース契約の「更新」については注意が必要です。

契約の更新を拒絶する場合には、オーナー側に「正当事由」が必要となります。(借地借家法 第28条 更新拒絶等の要件)

サブリース業者との契約更新を口頭や書面で断ったとしても、法的に認められない場合もあります。
正当事由
① 建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む)が建物の使用を必要とする事情
② 建物の賃貸借に関する従前の経過
③ 建物の利用状況及び建物の現況
④ 建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出
※ 賃貸人:オーナー  賃借人:サブリース業者

借地借家法 第28条(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)

 建物の賃貸人による第26条第1項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

不動産オーナー・投資家のための重要なポイント

重要ポイントを示すスーツの男性の写真画像

サブリース事業を検討する際のポイント

 

サブリース事業やマスターリース契約を検討するうえで、サブリース業者や勧誘者(建設業者・不動産業者など)による勧誘時の説明には様々な情報が含まれます。

しかし、契約や収益にかかわる重要な事実が告げられなかったり、事実でないことを告げられたりすれば、不動産オーナー・投資家は大きな損害を被ってしまいます。

賃貸経営に関わる重要な情報をしっかりと取捨選択できるように、備えておくことが重要です。

 

また、「不当な勧誘行為」についても注意が必要です。

電話・訪問などが常識を疑うような時間や回数だったり、威迫する言動などがあったりすれば、オーナー側は冷静な判断を下すことができません。

このコンテンツ内で紹介した「不当な勧誘等の禁止」の具体例を確認して、トラブルの防止に努めてください。

 

「不当な勧誘等の禁止」について、総合的に解説したコンテンツは、下記をご覧ください。