シェアハウスの経営を考えるときには、共同生活における「防犯性」を気にする人もいると思います。
入居者同士が一つの建物内で生活して、大きなトラブルが発生しないのか不安もあるかもしれません。
このコンテンツでは、シェアハウスのセキュリティ対策として「3つの防犯ポイント」について解説しています。
入居者に安心感を与えるセキュリティの設計について、設備(ハード)とルール(ソフト)の両面から理解してシェアハウスの企画・経営に役立てることができます。
20棟・300室のシェアハウス管理会社で10年以上の経験を持つ筆者が、わかりやすくお伝えします。
目次(もくじ)
シェアハウス 3つの防犯ポイント
- 玄関・ポスト
- 規則・ルール
- その他(共用部など)
シェアハウスの防犯性を高める(セキュリティ対策)には、上記の3つのポイントをおさえることが大切です。
「玄関」は、入居者全員が使用する共用部ですので最も重要な部分です。ポストの防犯にも注意する必要があります。
設備の部分以外の「規則やルール」もしっかりと作成しましょう。シェアハウスの安全性は入居者のモラルも重要です。
その他、共用部の利用やイベントなどにも配慮が必要です。
それぞれ順番にくわしく見ていきましょう。
シェアハウスの防犯セキュリティ① 「玄関」
シェアハウスの玄関は、多くの人が出入りすることになります。
入居者だけでなく、ときには友人や家族がくることがあるかもしれません。
そのため玄関のカギは、使いやすさだけでなく防犯性が高いものでなければなりません。
簡単にカギの複製(コピー)ができないようなものや、運営者が管理しやすい商品やシステムを採用するのがよいでしょう。
たとえば、シェアハウスでは玄関に「暗証番号キー」を設置することも多くあります。
暗証番号を知っている人だけが出入りでき、鍵の作成や紛失の心配もありません。
その他、カードキーなどを採用することもあります。
ポストは、カギ付きのものを入居者の人数に合わせて設置するのがベストです。
それが難しい場合は「大型の共用ポスト」を設置するケースもありますが、入居者全員の郵便物が混ざってしまうので、プライバシーが保たれないというリスクがあります。
また、玄関に「防犯カメラ」を設置する場合もあります。
たとえば、女性専用のシェアハウスに設置したり、抑止力としてダミー(偽物)のカメラを設置したりすることがあります。
シェアハウスの玄関のつくり方は、下記のコンテンツで詳しく解説しています。
シェアハウスの防犯セキュリティ② 「契約・ルール」
シェアハウスの防犯性を保つには、ルールや規則も重要になります。
契約書、ハウスルール、規約などを活用して入居者全員に守ってもらうようにします。
- 契約・ルール(定期借家契約)
- 入居時の審査(身分証明書など)
- 友人や家族の訪問・宿泊を可能にするか
- 入居者以外にも暗証番号を教えるか
- 友人・家族の氏名・連絡先を事前に確認するか
- 第三者の利用を申告制にするか
シェアハウスの入居契約は「定期借家契約」をむすぶことが一般的です。
通常のアパート等の契約と異なり、契約期間を明確に定めて賃貸借契約をおこないます。
たとえば、契約期間は「1か月」から設定することができます。
そのため、シェアハウスにそぐわない入居者がいても期間の満了により賃貸借契約を「終了する」ことができます。(更新はない)
また、シェアハウスは様々な人と交流できるのが魅力のひとつです。
そのため、友人・家族の訪問をOKにしたり、宿泊を認めたりする物件もあります。
基本的には、認めるほうがシェアハウスの意義や交流・活性化につながります。
これはオーナーや管理会社の方針にもよるところが大きくなります。
しかし、トラブルや防犯やモラルの低下につながる危険性もありますので、ルールづくりはよく検討する必要があります。
ハウスの訪問がOKであれば、彼氏や彼女を呼ぶ人もいるでしょうし、シェアハウスに関係のない人が出入りする可能性もあります。
入居者は身分証明書を確認していますが、それ以外の部外者は確認ができません。
さらに、「玄関の暗証番号」が外部にもれてしまうという危険もあります。
ルールづくりのポイント
- 身元 (訪問者の身分証明書を確認するか)
- 時間 (訪問を認める時間制限する)
- 宿泊 (宿泊を認めるかどうか)
- 期間 (宿泊できる日数を決める)
- 家賃 (宿泊する際の金額を設定するかどうか)
このように、訪問や宿泊に条件を付けたり、定期的に暗証番号を変えたりするなど、運営側の管理が重要になります。
玄関の暗証番号キーの製品の中には、「一時的に有効な番号」を発行することができるものもあります。
スマートロックなどに多い機能ですが、そのような暗証番号が設定できれば防犯性が高くなるでしょう。
オーナーや管理会社が、「シェアハウスでどのような入居者にどのように生活してほしいか」、という理念に沿った「ルール・規則」をつくることが重要です。
そして、作成したルールをしっかりと守ってもらう「管理・運営」が必要になります。
シェアハウスの防犯セキュリティ③ 「その他」
その他の防犯・セキュリティについて見ていきましょう。
「女性専用のシェアハウス」は入居者のセキュリティに関する意識が高くなります。
そのため、セコムなどのホームセキュリティサービスを設置するシェアハウスもあります。
しかし、毎月の利用料がかかりますし、そもそも「ハウスが完全に留守になる」というタイミングが少ない場合もあります。
たとえば、最後に出かける人が必ずセキュリティのロックをかけなければなりませんし、間違ってロックをかけたり作動したりすると頻繁に警備員が駆けつけることになります。
もともとホームセキュリティサービスは、留守になる時間が長いときに導入するものです。
そのため筆者の経験からは、総合的に考えてもシェアハウスに導入するのは難しいと思っています。
シェアハウスのリビングやキッチンなどの共用部にも防犯カメラを設置する場合があります。
これは、シェアハウスのコンセプトやオーナー・管理会社の方針も関係してきます。
共用部の防犯カメラは、契約書・ハウスルールの内容や実施状況などをふまえて導入を検討します。
苦情やトラブルが何度もあったり、ルールを守らない入居者がいたりする場合には、防犯カメラを設置する必要も出てきます。
映像が記録してあれば、実際にトラブルがあった場合でもより正確に対応が可能になります。
たとえば、リビングで騒いで迷惑な入居者がいたとしても、カメラの記録があれば人物が特定できるので注意喚起を具体的にすることができます。
また、今後のルール違反が起こらないようにする「抑止力」としての効果もあります。
ただし、共用部の防犯カメラは入居者の生活の一部を記録することになるので、プライバシーに対する影響も考慮しなければなりません。
トラブル防止とのバランスを考えて、導入は慎重に検討しましょう。
シェアハウスは一人暮らしより安全な面がある
シェアハウスは共同生活ですので、入居者にとって安心・安全な仕組みを導入することは大切です。
入居時の審査をしっかりと行ない、契約書・ハウスルールを徹底することで防犯性を確保することができます。
オーナーやこれからシェアハウス経営を考えている人の中には、「シェアハウスはトラブルがある」などの不安もあると思います。
しかし、しっかりとした仕組みがあれば、シェアハウスはワンルームなどの一人暮らしよりも安全な面も多くあります。
たとえば、ほとんどのシェアハウスは入居前に見学をおこない、入居希望者と色々と話をして多くのコミュニケーションを取ります。
協調性がないと判断した人とは、契約をしないことも多くあります。
また、契約時には契約書・ハウスルールを書面と口頭で説明します。
身分証明書、実家、勤務先、学校などの情報も確保します。
そのため、何かあってもすぐに対応することが可能になります。
シェアハウスは、女性が安心して生活できる面もあります。
誰かしら在宅していることが多く、人の気配があるため空き巣対策にも有効です。
何かあっても助けてくれたり相談したりできる仲間がそばにいることは、心強いですし安心ができます。
そのため、女性のストーカー被害なども起こりにくく、ワンルーム等の一人暮らしよりも安全な面があります。
もちろん設備や書類を整えても、それを活用して実践しなければ意味がありません。
管理会社がハウスを定期的に巡回し、ルールの順守をチェックする体制が必要です。
オーナーが管理会社を委託するときには、提案書面を見るだけでなく、「どこまで実行しているのか」を見極める必要があります。
また「自主管理」の場合は、シェアハウスの安全・安心を確保するためにオーナー自らがしっかりと管理を行わなければなりません。
まとめ
シェアハウスは、女性も多く利用しています。(女性専用の物件も多い)
そのため、入居者に安心な生活を提供するためにもセキュリティの設計・ルールがとても重要になります。
- 玄関の設備で対策をおこなう
- 契約書・ハウスルールをつくり徹底する
- ハウス内の共用部のセキュリティ対策も検討する
- ワンルームの一人暮らしよりも安全性がある面も多い
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