2021年6月15日に「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」が施行されました。
賃貸住宅の管理会社が物件所有者(オーナー)との管理受託契約(賃貸管理契約)を締結する前に「重要事項説明」を義務付けています。(IT重説も可能)
「管理受託契約 重要事項説明書」は、国土交通省令によって記載する事項が定められています。
管理会社だけでなく不動産オーナーも管理受託契約前の「重要事項説明書」の内容について理解をしておくことが重要です。
このコンテンツでは、国土交通省が発表している「運用にあたっての考え方」に沿って、ポイントをわかりやすく解説します。
重要事項説明書のひな形(テンプレート)や記載例も紹介します。
目次(もくじ)
「重要事項説明」を行う者とは(管理受託契約)
第13条 【管理受託契約の締結前の書面の交付】
賃貸住宅管理業者は、管理受託契約を締結しようとするときは、管理業務を委託しようとする賃貸住宅の賃貸人(賃貸住宅管理業者である者その他の管理業務に係る専門的知識及び経験を有すると認められる者として国土交通省令で定めるものを除く。)に対し、当該管理受託契約を締結するまでに、管理受託契約の内容及びその履行に関する事項であって国土交通省令で定めるものについて、書面を交付して説明しなければならない。
2 賃貸住宅管理業者は、前項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、管理業務を委託しようとする賃貸住宅の賃貸人の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって国土交通省令で定めるものをいう。第三十条第二項において同じ。)により提供することができる。この場合において、当該賃貸住宅管理業者は、当該書面を交付したものとみなす。(管理受託契約 重要事項説明にITを活用する場合について)
管理受託契約 重要事項説明は、「賃貸人から委託を受けようとする賃貸住宅管理業者自らが行う」必要があることに注意が必要です。
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の第13条に基づく管理受託契約 重要事項説明は、「業務管理者」の管理及び監督の下に行われる必要があります。
また、「業務管理者又は一定の実務経験を有する者など専門的な知識及び経験を有する者」によって行われることが望ましい、としています。(国土交通省)
「業務管理者」は、賃貸住宅管理業者の営業所又は事務所において行われる管理業務の実施の適正性を確保し、管理受託契約に基づく管理業務が適切に履行されるよう、従業員の指導監督を行うために必要な知識及び経験を有する者であり、その業務の管理及び監督を行う役割を担います。
「業務管理者」になるための要件として、管理業務の実務経験を2年以上(※)有し、かつ、登録証明事業による証明を受けている者であること、又は、管理業務の実務経験を2年以上有する宅地建物取引士で、管理業務の実務についての講習(指定講習)を修了した者であることが必要です。
※施行後1年間(移行期間)については、賃貸不動産経営管理士で一定の講習(移行講習)を修了した者についても、「登録証明事業による証明を受けている者」とみなされ、業務管理者の要件を満たすこととなります。
※管理業務の実務経験については、別途実務講習の修了等をもって代えることも可能です。
また、重要事項説明は、「管理受託契約を締結する賃貸住宅管理業者の従業員」が行う必要があります。
直接の契約当事者ではない、他の営業所の従業員、出向先の社員等へ重要事項の説明を委託することはできません。
一方、賃貸住宅管理業者の使用人としての業務(重要事項説明)を出向元の指揮命令系統に服して行うこととしていることが確認できる「出向先及び出向労働者三者間の取決め」において、出向する者が出向元の重説業務を行い、出向元が指揮命令権を持つと明記されているのであれば「重要事項説明の委託」は可能です。
重要事項説明をおこなうタイミング(管理受託契約)
管理受託契約 重要事項説明については、賃貸人が契約内容を十分に理解した上で契約を締結できるよう、「説明から契約締結までに1週間程度の期間をおくこと」が望ましいとされています。
説明から契約締結までの期間を短くせざるを得ない場合には、事前に管理受託契約重要事項説明書等を送付し、その送付から一定期間後に、説明を実施するなどして、管理受託契約を委託しようとする者が契約締結の判断を行うまでに十分な時間をとることが望ましいでしょう。
相手方に応じた説明が必要(管理受託契約)
賃貸住宅管理業者は、賃貸人が管理受託契約重要事項説明の対象となる場合は、その者が管理受託契約について一定の知識や経験があったとしても、必要な記載事項の十分な説明をすることが重要です。
その上で、説明の相手方の知識、経験、財産の状況、賃貸住宅経営の目的やリスク管理判断能力等に応じた説明を行うことが望ましいでしょう。
管理業者は、説明の相手方の属性やこれまでの賃貸住宅経営の実績に留意する必要があります。
また、不動産書面の電子化やITによる説明も可能になっています。
詳細は、下記のコンテンツで解説しています。
「重要事項説明書」の記載事項・説明事項(管理受託契約)
「管理受託契約の内容及びその履行に関する事項であって国土交通省令で定めるもの」として、賃貸住宅管理業者が管理受託契約重要事項説明書に記載する事項は以下のとおりです。
(1)管理受託契約を締結する賃貸住宅管理業者の商号、名称または氏名並びに登録年月日及び登録番号(第1号関係)
(2)管理業務の対象となる賃貸住宅(第2号関係)
管理業務の対象となる賃貸住宅の所在地、物件の名称、構造、面積、住戸部分(部屋番号)その他の部分(廊下、階段、エントランス等)、建物設備(ガス、上水道、下水道、エレベーター等)、附属設備等(駐車場、自転車置き場等)等について記載し、説明すること。
(3)管理業務の内容及び実施方法(第3号関係)
賃貸住宅管理業者が行う法第2条第2項の管理業務の内容について、回数や頻度を明示して可能な限り具体的に記載し、説明すること。
管理業務と併せて、入居者からの苦情や問合わせへの対応を行う場合は、その内容についても可能な限り具体的に記載し、説明すること。
(4)報酬並びにその支払の時期及び方法(第4号関係)
(5)(4)の報酬に含まれていない管理業務に関する費用であって、賃貸住宅管理業者が通常必要とするもの(第5号関係)
賃貸住宅管理業者が管理業務を実施するのに伴い必要となる水道光熱費や、空室管理費等が考えられる。
(6)管理業務の一部の再委託に関する事項(第6号関係)
賃貸住宅管理業者は、管理業務の一部を第三者に再委託することができることを事前に説明するとともに、再委託することとなる業務の内容、再委託予定者を事前に明らかにすること。
(7)責任及び免責に関する事項(第7号関係)
管理受託契約の締結にあたり、賃貸人に賠償責任保険等への加入を求める場合や、当該保険によって保障される損害については賃貸住宅管理業者が責任を負わないこととする場合は、その旨を記載し、説明すること。
(8)法第21条の規定による委託者への報告に関する事項(第8号関係)
賃貸住宅管理業者が行う管理業務の実施状況等について、賃貸人へ報告する内容やその頻度について記載し、説明すること。
(9)契約期間に関する事項(第9号関係)
管理受託契約の始期、終期及び期間について説明する。
(10)賃貸住宅の入居者に対する(3)の内容の周知に関する事項(第10号関係)
賃貸住宅管理業者が行う(3)に記載する管理業務の内容及び実施方法について、どのような方法(対面での説明、書類の郵送、メール送付等)で入居者に対して周知するかについて記載し、説明すること。
(11)管理受託契約の更新及び解除に関する事項(第11号関係)
賃貸人と賃貸住宅管理業者間における契約の更新の方法について事前に説明すること。
賃貸人又は賃貸住宅管理業者が、契約に定める義務に関してその本旨に従った履行をしない場合には、その相手方は、相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がないときは、解除することができる旨を事前に説明すること。
契約期間中に上記(1)~(11)に掲げる事項に変更があった場合には、少なくとも変更のあった事項について、当初契約の締結前の管理受託契約重要事項説明と同様の方法により、賃貸人に対して書面の交付等を行った上で説明する必要があります。
また、新法の施行前に締結された管理受託契約で、法施行後に変更されたものについても適用されます。
その際は、変更のあった事項について、管理受託契約重要事項説明と同様の方法により、賃貸人に対して書面の交付等を行った上で説明する必要があります。
なお、説明に際しては、国土交通省の「管理受託契約重要事項説明書」に準拠した書面を用いることが望ましいでしょう。(下記)
◆管理受託契約 重要事項説明書 (国土交通省)
fa-file-pdf-oPDF版(記載例) fa-file-word-oWord版
管理受託契約の更新等について(重要事項説明)
賃貸住宅管理業者が管理受託契約を「当初契約と異なる内容で更新する」場合、改めて管理受託契約重要事項説明書の交付及び管理受託契約重要事項説明をする必要があります。
ここで「当初契約と異なる内容」とは、契約内容のうち、少なくとも、管理受託契約重要事項説明の内容が当初契約と異なる場合は、当初契約と異なる内容による契約であると考えられます。
このため、賃貸住宅管理業法の施行前に締結された管理受託契約を法施行後に更新する場合で、それが当初の契約と異なる内容による契約に該当する場合は、「管理受託契約重要事項説明書の交付・管理受託契約重要事項説明」が必要となります。
なお、契約の同一性を保ったままで契約期間のみを延長することや、組織運営に変更のない商号又は名称等の変更等、形式的な変更と認められる場合はこれに該当せず、その場合、管理受託契約 重要事項説明等は行わないこととしても構わない、とのことです。(国土交通省)
また、相続や物件の売却によるオーナーチェンジの際は、従前と同一の内容で管理受託契約が承継される場合であっても、「管理受託契約重要事項説明・交付」が必要です。
管理受託契約が締結されている賃貸住宅が、契約期間中に現賃貸人から売却され、賃貸人たる地位が新たな賃貸人に移転し、従前と同一内容によって当該管理受託契約が承継される場合であっても、賃貸住宅管理業者は、賃貸人たる地位が移転することを認識した後、遅滞なく、新たな賃貸人に管理受託契約重要事項説明書の交付及び管理受託契約重要事項説明をするものとする。
更新等の内容 | 重要事項説明 |
当初の契約と異なる内容で更新する場合 | 必 要 |
契約の同一性を保ったままで契約期間のみを延長すること 組織運営に変更のない商号または名称等の変更等 |
不 要 |
オーナーチェンジ(相続・売却など) | 必 要 |
管理受託契約の重要事項説明に IT を活用する場合について
「電磁的方法」による重要事項説明書の提供について
賃貸住宅管理業者は、賃貸人の承諾を得て、管理受託契約重要事項説明書に記載すべき事項を「電磁的方法」により提供することができます。
その場合は、次の事項に注意が必要です。
・相手方がこれを確実に受け取れるように、用いる方法(電子メール、WEB でのダウンロード、CD-ROM 等)やファイルへの記録方法(使用ソフトウェアの形式やバージョン等)を示した上で、電子メール、WEB による方法、CD-ROM 等相手方が承諾したことが記録に残る方法で承諾を得ること。
・出力して書面を作成でき、改変が行われていないか確認できることが必要であること。
契約書等の電磁的方法については、下記のコンテンツで詳しく解説しています。
IT重説を活用する場合の取扱いについて
管理受託契約重要事項説明にテレビ会議等の IT を活用するに当たっては、次に掲げるすべての事項を満たしている場合に限り、対面による説明と同様に取扱うものとしています。
なお、説明の相手方に事前に管理受託契約重要事項説明書等を読んでおくことを推奨するとともに、管理受託契約重要事項説明書等の送付から一定期間後に、IT を活用した管理受託契約重要事項説明を実施することが望ましい、としています。
●事前に資料を送付する
・管理受託契約重要事項説明を受けようとする者が承諾した場合を除き、管理受託契約重要事項説明書及び添付書類をあらかじめ送付していること
●映像や音声の環境を整える
・説明者及び重要事項の説明を受けようとする者が、図面等の書類及び説明の内容について十分に理解できる程度に映像が視認でき、かつ、双方が発する音声を十分に聞き取ること
ができるとともに、双方向でやりとりできる環境において実施していること
・重要事項の説明を受けようとする者が、管理受託契約重要事項説明書及び添付書類を確認しながら説明を受けることができる状態にあること
・映像及び音声の状況について、賃貸住宅管理業者が重要事項の説明を開始する前に確認していること
IT重説については、下記のコンテンツで詳しく解説しています。
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契約締結時の契約書面の交付について(管理受託)
賃貸住宅管理業法の第14条では、賃貸住宅管理業者は、重要事項説明後、管理受託契約を締結したときは、管理受託契約の相手方に対し、確定した契約条件を当事者同士で確認できるよう、相手方に対し、遅滞なく、「必要な事項を記載した書面」を交付しなければならない、と規定しています。
この書面は、第14条第1項各号規定の事項、及び規則第35条各号規定の事項が記載された契約書であれば、当該契約書をもってこの書面とすることができますので、交付は不要となります。
国土交通省が提供している「標準契約書」を利用すれば、問題ありません。(下記)
◆賃貸住宅管理受託契約 標準契約書(国土交通省)
fa-file-pdf-oPDF版 fa-file-word-oWord版
一方、管理会社が独自の契約書を作成している場合、上記の事項(第14条第1項各号規定の事項、及び規則第35条各号規定の事項)が契約書に記載されていなければ、契約締結時に「新たな書面の交付」が必要です。(いわゆる電磁的方法による提供も可能)
その際は、契約締結に際して「2度書面を交付する必要がある」ことに気を付けましょう。
「新たな書面」に必要な記載事項
一 管理業務の対象となる賃貸住宅
二 管理業務の実施方法
三 契約期間に関する事項
四 報酬に関する事項
五 契約の更新又は解除に関する定めがあるときは、その内容
六 その他国土交通省令で定める事項
最新ニュース(賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律)
国土交通省が新法のオンライン説明会を公開(YouTube)
説明会の内容は、YouTube動画で閲覧することができます。(質疑応答もあり)
賃貸住宅管理業者は必ず登録を
賃貸住宅管理戸数(自己所有物件の管理除く)200戸 以上の賃貸住宅管理業を営む事業者は、「令和4年(2022年)
(管理戸数 200戸 未満の事業者の登録は任意ですが、社会的信用力を確保するにあた
管理戸数 200戸 以上の管理会社が 令和4年6月15日 までの登録申請を行わず、
また、無登録業者に対しては国土交通省が2022年の夏にも「立入検査」を開始する予定とのこと。
詳細は、下記のコンテンツで解説しています。
賃貸住宅管理業者の「登録簿」が公開されました
国土交通省は、賃貸住宅管理業法第8条に基づき、同法第5条第1項に規定する「賃貸住宅管理業者登録簿」を公開しています。
関東地方整備局管内における登録業者のみ掲載しています。
(対象都県:茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県、長野県)
事業者名から対象事業者の情報を検索したい場合は、国土交通本省が提供している「企業情報検索システム」も利用できます。
賃貸不動産経営管理士が6万人を突破
受験者数は過去最多の【速報値】32,461名(昨年比:18.7% 増、+5,123名)、受験率は91.3%。
合格者数は10,240名、合格率は31.5%となりました。
合格者の最高齢は85歳、最年少は18歳であり幅広い年齢の方が受験し、同試験の累計合格者数は、88,315名となりました。
国家資格の賃貸不動産経営管理士は、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(以下、本法)」において、賃貸住宅管理業の登録が義務付けられた賃貸住宅管理業者(管理戸数200戸以上)が置かなければならない「業務管理者」の要件を満たす存在です。
本年の試験を合格し、登録を受けた賃貸不動産経営管理士は、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」において、一定の条件を満たした賃貸住宅管理業者にその配置が求められる「業務管理者」の要件を満たします。
〇対 象 者:
①令和2年度以前の賃貸不動産経営管理士試験合格者で、管理業務に関し2年以上の実務の経験を有しない者
②指定講習の受講を希望する宅地建物取引士であって、管理業務に関し2年以上の実務の経験を有しない者
〇申込方法:協議会ホームページを通じたWebによる申込
(一社)賃貸不動産経営管理士協議会、管理士 国家資格移行97%完了
一般社団法人賃貸不動産経営管理士協議会(東京都千代田区)は、民間資格の賃貸不動産経営管理士(以下、管理士)を対象とした国家資格への移行講習を6月15日に終了し、約97%が移行を完了したと発表しました。(2022年7月)
今回移行完了となった該当者は、2020年度以前の管理士有資格者累計6万9544人。
このうち、6万7493人が移行講習を修了。
これで国家資格の管理士は累計で7万3130人(6月16日時点)。
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