サブリース新法(賃貸住宅管理業務等の適正化に関する法律)では、「誇大広告等の禁止」・「不当な勧誘等の禁止」を規定しています。
この禁止事項は、サブリース業者だけでなく「勧誘者」にも適用されます。
このコンテンツでは、「勧誘者」に関する規定と具体例について解説しています。
サブリース事業では、建設業者や不動産業者などによる勧誘も多く行われています。
誇大広告や不当な勧誘がなされれば、不動産オーナーや投資家が契約の内容やリスクを誤認しかねません。
マスターリース契約を検討する際には、サブリース新法が規定している「勧誘者」について、よく理解しておくことが重要になります。
目次(もくじ)
「勧誘者」とは?(サブリース新法)
勧誘者とは、「 サブリース業者がマスターリース契約の締結についての勧誘を行わ せる者」です。
下記の条件を満たす者を指しています。
① 特定のサブリース業者と特定の関係性を有する者
② 当該サブリース業者のマスターリース契約の締結に向けた勧誘を行う者
② 当該サブリース業者のマスターリース契約の締結に向けた勧誘を行う者
「特定のサブリース業者と特定の関係性を有する者」とは?
また、明示的に勧誘を委託されてはいないが、「サブリース業者から勧誘を行うよう依頼をされている者」・「勧誘を任されている者」は該当します。
具体例(サブリース業者と特定の関係性を有する者)
- 特定のサブリース業者からマスターリース契約の勧誘を行うことに
ついて委託を受けている者 - 親会社、子会社、
関連会社のサブリース業者のマスターリース契約について勧誘を行 う者 - 特定のサブリース業者が顧客を勧誘する目的で作成した資料を用い
てマスターリース契約の内容や条件等を説明し、 当該契約の勧誘を行っている者 - 特定のサブリース業者から、
勧誘の謝礼として紹介料等の利益を得ている者 - 特定のサブリース業者が、
自社のマスターリース契約の勧誘の際に渡すことができるよう、 自社名の入った名刺の利用を認めている者
特定の関係性を有する者であるかどうかは、上記のような事情等に照らして客観的に判断すべきものとしています。
たとえ勧誘者が、「自分は自発的に勧誘を行っており、 サブリース業者が勧誘を行わせている者でない」と主張したとしても 、勧誘者に係る規制の適用を免れるものではありません。
また、相続税対策を謳ったサブリース事業等において、建設会社、 不動産業者、金融機関等複数の主体が建設請負や不動産売買、 融資等で関与する場合があります。
それぞれの主体が勧誘者にあたるかどうかは、主体ごとに、「 特定のサブリース業者と特定の関係性を有する者」であるかどうかを客観的に判断することとなります。
さらに、勧誘者が勧誘行為を第三者に再委託した場合は、 当該第三者も「勧誘者」に該当します。
「勧誘」とは?
勧誘者とは、上述の①の関係性を有するサブリース業者の、② マスターリース契約の締結に向けた勧誘を行う者です。
個別事案ごとに客観的に判断されることに留意が必要です。
- 特定のサブリース業者とのマスターリース契約を結ぶことを直接勧める場合
- 特定のサブリース業者とのマスターリース契約のメリットを強調し
て締結の意欲を高める
など、「 客観的に見てオーナーとなろうとする者の意思の形成に影響を与え ている」と考えられる場合も勧誘に含まれます。
さらに、不特定多数の者に向けられたものであっても、 特定のサブリース業者のマスターリース契約の内容や条件等を具体 的に認識できるような内容であって、 それが個別のオーナーとなろうとする者の意思形成に影響を与える 場合は、勧誘に該当する可能性があります。
勧誘者がサブリース新法 第28条 または 第29条 の規定に違反した場合には、 勧誘を行わせたサブリース業者自身も処分の対象となります。
サブリース業者は、「勧誘者」に適正な勧誘を行わせる必要があるのです。
一方で、「契約の内容や条件等に触れずに、 単に業者を紹介する者」は勧誘者に該当しない、としています。
「勧誘者」の具体例とは? (サブリース新法)
勧誘者に該当すると考えられる事例を見ていきましょう。
(勧誘者に該当するかどうかについては、例示されていないものも含め、 個別事案ごとに客観的に判断されることに留意が必要です。)
・建設会社、不動産業者、 金融機関等の法人やファイナンシャルプランナー、 コンサルタント等の個人
サブリース業者から勧誘の委託を受けて、 当該事業者とのマスターリース 契約の内容や条件等を前提とした資産運用の企画提案を行ったり、 当該マスターリース契約を締結することを勧めたりする場合
・建設業者や不動産業者
自社の親会社、子会社、 関連会社のサブリース業者のマスターリース契約の内容や条件等を 説明したり、 当該マスターリース契約を結ぶことを勧めたりする場合
・建設業者
賃貸住宅のオーナーとなろうとする者に対し、 当該者が保有する土地や購入しようとしている土地にアパート等の賃貸住宅の建設を行う企画提案 をする際に、建設請負契約を結ぶ対象となる賃貸住宅に関して、 顧客を勧誘する目的でサブリース業者が作成したマスターリース契 約の内容や条件等を説明する資料等を使って、 賃貸事業計画を説明したり、 当該マスターリース契約を結ぶことを勧めたりする場合
・不動産業者
賃貸住宅のオーナーとなろうとする者に対し、 ワンルームマンションやアパ ート等の賃貸住宅やその土地等の購入を勧誘する際に、 売買契約を結ぶ対象となる賃貸住宅に関して、 顧客を勧誘する目的でサブリース業者が作成したマスターリース契 約の内容や条件等を説明する資料等を使って、 賃貸事業計画を説明したり、 当該マスターリース契約を結ぶことを勧めたりする場合
・ 賃貸住宅のオーナー
不動産オーナー・投資家のための重要なポイント
サブリース事業では、賃貸住宅の建築を請け負う業者、賃貸住宅やその土地等の売買の仲介を行う不動産会社など、オーナー側に対して様々な勧誘が行なわれます。
各業種において自社の利益につなげようとし、マスターリース契約を検討している不動産オーナーや投資家に対して、契約に関する内容やリスクを誤認させかねません。
そうなれば、契約締結後にトラブルに発展する事態となります。
不動産オーナーや投資家は、サブリース事業者だけでなく「勧誘者」による勧誘にも注意が必要です。
特に、マスターリース契約の前に「賃貸住宅の建設請負契約」や「土地等の売買契約」を締結する際は要注意です。
勧誘者による「誇大広告等」・「不当な勧誘等」に該当しないか、確認をすることが重要です。
マスターリース契約の際に重要な事項に気づいても、すでにその時点で多額の債務が発生している状況となってしまいます。
建設業者や不動産業者から賃貸住宅の建設や土地等の購入等の勧誘を受ける場合には、マスターリース契約のリスクを含めた事実の告知を確認し、 勧誘時点でオーナーがマスターリース契約のリスクを十分に認識することが重要です。