サブリース新法やその解説には、「サブリース」や「マスターリース」「特定賃貸借契約」などの用語が頻繁に出てきます。
不動産オーナーや投資家の中には、聞いたことはあるけれども正確な意味を理解していない、という用語もあるのではないでしょうか、
実は、不動産会社やサブリース業者であっても、用語を誤って使用しているケースがあるので注意が必要になるのです。
なぜなら、オーナーが誤った理解のままで業者と契約をすれば、トラブルが発生する可能性があるからです。
当サイトでは、サブリース新法(賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律)を制定した国土交通省の解説をもとに、用語の使用をしています。
このコンテンツでは、頻繁に登場する「サブリース」「マスターリース(契約)」という用語について解説します。
用語を正しく理解することで、サブリース新法の趣旨や内容を正確に押さえることができます。
結論として、賃貸住宅のリスクやトラブルを回避し、安定した経営・運営が可能になるのです。
目次(もくじ)
サブリースとは
サブリース事業者がアパートなどの所有者から建物を一括で借上げ(マスターリース契約)、長期間にわたり入居者に貸し出す仕組みのことです。
サブリースは一般的に、「又貸し(またがし)」や「転貸し(てんがし)」「転貸(てんたい)」とも言われています。
事業者が入居者の募集から建物の維持・管理、家賃収納など多くの業務を担います。
サブリース(転貸借)
建物の所有者からアパートなどの賃貸住宅を一括して借り上げ、入居者にまた貸しする事業
所有者は一定期間、収入が保証され、家賃の収納業務なども業者に任せて負担を減らせる
日本経済新聞-きょうのことば(2019年8月11日)
サブリースは、アパートやマンション、シェアハウスなど多くの賃貸住宅で採用されています。
ただし不動産業界では、サブリースという言葉を「マスターリース契約や転貸を含めた事業」として使用することもありますので、注意が必要です。
サブリースの特徴
物件のオーナーと管理会社がマスターリース契約を結び、管理会社は入居者へ転貸します。(転貸=サブリース)
入居者にとっての「貸主」は管理会社となり、募集から退去までほぼ全ての業務を委託することになります。
つまり、物件オーナーと入居者が直接契約を結ぶことがなくなります。
そのため、オーナーはわずらわしい賃貸管理から解放されますが、礼金・敷金・更新料などを受け取ることもなくなります。
サブリースの注意点
「サブリース契約」という言葉には注意が必要です。
本来は、オーナーからマスターリース契約(一括借上げ)した物件を「入居者へ貸し出す時に締結する賃貸借契約」を指します。
しかし、不動産会社によっては、マスターリース契約やサブリース方式の契約のことを「サブリース契約」と呼ぶことがあります。
物件所有者(オーナー)は、サブリース契約という言葉を見たら「どういった内容のどの契約なのか」を確認し、誤解のないように注意しましょう。(国土交通省や本サイトでは、「サブリース契約」という語句は使用していません。)
オーナーはマスターリース契約によって管理会社に一任するため、賃貸経営に積極的に参加することは少なくなります。
入居者の募集方法、家賃、審査、管理内容、退去時の処理など、細かい部分も含めて管理会社のやり方に任せることになります。(管理会社やマスターリース契約の内容により異なります。)
入居率(空室率)や家賃滞納の有無なども、管理会社に確認しないと詳細はわかりません。
たとえば、外国人の入居者が増加していたり、管理会社が家賃滞納など入居者とのトラブルを抱えたりしている可能性もあります。
オーナーは自分の物件の状態を正確に把握するためにも、管理会社と緊密に連絡をとるように心がけることが望ましいでしょう。
2021年6月に施行された「賃貸住宅管理業法(サブリース新法)」では、200戸以上を管理する管理会社は国土交通省への登録が義務付けられます。
管理会社は物件オーナーに対する定期的な報告義務も科せられます。
マスターリース(契約)とは
物件の所有者(オーナー)が事業者に建物等を一括して賃貸する、この賃貸借契約のことを「マスターリース契約」といいます。(マスター契約・一括借上げ契約とも言われます。)
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(サブリース新法)では、マスターリース契約のことを「特定賃貸借契約」と呼んでいます。
マスターリース契約(特定賃貸借契約)によって、サブリース事業者はオーナーに一定の賃料を支払います。
そして、事業者はマスターリース契約によって賃借した物件を入居者などのテナントに賃貸借し、管理運営などのすべてをおこないます。(転貸=サブリース)
オーナーが自ら経営する場合と比べ、煩わしい業務は不要となり、一定の収益も確保されます。
オーナーへの家賃保証が行われている場合は、テナントの入居、未入居に左右されない安定的な資産運用が可能となります。
サブリース新法への対応
2020年12月から、サブリース事業に関連したいわゆる「サブリース新法」(賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律)が施行されました。
不動産業者や管理会社とオーナーがマスターリース契約を締結する際には、この新法を理解して対応する必要があります。
マスターリース契約時には業者による「重要事項説明」が必要となります。
サブリース事業を検討しているオーナーは、業者が新法に基づいて適切に対応しているかどうかを見極めなければなりません。
マスターリース契約(特定賃貸借契約)の締結には、業者側に不動産の免許(宅地建物取引業)は必要ありません。
宅地建物取引業の免許がない業者と契約するケースもあるため、オーナー側も法律をよく理解しておくことが重要となります。
国土交通省の「特定賃貸借標準契約書(マスターリース契約)」に準じているか
オーナーが安心して不動産業者や管理会社とサブリース事業の契約(マスターリース契約)をするには、「国土交通省が作成している標準契約書」を使用することが重要です。
国土交通省は、サブリース事業の当事者間における紛争の未然防止を図るため、「特定賃貸借標準契約書(マスターリース契約書)」を作成しています。
また、マスターリース契約の前に「重要事項説明」を実施することが義務化されています。
重要事項説明書も国土交通省が示している内容に即しているかを確認しましょう。
「サブリース」「マスターリース」「家賃保証」の違い
サブリース | 物件を転貸借(また貸し)すること |
マスターリース | 事業者による物件の一括借上げ |
家賃保証 | 空室の有無にかかわらず毎月一定の家賃を保証すること |
※不動産業界では、サブリースという言葉を「マスターリース契約や転貸を含めた事業」(上記の図の全体)として使用することもありますので、注意が必要です。
(このサイトでは、「サブリース」「マスターリース」という用語を国土交通省の使用例に則って記載しています。)