【シェアハウス運営】「共益費」の最適な設定方法(事例・契約書のサンプルあり)

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このコンテンツでは、シェアハウスのオーナーや管理会社のために「共益費」について詳しく解説しています。

シェアハウスを初めて運営・管理しようとしている人にとっては、「共益費」の仕組みはわかりづらい部分があると思います。

通常のアパートやマンションの「管理費」とは異なる部分も多くありますので、事前にしっかりと理解しておくことが必要です。

このコンテンツを読むことで、「シェアハウスの共益費の仕組みや設定のしかた(金額)」がわかるようになります。

筆者は、東京で10年以上シェアハウスの運営・管理にたずさわってきました。

そのプロとしての経験から、共益費を設定する際のポイントについて、実際に運営しているシェアハウスの事例も交えてお伝えしていきます。

 

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シェアハウス経営における「共益費」のしくみ

シェアハウスの共益費は主にハウス内の水道光熱費です。

 

シェアハウスは共同生活なので、建物内で使用する水道光熱費などを「共益費」として入居者全員でシェアする仕組みを用いています。

 

共益費については、下記のコンテンツで解説しています。

 

シェアハウスの共益費の設定方法

共益費の設定方法にはいくつかの種類があります

 

 

共益費の設定方法(3つの種類)

シェアハウスの共益費の設定には、大きく分けて3つの方法があります。

  1. 月額固定
  2. 変動制
  3. 完全変動制

 

結論から言うと、1の「月額固定」が最もポピュラーでおすすめです。

入居者にとってもオーナーや管理会社にとっても簡単で手間が少ない方法です。

その理由も含めて、それぞれの方法を詳しく見ていきましょう。

 

1. 月額固定

毎月の「共益費」の金額を固定して決まった額を入居者から徴収します。

一人ひとり計算する必要がなく、オーナーや管理会社にとって徴収するのは簡単になります。

例: 入居者 ひとり当たり : 月額 10,000円 を徴収する

しかし、金額が固定のため入居者が水道や電気を「使い放題」と勘違いしてしまうデメリットがあります。

たとえば、実際の使用料金が徴収金額をこえると赤字になってしまいます。

 

2. 変動制

変動制にはいくつかのケースがあります。

一部の料金を固定に設定し、さらに実際の使用料を徴収するケース。

たとえば、水道光熱費の「基本料金」のみを固定で徴収し、実際のハウス内での「使用料」は合計を入居者の頭数で割って徴収します。

例: 公共料金の基本料金 + 使用料

また、ハウス全体の水道光熱費を単純に入居者の人数で頭割りして徴収するケースもあります。

実際の使用量が出てから計算するので、徴収するのは1か月後になります。

いずれのケースにしても、毎月の「共益費」の金額を計算して入居者から徴収する業務が必要になります。

退去者には、退去月の使用量を後日に請求しなければならないという手間もあります。

 

3. 変動制(電気メーター)

これは、入居者ひとり一人の「電気」の使用料を把握して使用した分に応じて個々に徴収します。

ただし、各個室に「電気メーター」が設置されていることが前提となります。
(シェアハウスの改修工事時に設置する必要があります。)

水道代・ガス代・インターネット代は総額を頭割りして個々に請求します。

 

共益費の種類 メリット・デメリット(一覧表あり)

これまで見てきたように、シェアハウスの共益費の設定方法はいくつかありますが、「公平性を保つのが難しい」という難点があります。

それは、シェアハウスの水道光熱費が物件(ハウス)全体にかかるものであり、入居者から徴収する共益費でまかなわなければならないからです。

つまり、共同生活なので入居者の誰がどれだけ使ったかを個々には把握しにくいのです。

たとえば、個室内で電気を大量に使用する人がいたとしても、なかなか把握することは難しいのです。

 

とくに、1(定額制)と 2(変動制)では公平性を厳密に保つのは困難です。

3(変動制)のように、個室ごとに電気メーターがある(付ける)シェアハウスもあります。

全体の公平性を重視したり、特定の人による電気の使い過ぎを避けたりしたい場合は有効です。

これにより電気はだれがどれだけ使用したかを数字で把握できるので、使用量に応じた徴収(変動)が可能になります。

しかし、水道代・ガス代・インターネット代は個々の把握ができないため、入居者の頭割りで徴収することになります。

締め日を決める

電気メーターを検針する

計算する

入居者に連絡する

入金してもらう

入金額のチェックを行う

 

共益費の「変動制」を採用すると入居者の公平性は保ちやすくなりますが、料金の計算や入居者への連絡などの業務が発生して手間が増えるというデメリットがあります。

 

3つの種類のメリット・デメリットを表にまとめました。

 

メリット デメリット
1. 月額固定

徴収と管理が楽

  • 使い放題になる恐れ
  • 想定よりもオーバーする恐れ
2. 変動制 公平性がやや高い
  • 計算が必要
  • 入居者への連絡が必要
  • 退去者からの徴収が必要
3. 変動制(電気) 最も公平性が高い

(電気メーターがあれば)

  • 電気メーターの検針が必要
  • 計算が必要
  • 入居者への連絡が必要
  • 退去者からの徴収が必要

 

 

これまでの筆者の10年超のシェアハウス管理の経験からすると、共益費は「月額の固定制」がもっとも効率的で楽であるといえます。

シェアハウスの運営を検討している人や共益費の設定に悩んでいる人には、「月額の固定制」を強くおすすめします。

 

上記の表で見た通り、固定制にもデメリットはあります。

しかし、変動制を採用したときの実務や手間は想像以上に面倒です。

これを毎月おこなうことを考えると、「固定制」を採用する方がストレスなくシェアハウスの管理が行えます。

 

共益費の設定の注意点

共益費の金額はハウスの水道光熱費などが入居者からの徴収額でまかなえるように、慎重に設定する必要があります。

下記に注意点をまとめました。

  • シェアハウスの床面積
  • 入居者の人数
  • 共用設備の数(浴槽の有無)
  • 共用部の「清掃費」は含めるか

 

 

シェアハウスの床面積

シェアハウスの規模が大きければ設備の数も多くなるため、そのぶん毎月の共益費の金額も高くなります。

たとえば、人数の増加に合わせて、トイレ、洗面所、シャワー室などの設備数も増加します。

 

入居者の人数

入居者の人数が多いほど共用部の金額をおさえることができます。

これは、水道光熱費の「基本料金」は決まっているからです。

逆に、入居者の人数が少ないシェアハウスは共益費の金額設定に注意が必要です。

とくに15人未満のシェアハウスは、共益費の設定を間違えるとすぐに赤字になってしまいます。

(※具体的な共益費の設定方法は、このあとの段で解説しています。)

 

共用設備の数など

キッチンやリビングが広く充実していたり、シアタールームなどの設備があったりするシェアハウスは共益費がかかります。

また、お風呂(浴槽)のあるシェアハウスは、水道代とガス代が多くかかります。

シャワー室のみのシェアハウスと比較すると、共益費を高めに設定しないと赤字になりやすくなります。

 

共用部の清掃費は含めるか

「共益費」に共用部分の清掃を含めるかどうかを、事前に決めておかなければなりません。

共用部分とは、入居者の「個室」以外の部分をさします。

シェアハウスのおもな共用部分
  • リビング(ダイニング)
  • キッチン
  • 玄関・廊下
  • トイレ
  • 洗面所
  • シャワー室(お風呂)

シェアハウスでは共用部分の清掃が欠かせません。

入居者に交代で掃除してもらう(当番制)シェアハウスもあるようですが、筆者の経験ではおすすめしません。

清掃の品質には個人差があり、必ず入居者の不満につながるからです。

通常、共用部分の清掃は管理会社または清掃業者が行いますが、いずれにしてもコストがかかります。

清掃を「共益費」に含めるのであれば、コスト計算をして共益費の金額を決める必要があります。

 

その他、「共益費」に含めるものと別途徴収するものを決めます。(例:日用品・消耗品など)

シェアハウスの運営を始める前にすべて決めておきましょう。

また、「共益費」の実際の金額は季節によって変動します。エアコンの使用が増える夏と冬は光熱費が上昇します。

赤字になって安易に値上げをしなくて済むように、ある程度の余裕をもって金額の設定をおこなう必要があります。

 

また、ハウス内のサービスの品質が十分でないと入居者の不満につながります。

たとえば、インターネットの無線LAN(WIFI)の速度がおそかったり、清掃の回数や内容が不十分だったり。

共益費の金額とサービスの内容がつり合うように決めていきましょう。

 

共用部の清掃については、下記のコンテンツで詳しく解説しています。

 

 

実際のシェアハウスの「共益費」設定の事例(相場の事例あり)

実際の「共益費」設定の事例を見て参考にしてください

 

筆者がシェアハウスの管理に10年以上たずさわる中で、実際に運営している物件で設定した「共益費」の事例をお伝えします。

共益費に含めたもの
  • 水道代
  • 電気代
  • ガス代
  • インターネット代(無線LAN・WI-FI)
  • 共用部の清掃費(週1回以上:ハウスの規模により異なる)
  • 日用品・消耗品(トイレットペーパー・洗剤など)

 

徴収の方法
  • 料金は毎月の定額制
  • 金額はハウスの規模や人数によって変動(月額10,000円~15,000円の間で決定する)
  • 15名以下のシェアハウスは12,000円~15,000円で設定する
  • 家賃と一緒に徴収する
  • 使用量の増加などでまかなえなくなった場合には、値上げする可能性があることを契約書に明記する
  • 1室に2人で入居する場合には、2人分の共益費を徴収する

 

筆者の10年以上の経験から、上記の方法が入居者にとっても管理会社にとってもストレスがない徴収ということがわかり、現在も採用しています。

新しいシェアハウスを企画・運営・管理するときも、上記の内容で提案をおこなっています。

 

入居者との契約書の記載のしかた(サンプル条文あり)

 

「共益費」については、入居者との苦情やトラブルを避けるためにも賃貸借契約書やハウスルールにすべて記載しておきます。

実際に使用している「賃貸借契約書の条文」「ハウスルールの一部」を掲載しますので参考にしてください。

 

  • 徴収の方法と内容
  • 値上げの可能性
  • 超過分の請求

 

契約書(入居者)のサンプル事例

第〇条 乙は共用部分の維持管理に必要な費用に充てるため共益費を甲に支払うものとする。
2 前項の共益費は、頭書の記載に従い支払わなければならない。
3 1か月に満たない期間の共益費は、1か月を30日として日割り計算した額とする。
4 甲は維持管理に必要な費用の増減により共益費が不相当となったときは、共益費を改定することができる。
※甲:オーナー(管理運営会社) 乙:入居者

 

超過分の請求

水道光熱費が想定以上にかかったりそれが続いたりする場合は、入居者から「超過分」を徴収する場合があります。

入居者から毎月徴収している共益費でまかなえないときは、この超過分を別に請求する可能性があることを契約書・ハウスルールに記載しておきます。

こうすることで、入居者が水道光熱費を使いすぎないように抑止する効果もあります。

 

ハウスルールのサンプル事例

  • 電気・ガス・水道は節約すること。
  • 共益費の超過分については請求対象とします。

 

まとめ(シェアハウス共益費の設定)

    シェアハウスの共益費は、定額制(月額)に設定するのがおすすめです。

    金額は赤字にならないよう慎重に決定しましょう。

     

    シェアハウスの共益費の設定(まとめ)
    • 「共益費」に含まれるサービス・管理内容を事前にしっかりと決める
    • シェアハウスの規模・人数・設備によって金額を設定する
    • 月額(固定)で徴収するのが楽でおすすめである
    • 共益費について契約書に記載する(値上げの条項も)

     

    Ⓒシェアハウス経営の教科書

     

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