シェアハウス経営にもメリット・デメリットがあります。
シェアハウス経営でもデメリットをしっかりと把握し、リスクを取った人が成功しています。
どんな事業にも必ずリスクはありますので、総合的に判断することが重要になります。
筆者は東京で、20棟・300室のシェアハウス管理会社にたずさわり、10年以上の経験があります。
プロとして様々なシェアハウス物件やオーナーを見てきました。
シェアハウス経営については一見デメリットに見えることも、見方を変えればメリットに転換することができます。
そのため、シェアハウスの運営・管理の実績のあるプロと組めば、リスクを最小限にして経営することが可能になります。
たとえば、10年前にシェアハウス事業に参入したオーナーは、当初の3~5年で初期投資を回収して、その後は継続的な賃料収入を得ています。
このコンテンツでは、シェアハウス経営が初めての人や現在検討している人のために、運営のメリット・デメリットをわかりやすくお伝えしていきます。
目次(もくじ)
シェアハウス経営の「メリット」
シェアハウス経営・投資のメリットは、大きく3つに分けられます。
- 建物のメリット
- 賃貸管理のメリット
- 差別化によるメリット
それぞれを詳しく見ていきましょう。
メリット①「建物」(シェアハウス経営)
中古物件を活用できる
シェアハウスは既存の建物をリフォームして運営することができます。
新築とくらべて工事費をおさえることができ、高い収益や利回りを確保することが可能になります。
建物構造や築年数に左右されない
シェアハウスの入居者は、建物構造や築年数をそれほど気にしません。
募集するポータルサイトでも、建物構造や築年数で分類されることはあまりありません。
そのため、木造や古い建物でもリフォーム工事により、シェアハウスとして運用することが可能になります。
水回り設備を集約してリフォーム工事費をおさえられる
シェアハウスは、水回り(シャワー室、洗面所、トイレなど)を「共用部」として集約できます。
1室ごとに水回り設備を設置するアパート・マンションに比べて、工事費用を大幅におさえることができます。
高い収益性は売却時にも有利に
高稼働率を維持して「高収益の物件」にすることができれば、売却時に有利になる可能性もあります。
高利回り物件が少ない不動産投資市場においては、売却物件としても注目されて「出口戦略」も有利になります。
メリット②「賃貸管理」(シェアハウス経営)
部屋数を増やし空室リスクを減らせる
シェアハウスは水回り設備を集約できるので、個室の1部屋あたりの面積をコンパクトにすることが可能になります。
そのため、リフォーム工事により個室の数を増やすことで全体の賃料収入の増額につながり、収益力を高めることができます。
入退去が簡単なので募集がしやすい
シェアハウスは入居も退去も簡単にできるのが特徴です。
個室の広さも限られていて荷物も多くはありません。
家電や家具もほとんどないのですぐに引越しができるのです。
このことにより、空室の期間(リスク)を最小限におさえることが可能になり、オーナーの大きなメリットとなります。
不動産仲介会社が必要ない(直接契約できる)
シェアハウスは、入居者をインターネットで全国(海外)から募集することができます。
そのため、不動産仲介会社に頼る必要がなく、仲介手数料や必要以上の広告費もかかりません。
入居者にとってもオーナーにとっても大きなメリットになっています。
退去後の原状回復費用がかからない
シェアハウスは、退去後の部屋の原状回復工事もあまり必要ありません。
個室内に水回り設備がないため、通常は室内とエアコンの清掃で済んでしまいます。
オーナーにとっては、アパート・マンションに比べて原状回復工事の費用をおさえることができ、物件のランニングコストを低減させることができます。
メリット③「差別化」(シェアハウス経営)
間取り・内装で個性を出せる
シェアハウスは、共用部としてシステムキッチンや広いリビングを設置することができます。
シアタールーム付きの物件などもあり、ワンルーム賃貸ではできない暮らしを提供することが可能になるのです。
また、ハウス内に設置する家具にこだわり、独特の世界観を構築することもできます。
ワンルームアパート・マンションと「差別化」がはかれるのです。
交流・コミュニティが魅力
シェアハウスは、毎日の生活の中で様々な人と出会い、コミュニケーションが生まれます。
食事や会話などのハウス内の交流によって、日々のストレスや孤独感が癒されます。
入居者同士が協力して支え合い、ともに成長しながら生活しています。
また、シェアハウスは外国人の入居希望者も多いので、ハウス内で日本人の入居者との交流が生まれて国際的なコミュニケーションが可能になり、アパートやマンション経営とは大きな「差別化」がはかれます。
コンセプトも設定できる
シェアハウスは、物件にコンセプトやテーマを設定して運営することもできます。
たとえば、実際に外国人と英会話ができるハウスや、アウトドア好きが集まるハウスなど様々なコンセプトのシェアハウスが運営されています。
企画・設計の段階で内装インテリアのテイストやスタイルを作り上げたり、デザインにこだわったりすることにより、シェアハウス物件の「差別化」が可能になるのです。
シェアハウス経営のデメリット(リスク)
一方で、シェアハウスの経営には「デメリット」もあります。
順番に見ていきましょう。
デメリット①「企画・プラン」(シェアハウス経営)
開業の相談相手がいない
一般の不動産会社の中でシェアハウスについて詳しい会社はほとんどありません。
そのため、身近な人や会社に相談しても適切なアドバイスを受けることはできません。(リフォーム会社・設計事務所・賃貸経営の仲間など)
また、シェアハウスの企画や管理をしている会社であっても、知識や経験には差があります。
シェアハウスの経営については、実際の経験と実績のある会社や人物に相談する必要があります。
融資する金融機関が少ない
スマートデイズという会社による「かぼちゃの馬車」の事件により、シェアハウスのイメージが悪くなってしまいました。
スルガ銀行の不正融資もあり、シェアハウスだけでなく不動産投資に対する金融機関の融資は厳しくなっています。
土地・建物を購入して行う不動産投資は難しいかもしれません。
既存の建物を活用してシェアハウス経営をする場合には、付き合いのある金融機関にリフォーム費用の融資を相談することになります。
その際も、事業計画だけでなく管理会社の実績も含めた審査となるでしょう。
デメリット②「物件管理」(シェアハウス経営)
管理の手間がかかる(管理費が高い)
シェアハウスは一般の賃貸住宅と比較して「管理」の手間がかかります。
入居者の契約時には保証人・保証会社がいらないケースが多いため、独自の審査が必要になります。
入居者とは「定期借家契約」をむすぶため、専用の書面と法律に基づいた説明をしなければなりません。
共用部の清掃を定期的におこない、スタッフによる物件の巡回もおこないます。
また、パーティー・イベントの企画・実施、トラブル時の早急な対応もしなければなりません。
このようにシェアハウスは管理の手間がかかることから、アパートやマンションと比べてオーナーが負担する管理料が高く設定されています。
管理会社の見極めが難しい
あなたがシェアハウスの経営をおこなうのであれば、賃貸住宅のオーナーとして入居者に安心・安全な住まいを提供する責任があります。
リフォーム時の耐震補強工事や防災面の取り組みも重要になります。
そのため、シェアハウスの経営については、実際の経験と実績のある会社や人物に相談する必要があります。
ただし、シェアハウスの管理をしている会社であっても、知識や経験には差があります。
必要な工事をせずにリフォーム費用を安くして、収益力を高めることを重要視している会社もありますので、しっかりと見極めることが重要になります。
具体的に注意が必要な事例があったので、下記のコンテンツで解説しています。
アパート経営との比較(一覧表)
(アパートとの比較) | メリット | デメリット | 備考 |
リフォーム工事費 | コストをおさえられる | しっかりとしたプランが必要 | 水回り設備を集約できる |
設備のメンテナンス費用 | コストをおさえられる | しっかりとした点検が必須 | 水回り設備を集約して減額 |
家具・家電 | 入居者の利便性につながる | 購入・交換の費用がかかる | すぐに生活できるメリット |
入居者募集 | ネットで全国(海外)から可能 | 不動産仲介会社に依頼できない | 仲介手数料が不要 |
入居者契約 | 定期借家契約で退去がスムーズ | 書面・説明が必須 | 実績のある管理会社に任せる |
差別化 | コンセプトの設定が可能 | 入居者の層を絞る | 事前の調査が重要 |
原状回復工事(個室) | 通常は必要ない | クリーニング費用は取れない | 退去後すぐに募集が可能 |
滞納・訴訟・明け渡し | 居座りや訴訟はほとんどない | 定期借家契約が必要 | 不良入居者の排除が可能 |
物件の管理 | 管理会社に一任できる | 管理費が高い | トラブル対応も一任できる |
デメリット(リスク)を転換する方法
- デメリットとはメリットにもなり得る
- メリット・デメリットを総合的に考える
- 経験・実績のある運営・管理会社に相談する
デメリットはメリットにもなり得る
どんな事業にもデメリットと思われることは出てきます。
それはシェアハウス経営も同様です。
しかし、一見デメリットに見えることでも見方や発想を転換すれば、別の側面も見えてきます。
内容によっては、「メリット」に転換できる可能性もあります。
そこで、シェアハウス経営のデメリットを表にしてみました。
シェアハウスを運営・管理した経験をもとに、別の視点から見たコメントも記載しました。
あなたがシェアハウス経営を考える際の客観的な材料になればと思います。
デメリット | 別の見方 | (備考) |
シェアハウス投資は失敗の危険が大きい | 成功事例も含めた総合的な判断が必要 | リスクをしっかりと把握して検討する |
開業の相談相手がいない | シェアハウス専門の管理会社がある | 経験・実績をよく見極めて複数社に依頼する |
管理費が高い | アパート経営とは差別化できる | (同上) |
保証人がない(入居者) | 募集しやすい(入居しやすい) | 審査・定期借家契約をしっかりと行う |
礼金・更新料がない | (同上) | 初期費用が低いのがシェアハウスの魅力 |
家具・家電の購入が必要になる | (同上) | 入居・退去がしやすいことが魅力 |
入居期間が短期になる | 不良入居者を退去させやすい | 優良入居者は再契約できる |
入居者同士のトラブルがある | 実際にはそれほど起こらない | 契約書・ハウスルール、管理内容が重要 |
メリット・デメリットを総合的に考える(シェアハウス経営)
スルガ銀行が融資して問題になった「かぼちゃの馬車」という案件は、運営のプロから見ればとてもシェアハウスとはいえない物件でした。
ニュースや報道では、シェアハウスが問題のように思われがちですが、「かぼちゃの馬車」の物件そのものが問題だったのです。
「シェアハウスのような物件」を建築して投資家に販売したことが問題だったのです。
つまり、「シェアハウス投資が失敗した」というのはある意味では的外れな議論です。
10年以上前から健全に運営されているシェアハウスは多数あります。
また、「かぼちゃの馬車」の事件以降も、シェアハウスに入居したいという若者は大勢います。
そういったことはなかなか報道されません。
ニュースやネットのネガティブな情報を見て、「シェアハウス経営の本質」を知ることがないと判断を誤ってしまいます。
メリット・デメリットを総合的に判断してシェアハウス投資・経営を検討することが重要です。
「かぼちゃの馬車」がシェアハウスでなかったことについては、下記のコンテンツで詳しく解説しています。
また外国人の入居については、アパート経営で起こるデメリットを回避することも可能になります。
家賃債務保証会社の調査によると、一般の賃貸住宅に住む在留外国人による「無断退去」の発生率は、日本人入居者の「4倍」と
言葉の壁や生活習慣の違いなどが入居中のトラブルにつながってしまいます。
無断退去されると室内の「残置物撤去」に費用や手間がかかることになり、オーナーにとっては大きな損失となります。
経験・実績のある運営・管理会社に相談する(シェアハウス経営)
シェアハウスの経営は、建物・設備(ハード)だけでなく毎日の管理(ソフト)がポイントになります。
ひとつの建物での共同生活なので、入居者の要望や問題点にきめ細かく対応する必要があります。
オーナーが自主管理をする場合を除き、シェアハウスは管理運営会社が管理するケースがほとんどです。
そのためシェアハウスの開業にあたっては、経験と実績のある管理運営会社に相談することが重要になります。
シェアハウスのデメリットやリスクをよく理解し、入居者が快適に生活できるような管理をしてくれる会社に任せたいですよね。
1社だけでなく複数の会社の話をきいて判断するのがよいでしょう。
まとめ
シェアハウス経営・投資に関するメリット・デメリットをまとめてみましょう。
- シェアハウスは他の賃貸住宅にはないメリットがある
- 独特の管理が必要というデメリットもある
- メリット・デメリットを客観的に把握することが重要
- デメリット・リスクはメリットに転換できるものもある
- 経験・実績のある管理運営会社を見極めて委託する
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