オーナーや管理会社にとっては、シェアハウスの「ドミトリー」(相部屋)の導入や管理を検討する場合には迷いや不安があると思います。
このコンテンツでは、ドミトリーのメリット・デメリットを事例を交えて具体的に解説しています。
筆者の現場の経験を生かした注意点も記載していますので、ドミトリーの導入について総合的な観点から客観的に判断することができます。
20棟・300室のシェアハウス管理会社で10年以上の経験がある筆者が、プロの視点から具体例を解説します。
目次(もくじ)
ドミトリーとその種類(シェアハウス)
シェアハウスの部屋の種類の中には、「個室」と「ドミトリー」があります。
ドミトリーは、いわゆる「相部屋」のこと。主に2種類の形態があります。
詳細は、下記のコンテンツで解説しています。
ドミトリー導入の「メリット」(シェアハウス)
シェアハウスにドミトリーを導入するメリットは、いくつかあげられます。
7畳以上(約12平米以上)の広めの部屋があれば、ドミトリーの導入を検討してみてもよいでしょう。
- 家賃を安く設定できる
- 家賃の幅が広いと募集サイトで表示されやすくなる
- 広い部屋を効率的に活用して家賃を最大化できる
- 外国人の入居者を取り込みやすくなる
- カップルや友人同士で入居したい人を取り込める
- 室内やハウス内の交流が起きやすくなる
ドミトリーの家賃は、個室にくらべて安く設定します。
その結果、家賃に敏感な入居希望者やシェアハウスに迷っている入居者にアピールすることができます。
ポータルサイトなどの募集サイトでは、ハウス内の家賃の幅が広いとサイト上で表示されやすくなります。
たとえば、45,000円の家賃で探している人に対して、50,000円以上の個室しかないハウスは検索結果に表示されません。
しかし、35,000円のドミトリーがあるシェアハウスであれば、表示される可能性が高くなります。
設計や間取りの都合で、個室に分割しにくい部屋や広い部屋がある場合には、ドミトリーやセミプライベートルームをつくることで効率的に活用できます。
たとえば、窓の数が少ない8帖の部屋は、2つの個室に分割することができません。
8帖の個室が8万円で入居者が決まればよいのですが、なかなか埋まらないかもしれません。
そこで、この部屋をドミトリーにして2段ベッドを設置すれば、1ベッドを35,000円で貸し出すことで70,000円の賃料収入になります。
ドミトリーを導入して満室を実現すれば、ハウス全体の家賃を最大化することができるのです。
また、外国人は日本人にくらべてドミトリーに対する抵抗が低いようです。
そのため、「外国人の入居者を取り込みやすくなる」というメリットがあります。
外国人を積極的に入居させ、国際色豊かなシェアハウスの運営をしたい場合には、ドミトリーの導入を検討するのもよいでしょう。
ドミトリーがあれば、「室内での同居」が可能になるので、カップルや友人同士、姉妹で入居したいという人などを取り込むことができます。
シェアハウス内で同居したい人が出てきた場合にも、対応することができます。
ドミトリーやセミプライベートでは、「その室内でも共同生活」となります。
そのため、入居者同士の交流が起きやすくなり、ハウス全体の活気につながる場合もあります。
ドミトリー導入の「デメリット」(シェアハウス)
ドミトリーの導入には、シェアハウス運営においてデメリットになるケースもあります。
- 駅から近い物件・人気の立地でないと難しい
- 入居者の質やモラルが低くなりがち
- トラブルが起きやすくなりがち
- 管理・ルールの整備が細かくなる
- 入居・退去が多くなる
ドミトリーの導入が可能なのは、最寄り駅から近い物件や人気の立地の物件です。
ドミトリーのような「室内での共同生活」は、楽しさの反面でストレスもありますので、家賃が安く駅から近いというメリットがないと入居者が決まりません。
目安は、最寄り駅から徒歩5分以内と考えてください。
ドミトリーの家賃は個室にくらべて安く設定します。
そのため、入居者の質やモラルが低くなる可能性があります。
その結果、トラブルが起きやすくなるかもしれませんので、「管理やハウスルールの整備」が重要になります。
シェアハウスの運営者はトラブルの予防に努め、トラブル時には早急な対応が求められます。
ドミトリーは一人一人の使えるスペースが限られており、入居者の私物も少なくなっています。
荷物が少ないぶん引越しや移動も簡単なため、個室にくらべて入居期間が短い傾向があります。
そのため、入居者の回転(入居・退去)が多くなる特徴があります。
その場合は、運営側は退去後の清掃や入居者募集の業務が増えることになり、その体制も整えておく必要があります。
シェアハウスの「ドミトリー」導入の注意点
- プライバシーの確保
- 貴重品の管理
- 私物とスペースの管理
- 契約内容・ハウスルールの説明
- 人間関係・トラブルなどに気を配る
- クレーム・トラブルにはすぐに対応する
- ドミトリー運用の経験が豊かな管理会社に依頼する
ドミトリーやセミプライベートでは、プライバシーの確保が重要になります。
入居者同士の目線が気にならないように、家具や間仕切りを設置しましょう。
また、入居者が貴重品を管理するための「鍵付きロッカー」を必ず設置します。(人数分)
運営者側は、ロッカーの鍵の管理が必要になります。
「入居者同士のスペース」をしっかりと区切って「あいまいにしない」ようにします。
一人当たりのスペースが決まっていないと、自分の荷物を置いてしまう入居者が必ず出てきます。
これは、私物の管理や室内のモラルにも影響をおよぼしますので、もしルール違反があればすぐに注意して改善するようにします。
トラブルやルール違反を防ぐためには、入居の前にしっかりと契約内容・ハウスルールの説明をすることが重要です。
また、ハウスの管理担当者は、入居後もドミトリー室内のモラルや人間関係、トラブルなどに気を配りましょう。
他の部屋の案内(見学)時やハウスの巡回時に、こまめにドミトリー部屋を確認しておき、苦情や異変の察知に努めます。
少しでも苦情があれば、すぐに対応するようにします。その際は、ドミトリー入居者の全員に確認して通知するようにします。他の入居者にも注意喚起をすることができます。
このようなドミトリーの管理は、十分な経験や実績がないと務まりません。
シェアハウスにドミトリーを導入する際には、経験が豊富な管理会社に相談するようにしてください。
下記のコンテンツでもドミトリーの注意点を解説しています。
(参考)
借金苦の若者が集うシェアハウス。男女約10人が共同生活中(週刊SPA!)
「ドミトリー」のトラブル事例
実際にドミトリーの部屋であったトラブル事例をご紹介します。女性が2人で住むドミトリーで起こった事例です。
「同居の女性が深夜に電話をしていて眠れない」という苦情がありました。
ドミトリーではこういうことが起きます。
- 何時に部屋の電気を消すのか
- 目覚まし時計は何時にセットするのか
このようなことまでは、さすがにシェアハウスの管理・運営側が決めたり指示したりすることはありません。
入居者同士で話し合って、常識やモラルにもとづいて生活してもらっています。
しかし、お互いに言いにくかったり、何度か注意しても聞き入れてもらえなかったりするケースもあります。
そのため、こうした苦情や相談には管理会社とスタッフがすぐに対応します。
早めに解決すれば、大きなトラブルに発展することもないですし、入居者同士も気持ちよく生活することができます。
お互いにルールの再確認をする、いい機会にもなりますね。
逆に、小さな苦情を放置したり、あいまいな対応で済ませたりしてしまうと、迷惑を受けた入居者が嫌になって退去してしまいます。
問題の入居者がそのままでは次の新しい入居者も同じ不満を抱える可能性があります。
このような状態になると、この部屋の入居者の定着率が低下し、オーナーの収益にも影響を与えることになります。
まとめ(ドミトリー導入のメリット・デメリット)
シェアハウスのドミトリー導入について見てきましたが、最も重要なのは「立地・利便性」です。
個室に比べてプライバシーの少ないドミトリーは、優位性がないと上手くいきません。
また、安易に家賃を下げることは入居者の質にも影響するので、おすすめしません。
シェアハウスの立地を見極めて、スムーズに管理・運営ができる体制を整えた上でドミトリー導入をすることが重要です。
- ドミトリーは広い部屋を有効活用できる
- 貴重品やトラブル対応がポイントになる
- ドミトリーの管理には独特のノウハウが必要になる
- 経験が豊富な管理会社に相談することが重要
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